i.school/JSIC ウェビナー 「生成系AIと新規アイディア発想」安野貴博、堀井秀之 2023年10月27日


【堀井】
今日お話しいただく安野貴博さんは、2011年度のi.school修了生です。i.schoolの使命は、安野さんのような才能を育てることであり、ウェビナーに安野さんをお招きできることを大変嬉しく思います。安野貴博さんは、学生の時に東大の松尾豊先生の研究室で学ばれ、その後、ボストンコンサルティンググループBCGで働かれ、それから、チャットボットソリューション株式会社を立ち上げ、リーガルテックスタートアップの共同創業もされました。さらに、小説も執筆し、早川SFコンセプトの優秀賞や保地審査賞を受賞されるなど、幅広い分野でご活躍されました。今後、イギリスのRCAでのデザインの勉強についても伺いたいと思います。また、最近では機械経営にも取り組まれ、非常に旬なテーマでご活躍されている庵野さんのお話を楽しみにしています。それでは、庵野さん、最初にお話をお願いいたします。

【安野】
自己紹介に関して、堀井先生に紹介いただいていますが、大まかに言うと、AIエンジニアとSF作家として2つの異なる活動を行っています。AIエンジニアとしては、AIスタートアップの2つの企業を創業し、一方はコールセンター向けのチャットボットソリューションを提供し、もう一方はモンテスキュー株式会社という企業で契約書を機械に読ませて弁護士や本部の仕事をサポートするサービスを提供しています。

同時に、創作活動も行っており、AIと技術に関連するテーマで小説などを執筆しています。最近では、機械経営という新しい会社を立ち上げました。この会社の具体的な方向性はまだ確定していないものの、様々な案件に対処しています。

最近、岸田文夫総理主催のAIに関する専門家の集まりがあり、生成AIのリスクと潜在能力について議論しました。私は生成AIを用いて声を変える技術で、総理の声マネを行いました。この技術により、リアルタイムで総理の声を模倣することが可能で、これがディープフェイクとして知られています。

また、技術の実装と物語の生成が相互に関連していることをお話ししましたが、ディープフェイク技術を活用して短編小説を執筆しており、6月号の「ディープフェイカーズ」という小説を発表しました。興味がある方はぜひ読んでみてください。

前置きはこれくらいにして、本日2つのお話しをしたいと思います。1つ目は、生成AIのクリエイティブへの応用事例を紹介したいと思います。2つ目に、生成AIがどうアイディア創出に使えるかをお話します。

まず、生成DIの創作への応用事例について説明します。生成DIは、学習データから文章、画像、音声などを生成するAIの一種です。最近、画像生成AIやChatGPTなどが登場し、その有用性が注目されています。私は小説家であり、ChatGPTを小説のアイディア発想や実際の執筆に活用できるか試してみました。

小説の執筆プロセスは大まかに3つに分かれます。まず、プロットと呼ばれる物語の構造を考え、次に話の骨組みを作成し、最後に執筆を行います。ChatGPTのようなAIは、これらの段階においてサポートできる可能性があります。たとえば、プロットの考案、描写のアイデア、日本語表現の提案、読者モニターの代替、文章の構成の支援などが考えられます。これらの可能性を探るために、実験を行いました。

例えば、良い日本語表現を見つける際、ChatGPTに「本文中の×××を埋める言葉のアイディアを挙げてください」とお願いし、適切な言葉を探し出すのに役立つのです。この方法を使うと、文脈に合った単語やフレーズが提案され、類語辞典よりも優れていると感じます。

また、読者モニターとして、ChatGPTにどの部分が面白いか、退屈か、喜びを感じるか、悲しいと思うか、怒りを感じるか、怖いと思うかを尋ね、感想を収集します。この情報をもとに、文章の可視化を行ったり、ChatGPTにツッコミやコメントをさせ、AI読者モニターがフィードバックを提供することができます。これにより、より実践的な文を構築できるようになりました。

LLMを使用して書かれた小説を出版しており、私の短編は「AIとSF」という本に掲載されています。この短編はChatGPTを使いながら執筆されたもので、もし興味があればぜひ読んでみてください。また、別の例として、漫画について言及したいと思います。私は絵を描く才能がないのですが、ステーブルディフュージョンや画像生成AIを活用することで、小説だけでなく漫画も制作できる可能性を考えて実験しています。漫画の制作工程を分解してみると、ネームの作成、キャラクターデザイン、下書き、仕上げなどがありますが、ネームの部分に生成AIを活用できる可能性があることを発見しました。

