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絶対の部屋

「戦争の始まりを知らせる放送も アクティヴィストの足音も届かないこの部屋にいたい もう少し」

宇多田ヒカルさんの楽曲、「あなた」のワンフレーズ。
twitterの相互さんと話していて祖母と私のいる部屋はまさにこの歌詞のような幸せな空間なんだろうな、と言われて知ったのがこの歌。
どんな不安も、心配事も、憂い事も、祖母といる部屋は何者にも破れない安全な、絶対の部屋。
なにも祖母といるときに必ず出現する部屋ではない。
日常のふとした時に現れる、何物にも代えがたい時間がその部屋。
祖父母の家について荷解きをしている私と、とりあえず疲れただろうから手を洗ってお茶でも飲みなさいと言ってくれる祖母との、ふたりきりの空間が私にとっての、絶対の部屋。

この歌の中で歌われているのは宇多田ヒカルさんの息子への思い。
こんなに愛し、愛される関係がひたすら愛おしい。
宇多田さんの息子さんへの絶対の愛、その絶対の愛を受け取る息子さん、おふたりの関係性が心底愛おしくて美しい。
母から子への絶対の愛。優しくも厳しい愛情を大事に大事に残しておきたい。
この世に絶対なんてないけれど、宇多田さんと息子さんがいる部屋は絶対なんだろうなとしみじみと感じて私はバスの中、一番後ろの席で涙ぐんだ。

絶対の愛が存在する部屋、それはその時にはわからないかもしれない。
それでもあとからふと過去を見返してみればあるかもしれない。
母親、父親、親戚、友達、今は気づいていないだけでもしかしたらどこかですでにその部屋にいたのかもしれない。
戦争の始まりを知らせる放送も届かない、その部屋。

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