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Tinderでマルチ勧誘された話#3

その後も呂布には「1度きりの人生」とか「楽しまなきゃ損」とか「後悔したくない」とか浅すぎるフローで攻められたがパンチラインはなかった。
小一時間ほど呂布は話し続け、「一緒に頑張ろう!」と契約書を突き付けてきた。
金額は38万円だった。
そんなにお金持ってないんですよと言うと「君になら貸す!」とか言ってきた。
目がガチすぎて本当に怖かった。
ポチャ子と合流してから2時間半経っていて、正常な判断ができずなんかもう吐きそうだった。
自分の家の住所まで書いてしまった。
1回トイレ行かせてくださいと頼み、トイレの個室で半泣きで東京にいる親友に電話した。

あの時はありがとう

親友は全てを察し、上司のフリをして電話をかけてくれた。
わざとスピーカーをオンにして呂布とポチャ子にも聞こえるようにして通話した。
親友上司は電話の向こうでブチ切れており、客からのクレームが入ったから今から出社しろと俺に命令した。
日曜日の夕方18時に出社命令とか本当だったら労基ダッシュもののブラックである。
さすがの呂布もドン引きしていた。

かくして堀田はマルチ勧誘からなんとか逃れることができたのである。
困った時に助けてくれる親友がいるのに多くを求めすぎたバチがあたったのかなと思った。
この1件があってから本当に友達は大事にしようと強く心に誓った。

最後、呂布が「次会う時は片町だな!」と言ってきた。
ギリギリで獲物を逃がした呂布の目は笑っていなかった。
俺は未だに呂布の影に怯えながら毎週片町で飲んでいる。

                                                    おわり

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