漫画のキャラクター作成において、四面図を使用して特定の特徴を持つキャラクターを求めた場合、キャラクター設定表が提供され、それを基に各コマごとに必要な描写をリクエストできます。たとえば、特定のキャラクターの特徴を保ちながらさまざまなポーズの下書きを生成してもらうことができます。また、自分で描いた下書きを清書することも可能で、左側の手描きを右側に変換することもできます。さらに、必要なポーズを写真で撮ってオープンポーズという仕組みに入力することで、写真からキャラクターの絵を生成できるようになりました。

AIを使った漫画作成にはさまざまなテクニックがあり、それらを活用すること、絵が得意でない私でも完成品の漫画を作成できるように感じます。また、QRコードを読んでリンクにアクセスできるので、ぜひ試してみてください。技術実装と物語生成を結びつけながら、アイデアソーシティでの活用方法を考えています。2つの主要な方向性があると考えています。1つはアイデアの生成や検証に生成AIを活用することで、もう1つは次のことです。

1つ目のアイデアは大量生成です。大量の候補を提供し、その中から人間が選ぶプロセスです。例えば、Stable Diffusionを使用すると、夜間に3000枚などの画像を生成してくれます。これにより、寝ている間に無限のアイデアを生成し、朝になって使えそうなアイデアを選ぶことができます。このワークフローは非常に効果的だと思います。

また、突っ込みについて、AI読者モニターのようなシステムが意見を提供し、その突っ込みが正確でなくても問題ありません。AIは時に適当なことを言うことがあり、ハルシュネーションの問題が指摘されていますが、生化物に対する突っ込みがあれば、それを考慮し、修正できます。このため、現在のAIはアイデア生成に適していると考えています。

スタンフォード大学の研究者が最近公開した論文があります。自然科学の領域において、人間による査読プロセスが重要な要素です。査読の過程で、査読者が論文の中で改善が必要と思う箇所にフィードバックを提供します。この論文に対してChatGPTにフィードバックを提供させ、その結果、人間とChatGPTの提案がどれくらい一致するのかを調査しました。この研究によれば、人間査読者とChatGPTの提案にはかなりの一致が見られます。つまり、ChatGPTは高度な科学技術の論文においても有用なフィードバックを提供できる可能性があることを示唆しています。

この研究から得られた知見は、新規事業のアイディア創出などにも応用できる可能性があります。アイディアの品質向上や他のアイディアとの組み合わせが考えられるでしょう。

新しいスキルとして、次の3つが重要です。まず、大量の提案の中から適切なものを選択するスキルです。また、フィードバックに適切に対応するスキルも必要です。質の高いフィードバックに対処し、質の低いフィードバックを無視する能力が求められます。最後に、AIをプロセスに組み込むスキルも重要です。アイディアの生成においてAIを活用する方法を考え、実装できる力が必要です。

総合的に考えると、新しいアイディアの創出においてChatGPTや生成AIは非常に有用であり、これらのツールを使いこなすためのスキルが今後ますます重要になるでしょう。

【堀井】
はい、安野さん、楽しいお話をありがとうございました。先日、テレビを見ていたら、なんと安野さんが映っていて、先ほどご紹介いただいた岸田総理にデモしているところを映ってまして、ご活躍してると嬉しく思いました。技術実装と物語生成ってなかなかうまいことを考えるなと思いました。なぜ小説を出されるのかということがよくわかりました。他にも聞きたいことがいっぱいあるのですが、その質問を理解していただくためにも、ちょっとお話をさせていただきたいと思います。また後ほどよろしくお願いいたします。

熟達者AIの開発のお話をさせていただきたいと思います。i.schoolは新しいアイディアを生み出す教育を2009年からやってきているわけです。人工知能に対する期待が裏切られるってことは3回ぐらい過去にありましたが、今回のChatGPT等の生成AIブームは違うという感じで、皆さんもおそらく業務の上で活用されたりして、有能な部下や同僚、プロンプトを工夫すれば応えの質が上がるということを業務での利用を通じて感じておられると思います。学習データの規模をさらに拡大する、あるいはモデルの高度化ということで、チャットGPT3.5が4になったように、4がまた4.5、5というふうに発展していくことが想像できるわけです。その時に人で行うi.schoolは必要ないのかとか、i.schoolとしてはこういう事態をどういうふうに捉えるのかとか、スタンスを聞かれるだろうと、自問自答して考えることがありまして、その結果をお話ししたいと思います。

