平野啓一郎さんが意識するAtoR(Author to Reader)
先週末、作家の平野啓一郎さんのツイート「AtoR(Author to Reader)」に深く頷いた。
フローで流れていってしまうのは、あまりにもったいないので備忘録として残しておく。
ビジネス用語のBtoB 、BtoCみたいに、思想や概念にも、PtoP(Philosopher to Philosopher)、PtoR(P to Reader)みたいなイメージはあるだろう。僕は小説家なので、基本的には、AtoA(Author to Author)ではなく、やっぱり、AtoRであるべきだといつも強く思っているんだけど。
— 平野啓一郎 (@hiranok) May 8, 2021
「分人」という概念で苦心したのは、アイデンティティについて悩む人が、自分自身のことを考えるために、極力、使い勝手の良いデザインの言葉にすることだった。コミュニケーションに内在しつつ、まだ顕在化していない「かたち」を探り当てる、といった深澤直人さんの思想に影響を受けた。
— 平野啓一郎 (@hiranok) May 8, 2021
僕は、思想や社会学の本などをよく読む方だけど、まさにこの概念を必要としている人がいる、と感じながら、日常を生きている一般人が、それを用いて自分について考えるには、言葉のデザインがあまりにハードすぎる、と思うことは多々ある。それはPtoPでいいのかもしれないけど。
— 平野啓一郎 (@hiranok) May 8, 2021
やっぱり、悩んでる人に、これ使ってみたらと、「手渡せる」言葉かどうか、というようなことは、考えるべきだと思う。もらったものの、難しすぎて使いこなせず、部屋の片隅でホコリを被ることになる(メルカリでも売れず?)言葉かどうか。AtoR的には。
— 平野啓一郎 (@hiranok) May 8, 2021
*
特に今のように、社会情勢がめまぐるしく変わるとき(つまりネガティブな情報が散乱するとき)、大衆は分かりやすい言葉を求めるようになる。
政治家や学者のような難解な言葉は敬遠される。多くの人に支持されるのは「カリスマ性」をまとったリーダーシップだ。
思想や概念を単純化し、無駄を徹底的に排除した言い回し。言葉は端的で、そして何故か対立構造を煽るのが特徴だ。
言葉の価値が、ずいぶん低く見積もられているなと、僕は失望してしまう。
*
平野さんがおっしゃる「言葉のデザイン」は、立場は違えど、僕もものすごく興味のある領域だ。
口にするのが憚られるようなトピックスも、言葉のデザインで広く伝えられるようになりたい。
noteというプラットフォームは、AtoRの実験場にもなれる。
粛々と、精進して言葉を編んでいきたい。
記事をお読みいただき、ありがとうございます。 サポートいただくのも嬉しいですが、noteを感想付きでシェアいただけるのも感激してしまいます。