VIVANTとテロ(9.11から22年)

文字通り、世界を震撼させた米同時多発テロ。

22年の節目、意図的かどうか定かでないが、TBSドラマ「VIVANT」でテロについての言及があった。ノゴーン・ベキ(演・役所広司)が率いる「テント」という組織は、世界の孤児を救うために多額の資金を集めているという描写。

偶然発見した地下資源。レアアースみたいなものだと思うが、これを独占的に調達できれば、世界で困窮する孤児の不幸な連鎖を食い止めることができる。土地を購入するために、テロという犯罪行為に手を染めているというのだ。

まだ最終回ではないので、ドラマが発するメッセージの真意は分からない。しかし9.11(放送は9月10日、奇しくも僕は、翌日の9月11日に最新回を鑑賞した)という節目に、「22年経ち、テロがエンターテインメントの素材として日本でも描かれるようになったんだな」と複雑な気持ちになった。

ノゴーン・ベキはエクスキューズする。「大きな被害にならないよう、事前に被害を最小限にできるよう慎重にシミュレーションするのだ」と。だが、それを聞いて「ふむふむ、テントとは良心的な組織なんだな」と納得できる人はどれだけいるだろうか。(いや、結構納得しちゃっているのかもしれない)

VIVANTで扱われているのは「正義」というテーマだ。

日本警察(公安)、バルカ国の警察、FBI、別班(自衛隊の特別任務組織)、テント……。それぞれの立場から、それぞれが信じる正義を追求する。同じ「正義」を追求しているにも関わらず、「誰かが追い、誰かが追われる」という構図が生まれる。正義の答えはひとつではない。時に、正反対の利害関係が生じ、そのために争いが起こってしまう。そういった意味では、「VIVANT」はまさに正義のあり方を真摯に描いているともいえる。

僕の違和感が、次回(最終回)で回収できると良いなと思う。

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ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の陰に隠れて、今も世界中では、様々なテロ行為が跋扈している。

毎日新聞は、「2001年の米同時多発テロ以降、中東と北アフリカで米国が関係した対テロ戦争による直接・間接的な死者は、少なくとも450万人に及ぶとの報告書を米ブラウン大の研究プロジェクト「戦争のコスト」がまとめた」と報じている。

「Costs of War」のサマリーを和訳すると、以下のような感じだ。

  • Over 940,000 people have died in the post-9/11 wars due to direct war violence.(9.11以降、戦争による直接の死者は94万人超)

  • An estimated 3.6-3.8 million people have died indirectly in post-9/11 war zones, bringing the total death toll to at least 4.5-4.7 million and counting.(間接的には3.6〜3.8百万人が亡くなっており、トータルでは4.5〜4.7一百万人が亡くなっていると試算できる)

  • Over 432,000 civilians have been killed as a result of the fighting.(戦闘の結果、43万2千人超の市民が殺されている)

  • 38 million — the number of war refugees and displaced persons.(戦争によって発生した難民は3,800万人である)

  • The U.S. federal price tag for the post-9/11 wars is over $8 trillion.(9.11以降の戦争に費やされた連邦政府の予算は8兆ドルを超える)

そういった状況を、「VIVANT」が矮小化しているとは言わない。しかし、テロを安易にヒューマンドラマの「素材」にしてはいけないだろう。

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過去に僕は、9.11をめぐる作品についての感想を記したことがある。

ここで書いた2作品は、作り手の意思がひしひしと伝わるようなものだった。

もちろん、エンターテインメントの形にすることで伝わるメッセージもある。だから一概に善し悪しを語れるものではないけれど。こういった側面もあることは、ドラマを楽しむ人間のひとつの責務として押さえておきたいところだ。

2001年9月11日。日本時間で午後9時46分。あの惨劇は起こった。そのことを今日は思い出しながら、平和について思いを馳せたい。

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