一つはスモールタスクとビッグタスクという考え方です。一つのプロンプトを工夫して対応できるような課題、これをスモールタスクと呼んで、プロンプトを連続的にいくつか組み合わせてやっと答えが出てくるようなプロンプトシークエンスが必要なものをビッグタスクと呼ぶことにします。ワークショップのプロセスを設計するというi.schoolでやってることは、プロンプトシークエンスのデザインということと非常に類似してると思います。良いプロンプトを書いて生成AIを使いこなす人になるために、やっぱりプロンプトシークエンスのデザインができないと困ると思うんですけども、i.schoolとか、あるいは社会人を対象に行っているJSIC Schoolとかは、まさにプロンプトシークエンスの作成能力を身につける、有効な手段であると思っております。どんなに生成AIが進歩したとしても、おそらくビッグタスクを適切なプロンプトシークエンスで解決できるようになるには、かなり時間がかかると思うので、i.schoolやJSIC Schoolの重要性は失われないだろうと思っています。

例えば、これはイノベーションワークショップ・プロセスの標準モデルで、ワークショップはこういうモデルに従ってプロセスを設計するわけですけれども、こうしたプロセスに関する知識、こういうものはi.schoolで学んでいくものだろうと思います。また新規性を生み出すアプローチとして6つのアプローチを選択し、組み合わせ、異なるテーマに対して適切なアプローチを選ぶわけですけれども、こういうこともやはり経験知による部分が多く、修行を積んで学んでいくことだと考えています。

アイデア創出ワークショップは新規性、有効性の高い製品サービス等のアイディアを生み出す、本来の機能以外にも、それに参加する人をポジティブにする効果がありますし、組織の文化、風土を向上させて、より良いチーム、より良い組織、そういう組織改善の効果がアイディア創出ワークショップにあると思います。こうした効果は、たとえChatGPTあるいは生成AIが進歩したとしても、それで代替できるものではないので、組み合わせてうまく使うということはあると思いますけども、人を変えていく、組織を変えていく、こういう効果はいつまで経ってもなくならないものではないかなと思います。

その人のポジティブな状態というものを表すものとして、心理的資本というのが使われています。自己効力感、希望、レジリエンス、楽観性から構成されるものです。12の質問に答えることで、6点満点で評価が計算されます。ワークショプ前の分布は青の棒グラフで示され、ワークショップの後の結果は赤の棒グラフで表示していますが、人々をポジティブにする効果があると思われます。

i.school/JSICは、チームワークに焦点を当てており、彭さん率いているリサーチグループはチームワークを可視化するウェブツールであるTeamVisを開発しています。ワークショップのデータを提供すると、その結果が表示されます。

例えば、あるワークショップの結果を見てみましょう。あるチームの結果を示すと、発話量が均等で、対話の分布も均等で、参加者が活発に参加していることがグラフから分かります。同じワークショップで別のチームの結果を見ると、2人が一生懸命会話しており、対話の分布が偏っていることがわかります。このように、チームのコミュニケーションパターンや活性度合いには違いがあり、それらとポジティブな感情の相関があることが示唆されています。

TeamVisを使用してワークショップを分析することで、ワークショップの品質向上に役立つ結果が得られます。TeamVisの開発が終了し、正式版がリリース予定であるため、次に何を行うかを考えているとこに生成AIのブームがやってきました。生成AIの進化は必然ですが、やらなければならないこととして熟達者AIの開発を考えました。

例えば、熟達建築家の建築を学習すれば、その建築のような建築はいくらでも生成することは可能ですけれども、 その熟達建築家に依頼して、注文して作ってもらう建築物とはやはり違いがあるだろうと思います。機械学習では学習できない経験知のような暗黙知があり、 かつてよく言われてましたけれども、暗黙知の形式知化が重要であると思います。そうした熟達性を取り扱うことはできないのかということを考えています。

昔、第二次AIブームがあって、エクスパートシステムというのが随分研究され、難しいということがわかりました。簡単な問題をエクスパートシステムで解かせる。 問題をだんだん難しくしていくと大きな壁に当たって、どうしても熟達者のように問題解決ができない。

熟達者は上級者とどう違うのか、約20年、1980年から2000年くらいに、 いろんな分野の熟達者を調べて、上級者との違いを明らかにする熟達者研究がなされました。わかったことはいくつもありますが、共通してわかったこと は、熟達者になるためには分野を問わず10年の修行が必要だということです。モーツァルトのような天才もいるという主張もありますが、ある人がモーツァルトの全曲集を調べて、モーツァルトの全曲集だから載っているのであって、やはり英才教育を始めた6歳頃から10年間は曲の質は後の曲に比べると落ちるみたいなことが論文の中で報告されたりもしています。

