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スカイマーク株式会社(2022年12月14日)|事業計画及び成長可能性に関する事項の雑感

グロース市場に上場している企業の「事業計画及び成長可能性に関する事項」をチェックしています。(過去アーカイブはこちら

今回、読んだ資料は、スカイマーク株式会社です。本日、グロース市場に再上場しました。経営破綻から8年です。僕自身スカイマークを愛好する立場でもあるので、非常に感慨深いです。

スカイマーク株式会社(2022年12月14日)

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そもそもスカイマークはなぜ経営破綻したのか。経緯を理解するためには、1996年創立時まで遡る必要があります。

航空業界における規制緩和の影響で、新規参入のハードルが低くなりました。スカイマークは大手航空会社の半額以下の運賃でサービスを実施、以下の記事のように「LCCの草分け的存在」と言われることもあります。

創立4年後に上場するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで成長を続けたスカイマーク。国際線進出を目論み、巨額の投資を決断した頃、円安と燃料費高騰のダブルパンチが襲い掛かります。従業員給与さえ支払うことができず、一気に経営破綻となってしまいました。

こういった外部要因を「運が悪かった」と言い切ることはできませんが、もともとビジネスモデルには問題がなく、投資判断を誤っただけと言えなくもない。その証拠に、経営再建の1年目から黒字となります。

目標としていた2020年上場はコロナ禍によって実現しませんでしたが、2年遅れで再上場に至ったということになります。

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長い前段でしたが、改めて「事業計画及び成長可能性に関する事項」の資料を読み解いてみます。

ポストコロナを見据えて「コロナ禍でもサービス品質を維持向上させつつ、ポストコロナに向けた成長の種まきを実施。加えて、コスト削減により損益分岐点L/Fを低下させ、筋肉質な収益構造を構築」とP14に書いてある辺り、外的要因を強く意識していることが分かります。

実際、2022年はロシアのウクライナ侵攻が始まり、米中の対立が緊迫化、日本近海でも台湾付近の安全保障が「安泰とはいえない」状況が続いています。これから円安傾向なのか、円高へと揺り戻しがあるのか、それさえも予測不可能。スカイマークに限らず、「筋肉質な収益構造」はどの企業でも意識するところでしょう。(レバレッジをかけるような投資が減ることで、急成長を目論む経営者も減りそうですが)

路線を絞っていることが収益化のポイントのひとつですが、羽田発着の構成比が5割を超えています。これは、実質的に成田・羽田のふたつの空港が、日本でもダントツで利用されていることと関連します。

高い搭乗率は価格メリットを感じるユーザーのおかげだと思いますが、注目すべきはコスト構造でしょう。経営戦略論の事例でたびたび出てくるサウスウエスト航空と同様、「短い距離を何本も回す」ことで固定費分を早めに回収するというという戦略です。

航空業界ではもはや常套手段といえます。ただスカイマークのようなやり方を、他業界での転用を試みるのはとても大事なことだと思います。

ひとつの商品に絞れば、その専門家(サービス施行者)がどんどん技能習熟が可能になります。どこまで不確実性を減らすかにもよりますし、不確実性を減らそうとすれば顧客が求める要望にも応えづらくなりますから、なかなか勇気を持って決断しなければいけません。(例えば僕は、特に領域を絞らずに編集や執筆の仕事をしています。中には「○○業界に特化したライター」というのもいて、確かに専門性の高い企業にとっては、業界特化のライターの方が信頼できそうな気もします)

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注目していた「リスク情報」ですが、感染症による影響については「可能性=低い、影響度=大」と見込んでいます。

第8波の真っ只中ですが、日本人にも免疫が広がり、これ以上の外出自粛は──少なくともコロナウィルスに関しては──発生しないだろうと考えているようです。

実際に正しいと思いますが、ここまでの資料で保守的な書き口に終始する印象があったので、それなりに強いメッセージのように感じました。これは会社としての強い願望もあると思いますが、投資家に対して「さすがにここの影響はないですよね?(投資対象としても魅力ですよね?)」と牽制するような思惑もあるのかな?と。考え過ぎでしょうか。

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僕自身、スカイマークはずっと愛好している航空会社です。サービスへの不満は全くなく、これからも快適な空の旅を案内してほしいと思います。

おそらくコロナ禍が明ければ、自然と外出需要も高まるでしょう。コロナ前の2018年度の水準までは回復するはずです。

ただ、それ以降の成長をどう見出すかが資料を読んだ限りは理解できませんでした。価格メリットを武器に、JALやANAなど国内大手の顧客をスイッチさせようというのが戦略でしょうか。

個人的には、コスト構造に強みがあると思いつつ、今までにないチャレンジをしてほしいです。

今のところ国内線100%で運航していますが、少しずつアジア近郊なども路線の候補に入れてほしいなと。国内線だけだと成長には限度があります。日本からアジア、アジアからアジアなどの路線が増えることは、スカイマークの品質を広く周知するきっかけになるとも思うのです。(あくまで、こんなチャレンジが良いなという例えです)

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こちらに過去調査した企業のアーカイブをまとめています。

よければ、ぜひ覗いてみてください。

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