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放牧禁止

時々、「ズルいなぁ」って思ってしまうことがあります。

スーパーなんかで見かける畜産物のパッケージ。その絵柄や写真が自由にのびのびと生活してる動物たちだったりします。でも、殆どの畜産物の元になった動物たちは、そんな生活をしてきたわけではありません。勿論、イメージということで、問題はないのでしょうけれど、釈然としないのです。

今回は、そういった絵柄や写真そのままに、のびのびと動物たちを育てている全ての畜産農家に衝撃を与えた「放牧禁止事件」について書いていきます。

今、日本では、「豚熱」あるいは「豚コレラ」と呼ばれる伝染病が発生しています。名前の通り、豚の病気で、豚の祖先であるイノシシにも伝染して広がっています。その対策として「豚熱」が発生している地域では、豚の放牧を中止しようという法改正が行われそうになったんです。更についでに牛などの他の家畜も中止になるかもしれませんでした。

屋外に動物を放していると、野性動物から伝染病をうつされる可能性が高いから、屋内に隔離しておこうというわけです。

一見、理にかなってるようですが、そもそも今まで「豚熱」にしても「鳥インフルエンザ」にしても、発生しているのは屋内で隔離していた動物たちばかりです。生き物を完全に外界と遮断することなどできません。

ところで、よく放し飼いは、健康なので伝染病にかからないという意見もあります。個人的には、それもどうかな?と思っています。日本で飼われている家畜動物の99%は、屋内飼育なので、絶対数が違い過ぎて比較しづらいので、まだわからないかなぁと思っています。

話を戻しますが、屋内飼育でも伝染病を防げていないのに、動物たちをのびのびと飼育する放牧を禁止するのは、ナンセンスだと思うのです。なにより今まで放牧されていた動物を、いきなり屋内だけに閉じ込めてしまっては、ストレスで他の病気にかかってしまうかもしれませんし、放牧して飼育してることを特色として生産してるのに屋内飼育に変更すると、もはや今までの商売は出来ません。消費者も今までの物は手に入りません。

近年では「アニマルウェルフェア」=家畜動物にもストレスの少ない様々な行動ができる健康的な生活をしてもらおうという活動が叫ばれはじめています。今回の「放牧禁止問題」は、明らかに時代に逆行しています。

結果的に、パブリックコメントが反映されたのか、今回は放牧の中止は見送られましたが、どちらかというと完全屋内の過密飼育のほうこそが中止されていくように願いたいものです。

過密に飼うことで安価になっていて、僕も安価な畜産物を買うこともあります。なので、急に無くすのではなく徐々に方向転換していってほしいと思ってます。

過密飼育によってウイルスがどんどん変異して、また新たな病気が誕生するかもしれませんし、今の「病気になったら全て殺処分」という体制では、一か所で沢山飼うということは一度に大量の命を犠牲にするリスクがあります。

一時的な経済の都合ばかりではなく、人と家畜動物とそれ以外の自然、それぞれにバランスよく配慮された畜産物の生産こそが、これからの時代に必要だと感じています。

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