熟達者になるベストな方法というのは熟達者のそばにいること、熟達者の徒弟となるようなこと、とにかく熟達者と一緒にいることが重要であることが当時言われていました。もしAIが熟達者に丁稚奉公することができたとすると、10年はかからないと思います。人間が伝えるのでそれなりに時間は必要だけれども、10年が3年か1年か半年か分かりませんけれども短縮できるのではないかなと思います

建築の場合は結構難しいことがあるので、まずは文字ベースでできる領域から始めるべきでしょう。例えば新しいアイディアを生み出すi.schoolでやってることですが、2009年から培ってきたそれなりにたまっている経験知がありますから 、そういうものを学習させることが考えられます。

そういうことによってサクセスストーリーというかサンプルというか、こういう方向で熟達者AIがうまくいくっていうことを示せば、経験知を学習する方法は一般性を持たせることができるでしょう。 例えば次は経営の熟達者を連れてくるとか、比較的やりやすいところから絵画であるとか建築であるとかデザインであるとか 、いくらでも発展していくことが可能なのではないかと考えておりまして、熟達者AIの開発を始めてみたいと思っております。

【堀井】
安野さん、ここから少しご質問をお許しいただければと思います。まず、BCGを辞めてから会社を起こして小説でも成功され、順風満帆な道を歩まれていると感じますが、その後、思い立ってRCAにデザインを学びに行かれることになった背景にはどのような理由があったのでしょうか? どうしてデザインに興味を持たれたのでしょうか?

【安野】
ありがとうございます。小説家として順調かどうかは、まだ一冊の作品しか出していないため、まだまだ初心者の域から抜け出せていないと感じています。RCAに進学したきっかけは、以前にi.schoolで参加したワークショップが関係しています。そのワークショップは、韓国で行われ、マイルズ先生という、今は東大で教鞭をとられている方のものでした。そのワークショップが私にとって非常に印象的で、イノベーション、デザイン、アートなどに対するアプローチに魅力を感じました。RCAはこのアプローチに近いと感じ、面白そうだと思い、進学を決めました。

私がRCAに入学したのは、マスターコースではなく、それより前の段階で、グラデュートディプロマと呼ばれるコースでした。このコースは、学士と修士の間の位置づけで、デザインやアートに未経験の学生が基礎から学ぶコースで、1年間のプログラムでした。結局、デザインイノベーションに興味を持って入学しましたが、進学後はアートの基礎を学ぶコースになりました。

最初はアートについて全くの無知で、絵を描いた経験もありませんでした。クラスメートは各国のアートスクールから来た経験豊富な人ばかりで、私は異世界に飛び込んだような感覚でした。しかし、意外にもアートは非常に面白く、自分でも絵を描くことを試みました。結局、最初の目的とは異なり、デザインに加えてアートにも魅力を感じるようになりました。こんな感じです。

【堀井】
なるほど、先ほどは技術実装と物語生成の関係性について話していただいたと思います。また、物語ではなく漫画についても触れられていたので、デザインの知識を拡充することが、AIの発展に寄与する可能性があるのかなと期待感を感じられたのでしょう。

【安野】
色々なフォーマットで物作りというか、ストーリー作りをやってみたいなと思ってます。

【堀井】
経歴を見ていたら、M1グランプリで2回戦敗退という自虐的なエピソードが目に付きました。

【安野】
自虐ネタのように見えるかもしれませんが、実はM1グランプリの1回戦突破は、所属事務所に入っていないと非常に難しいことなんです。当時、ロボットのペッパーくんとのコンビでM1に出場し、2回戦まで進んだ経験があるんです。自分にとっては誇りのある出来事で、その年のロボット出場者の中では最も成功した部類に入ります。

それは2015年の話ですね。M1が1回終わった後に復活した年に参加しました。時が経ち、今度は別のアプローチでお笑いの世界に挑戦したいと考えています。AIや現在のチャットGPTについても話してみますが、現時点ではジョークが通じないという課題があります。この点にブレイクスルーがあれば素晴らしいと思っています。

【堀井】
以前挑戦された際は、ロボットと人間のコンビでの試みでした。お笑いのネタを生成し、それを人間が演じるというアプローチもあり得るでしょうし、ロボット2つで実現することも面白いですね。

【安野】
そうですね。そういうやり方ができるかなと思います。いろいろそこも挑戦しがいがあるかなという感じがしますね。まさに熟達者AIではないですけど、 大喜利がめちゃめちゃ上手い人とかいるので、そういったものは文字情報だ けでいろいろ研究もできるという気はしますね。

