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私と私

セブンでトイレ待ちをしていた。

まだまだ大丈夫だと思っていた関所には、

黒山の人だかりの様に集まってきていた。

まだか、

少し左右に揺れながら扉が開くのを待った。

程なくして出てきた学生に軽く会釈して、

トイレに入った。

鍵をかけようとしたら「バンッ」って、

さっき出て行ったはずの学生が入って来た。

え⁉︎

何?

もう気持ち的にはパンツ下ろしてんねんけど、

学生
「すみません、流すの忘れてました!」

いやいや、ええねん!

そんなことはええねん。

もうこっちはしたいねん。

すぐにでも。

と思いながらも、そのおかしな律儀さに、

少し笑ってしまった。

わざわざレバーを引くために戻って来た学生が、

ジャーっとして、

束の間、

便器から大量に水が溢れ出した。

え⁉︎

マジで⁉︎

ウソやろ!

コイツ便器詰まらせやがった!

アカン!アカン!これはヤバイ!

2人でうわーって言うたけど、

言うてる場合ちゃう!

何がヤバイって、

俺はもうしたいのよ!

そっからはもう学生にもタメ口。


「急いで店員にスッポン借りて来て!」

学生
「へ?へ?スッポン?」


「トイレの詰まりとるやつあるから!」

学生
「あ、はい、わかりました!」

トイレ詰まらすならスッポンくらい知っとけよ!

遅いなぁ!

1分1秒を争っとんのに何をしてんねん!

と心の声で堪えてたら、

敏腕秘書みたいな店員がスッポン持って学生と来た。

秘書から剥ぎ取る様にして

便器と対峙した。

セブンは空調きいてたはずやけど、

一生懸命と緊張で汗ダラダラや。

早よ詰まりをとらなあかん。

早よ取らな、

前屈みでこっちの詰めがとれそうやねん。

そっちの詰めをとろうとしてるのは俺の理性、

こっちの詰めをとろうとしてるのは俺の本能、

俺対俺みたいになってるやん。

俺が傷つくだけの矛盾バトルか。

なんでこうなるんや。ホンマに!

しかし、敏腕秘書店員も思ったことだろう。

この学生が詰まらせたと言ってたのに、

なんでこの人がこんな必死に、

便器と向き合ってるんだろう。って。

いや俺が言いたい!なんでや!

それから、

スッポンからの2回流しでスッキリ流れて、

すぐにトイレに立て籠った。

恥ずかしかったが本能が勝りそうになっていたから、

しょうがない。

なんとか滑り込みセーフで、

自分の理性と根性の凄さに自己肯定感が少し上がった。

トイレを出たら敏腕秘書店員が、

「ありがとうございました。」って言ってきた。

真剣にトイレと向き合う私の理由を悟ったのか、

端に「間に合って良かったね。」という、

幼き頃にみた母の様な、

優しい眼差しを感じた。

あー恥ずかしい。。

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