【堀井】
なるほど。イギリスでデザインの勉強されてから帰ってこられてすぐに会社を立ち上げられました。機械経営というのは面白と感じたました。これからだっていうことをおっしゃられましたが、現時点でお持ちのお考えを教えていただけますか。

【安野】
長期的には、機械による経営を実現させたいと考えています。このアイデアは、多分、堀井先生が言及された熟達者AIの展望と一部共通する部分があるかもしれませんが、私は経営者の役割について、実は人間である必要性がない可能性があると思っています。

経営者の役割を大まかに分けると、論理的な意思決定を行う部分と、従業員のモチベーションを高めたり、ブランドを築いたりする部分の2つがあると考えています。実は、この両方において、人間である必要性がない可能性があると思っています。将来的に、機械がCEOの方が、人間がCEOの会社よりも生産性や収益性が高まる可能性があるなら、それが社会の構造に大きな変革をもたらす可能性があると考えています。

したがって、長期的な視点から、機械による経営という名前をつけ、将来の可能性を探求しているのです。

【堀井】
おっしゃる通り、今日お話した熟達者AIと安野さんの機械経営は、完全に一致するわけではありませんが、かなり共通する点もあると思います。実際に行動に移す際に、口で言うのは簡単かもしれませんが、AIに学習させる方法についての詳細や実際の実行においては、どうすべきかという重要な課題があります。そのため、具体的な展望が必要です。

例えば、RAG(Retrieval Argument Generation)といった技術を使用するのか、ファインチューニングが適切なのか、その他のアプローチがあるのか、こういったことについて何かお考えがあればお願い致します。

【安野】
そうですね、RAG(Retrieval Argument Generation)やファインチューニング、LLMプログラムなど、現代のAIのパフォーマンスを向上させるためのさまざまな手法が出てきていると思います。しかし、私が特に注目しているのは、AIエージェントとそのエージェントのためのサンドボックス環境やシミュレーション環境です。これらの環境が非常に重要になると考えています。

例えば、ディープマインド社(もしくは別の会社かもしれませんが)が前に提案したように、マインクラフトという有名なゲームをGPT-4などのAIに解かせる試みがありました。マインクラフトは広大な世界があり、プレイヤーはテクニックを身につけながら探索を行い、貴重な資源を見つけ、敵を倒すなどの課題に取り組みます。こういった課題をAIに達成させると、AIはテクニックを身につけ、それを別の課題に応用できるようになります。このような研究が行われており、箱庭環境の中で無限に試行錯誤しながら難しい課題を解決する能力をAIに身につけさせる可能性があると考えています。

つまり、機械経営の例で言うと、経営に対してインタラクティブな実験が失敗を含めて行えるような「箱庭環境」をAIのために提供することが非常に重要になるのではないかと思っています。このように、AIに対する新たな展望を持っています。

【堀井】
英語では「熟達者」も「エクスパート」なので、エクスパートAIになってしまいますが、日本語では「エクスパート」と「熟達者」には少し違いがあると個人的に考えています。たとえば、経営に関する話題で言うと、以前インタビューしたことがあるとのですが、その方は「熟達者」で、中小企業の経営支援を行うアドバイザーのような存在です。通常、経営支援の際には財務諸表などをチェックすることが一般的ですが、この方はバランスシートなどを見ないで、とにかくクライアントの話を聞いて、1分以内に具体的なアドバイスを提供する特殊な能力を持っています。

このように、この熟達者は、1分間で話を聞き、新しいアイデアや戦略を提供し、それがバランスシートの数字からでは導き出せないものなのです。つまり、コスト削減などの一般的なアドバイスとは異なる、特別なアドバイスを提供する存在なのです。私は、このような能力を機械が模倣できるようになれば素晴らしいと考えています。ただし、これは容易な課題ではないと思います。安野さんがこのような状況に直面した場合、どのように対処されるかについて興味があります。

【安野】
そうですね、この問題について考えると、2つの要素が重要だと感じます。まず、熟練の専門家(熟達者)は、無限のパターンを認識し、瞬時に特定のパターンを識別し、そのパターンに対して効果的なアクションを見抜く能力があります。これが1つ目の要素です。

そして、2つ目の要素は、専門家が1分間の会話から相手に対してズバッと的確なアドバイスを提供し、そのアドバイスを受けた経営者が実行意欲を持てることです。つまり、経営者がアドバイスを受けて実際に行動に移せることが必要です。

前者は主にパターン認識に関連しており、大量のデータがあれば対処できる可能性があると考えています。しかし、後者は人間らしさや人間らしい判断が必要な場合があると思います。AIが優れたアドバイスを提供しても、それを実行し、自分の資産や人生に影響を与えるという点で、人間らしい考慮や戦略が重要になる可能性があると感じます。

したがって、AIが提供するアドバイスを受けた経営者が、それを実際にどのように活用するか、また、AIのアドバイスを通じて人間的な要素を引き出すためには別のアプローチが必要かもしれません。

【堀井】
そうですね 先ほどのアイデア創出ワークショップには 人をポジティブにする機能があるという話と相通ずるところで、そこは人間でなければというところですね。ただそれが人間であるのと機械であるのとどういう差があって、 どこの 部分がどのように効いているのかを調べるのは面白いでしょうね。

【安野】
堀井先生のプレゼン聞いてて、熟達者ワークショップ参加者みたいなAIがいた時に、そういったAIの中で人間が一人だけ参加して果たして自己効力感は上がるのだろうかということを思いました。 相手が人間だから自分も乗れるし、だからこそそういったいいベネフィットを受けられているのか、それともそうではないのか、ということを考えました。そこって堀井先生的にはどう思われますか?

【堀井】
全員が人間だけでワークショップを行うべきではないでしょうか。そこで機械を使おうとする必要はないかもしれませんね。違う話であると。

私は前者のアプローチに興味がありますが、安野さんは経験があるため、できるとおっしゃられる。ただ、実際にはかなり難しいかもしれないと思います。本人自身も気づいていないか、少なくとも意識の中にはないかもしれません。長期記憶を探っても、簡単には思い出せないこともあるでしょう。

【安野】
確かに、本物の熟達者は考えずに感覚的に行動します。思考せずに、直感的に物事を判断し、そのレベルに達するのはかなり難しいでしょう。そうですね、そこに近づくことができれば、AIの進歩にとって大きな進歩となるでしょう。

【堀井】
そうですよね 多分安野さんにお伺いしたい質問がたくさんあると思うので 宮越さん ちょっとお願いできますか。

【宮越】
ありがとうございます。私はi.schoolの宮越として、今日は事務局を務めております。たくさんの質問が寄せられていて、嬉しいです。それでは、質問に入ります。まず、大学生についてのお話ですが、最近の大学生はチャットGPTが教育現場に導入されているため、先生の言葉よりもチャットGPTの言葉を信じる傾向があるとおっしゃっていますね。チャットGPTが時折嘘をつくこともあるにも関わらず、彼らはチャットGPTの言葉を信じることが多いそうです。そのため、次世代の学生たちは、機械経営や企業の方向性を伝える際に、人間でなくても良いのかもしれないと感じられたということですね。

【安野】
それは面白い視点ですね。今の子供たち、特に幼稚園児は、ChatGPTなどのインターフェースを自然に扱えるようになっているため、キーボードを使う前からコンピューターと対話する経験をしていることが多いです。実際に、彼らはChatGPTとコミュニケーションを取りながら成長しており、AIに対する捉え方は、私たちの世代とは大きく異なるでしょう。

【堀井】
大学の教員には、学生がChatGPTを積極的に利用することは問題ないと思いますが、一方で、ChatGPTの提示した情報に対して、それが本当に正しいのか、または異なる視点があるのか、といった議論を促進することが教員の重要な役割だと思います。つまり、ChatGPTが提示する情報に対して疑問を投げかけ、別の視点を提供し、学生たちに対話や議論を通じて深い理解を促すのが、教員の役割であるべきだと思います。

【安野】
レポートの課題を完全にChatGPTに任せた結果、学生たち自身が考えることがなくなったということが問題になっているなか、知り合いの大学の先生から聞いたんですが、解決策として、ChatGPTで書かせたレポートを学生に添削させたと聞きました。

【宮越】
皆さんからいただいた質問にいきたいと思います。生成AIを使いこなすためのスキルの中で千休眼が必要だと言われましたが、素人の場合、千休眼をどのように習得できるでしょうかという質問が寄せられています。

【安野】
無数のアイディアから優れたアイディアを見つけることについて、これはAIとはあまり関係のないトピックかもしれませんが、一つ考えるべきポイントがあります。それは、アイディアを見つける能力を訓練することです。このスキルはAIと関連があるかどうかにかかわらず、重要なものです。また、AI関連の話題に戻ると、AIは特定のバイアスを持ちやすいことがあります。ChatGPTなどが特定の傾向を持つことがあるため、そのようなバイアスを認識し、扱う方法を習得することも、千休眼的なスキルの一つかもしれません。

【堀井】
その通りだなと思いますチャットGPTが答えを生成する仕組みを理解し、その仕組みに基づいて質問をすることが重要です。チャットGPTに対して、未来の出来事や基本的な情報に関する質問をすると、通常は既知の情報に基づいた一般的な回答しか得られないことがあります。ですので、賢明な質問の仕方やアプローチが、千休眼のスキルを養うのに役立つでしょう。

【宮越】
癖を理解するためには、もちろん構造を知ることも重要ですが、それを効果的に使いこなし、自分の中で理解する必要があります。お二人のお話を聞いていて、そのことが明確に思いついたと思います。

次に質問です。多分、お二人に対する質問だと思いますが、AIによるプロンプトの自動生成技術が進展しているという話を聞いたことがありますが、今後もプロンプト生成技術は必要だと考えていますか?

【安野】
素晴らしい質問だと思います。個人的に、最近はステップバイステップのアプローチが強調され、AIに深呼吸をさせるような方法や性能向上を提案するテクニックが増えています。これらは実際に効果があるものの、持続的なものではないと感じています。それらのテクニックを知らなくても、オープンAIや他の研究者がAIの性能を向上させてくれるでしょう。

一方で、堀井先生が言及されたプロンプトシークエンスや、一往復では対処できないような複雑なワークフローやLLMプログラムのような技術は、より長期間にわたって有用であると考えています。これらの技術を考案し、実装することは、将来的に役立つでしょう。プログラミングの昔からのアプローチとも類似しており、新たなアプリケーションが登場すれば、幅広い適用が期待できるでしょう。そのようなレベルの議論になると思います。

【堀井】
安野さんの言われた通りだと思います。生成AIは進化し続け、プロンプトの工夫など、今は人手で行われている部分も自動化されていくでしょう。プロンプト生成のプログラムは簡単に作成できますが、これらの機能もAIに統合されていくことでしょう。

プロンプトシークエンスに関しても、大量のデータを収集し、適切なプロンプトを生成できるBabyAGIのようなアプローチが試みられています。このような技術は、大規模なタスクに対応できるように進化するでしょう。ただし、我が社にとって有益な革新的なアイデアを生み出すようなビッグタスクは、工夫が必要であり、i.schoolやJSIC Schoolで学ぶか、熟達者AIを開発する必要があるかもしれません。

【安野】
堀井先生が言われた通り、プロンプトシークエンスとワークショップデザインは似ていると思います。私も同じように考えていました。

【宮越】
実際、安野さんのプロセスを分けて考えて、それぞれの段階で生成AIを効果的に活用することも、ワークショップの設計と似ていると感じます。

【安野】
厳密なアウトプットを規定できない状況でも、特定のプロセスに従うことで、一定の結果を期待できるようになります。アウトプットを適切に設計し、それに合わせて行動することで、反応が生まれるという共通点があると思います。

【宮越】
なるほど。では次の質問いきたいと思います。これはどちらかというと ビジネス寄りの質問なんですけれども 、先ほど我が社にとってイノベーティブな新規事業を考えてくれっていうのは、3つぐらいのプロンプトでは難しいという話があったと思うんですけども、この事業創生の時に必要な顧客ニーズを生成することはできると思いましかというご質問です。

【安野】
確かに、今のチャットGPTに関しては、ネット上の情報を調査する程度のことはできると考えていますし、基本的な一般知識も備えているでしょう。しかし、エクストリームユーザーインタビューや、非常に深い掘り下げを要する長時間の対話において、本質的な洞察や深い反応を提供するのは難しいと思います。このような情報を取得するには、現時点では限界があるのかもしれません。

【宮越】
i.schoolのワークショップにおいて、通常、表面的に見えるニーズと実際には何が本当に必要で、人々が何を求めているのか、といった分析を行うことが多いと思いますが、堀井先生はこの点についてどうお考えですか?

【堀井】
LLMがどのようにリスポンスを生成しているのかを考えると、通常、大量のネットワークデータに基づいて答えを出しているため、非常にまれで数が少ない事例に関する詳細な情報は希少になる可能性が高いです。したがって、一般的なニーズについてはかなり可能であると思いますが、特定の、つまりエクストリームユーザーのような要求を満たすためには、その特定の事例に関する情報を再学習し、微調整して、プラグインを作成する必要があるでしょう。

【宮越】
この辺りも先ほどおっしゃったように、熟達者AIに近づくというか、深さの意味では、そうですね。ありがとうございます。では、少し思考の方向を変えましょう。安野さんが書かれた漫画や小説に興味を持つ方々から、2つの観点でいくつか質問が寄せられています。まず、AIを使って生成した漫画や小説には、人間とは異なる特徴があるのでしょうか?まず、コンテンツに関してですね。

【安野】
今後、もっと本質的な違いが出てくるかもしれませんが、現時点で言うと、完全に映画のように生成される例はあまりなく、創作の補助という側面が主流かと思います。私が考えるところでは、漫画に関しては、オーバーアクトした絵が出やすい傾向があります。微妙な感情表現のために、怒っているときが30%で笑っているときが70%のような微細な表情を生成することがコストがかかるため、そのようなシーンを作成しにくいと感じます。小説については、国語力がまだ足りていないと言いますが、それは情報の圧縮密度が人間の執筆物の方が高いからです。プロの小説家は、非常に簡潔な言葉で深い意味を伝える文章を書けることがありますが、チャットGPTなどでは、情報を1から10まで詳細に説明する文章を書きがちです。このような文体の違いは現在存在すると言えますが、これらの問題は創作AIが進化するにつれて克服されていくでしょう。その後、本質的な違いがどのように発展するかはまだ十分に理解されていないと思います。

【宮越】
もう一つ、別の観点から著作権について質問があります。著作権について、どうお考えですか?

【安野】
多分、まだ現在、コンセンサスや明確な法的枠組みが確立されておらず、さまざまな訴訟が発生している段階だと思います。国によってもルールは異なり、日本の場合、作品の創作性が認められる限り、生成AIを介して作成されたものも著作物として認識される可能性があると考えています。たとえば、単に「女の子を描いて」と指示された場合、その絵は著作物とはみなされないでしょうが、具体的な特徴や背景の工夫が加えられていれば、それは著作物として認められるでしょう。また、生成AIの使用が補助的で、人間が創造的なアプローチを取っている場合、その部分に著作権が認められる可能性があります。

面白いのは、生成AIが出力した絵をトレースし、ほぼ同じものを作成して著作権を主張するという議論が海外で行われていることです。これにより、法的な観点から見て非常に興味深いディスカッションが生まれる可能性があると思います。

【宮越】
ビジネスとイノベーションの可能性について、以前は人間中心のデザインやアート思考などさまざまな思考法が流行しましたが、現在も多くのアプローチが存在します。ただ、次なる流れとしてAIが注目されているように感じます。このような背景のもと、安野さんと堀井先生がさまざまな思考法に触れていると思いますが、今後のビジネスイノベーションはAIを中心に進化するのか、それとも新たな思考法やアプローチが生まれて何かが変わるのかについて、どのようにお考えですか?

【安野】
個人的な予想として、現在はまだヒューマンセンタードなサービスや製品が主流であり、地球上の富の大部分が人間の最終意思決定者によって購入されていると考えています。法人の意思決定者も基本的には人間です。しかし、将来的にはAIエージェントが商品の購入や販売に関与するようになる可能性もあるため、最終的な意思決定者が変化するかもしれません。その場合、市場においてAIセンタードなアプローチが大きな市場規模を持つ可能性があると思います。これは長期的な視点からの予測で、最終的には財布を握る主体が誰かという観点が重要になるでしょう。

【堀井】
生成AIの能力が向上し、優れたアイデアが生み出される一方で、議論があったように、人間にしかできない領域があることは確かです。アイデアを生成することはAIの得意とする分野かもしれませんが、それを人に説明し納得させたり、感動させたりする部分は人間にしかできないでしょう。生成AIがますます進歩しても、この部分は人間にとって不可欠なスキルとなり続けると思います。

将来的には、AIが将棋のような競技で人間に絶対に勝つ可能性が高いかもしれません。しかし、それが将棋愛好者やプレイヤーがいなくなることを意味しないし、将棋が魅力を持たなくなるわけでもありません。AIの進化に対処し、新たな面白さや挑戦を見つけることがあるかもしれません。未来については予測が難しいですが、面白い議論ですね。

【安野】
確かに、チェスなどは昔からコンピューターに勝てない時代が続いています。しかし、最近の10年間を見ると、チェスのプレイヤー数や人気が減少しているようで、これにAIの影響がある可能性もあるかもしれません。一方で、将棋はここ数年で人気が上昇しており、藤井聡太などが注目を集めています。どちらの将来が実現するのか、非常に興味深いテーマですね。

【宮越】
理解しました。ワークショップにおいて、テキストや画像だけでなく、タンジブルなアウトプットを生成する試みについての質問ですね。アイデア創出ワークショップでは、アイデアをテキストだけでなく、プロトタイプを作成することで深化させることが多いと思われますが、AIにプロトタイプを生成させて議論の出発点とすることは可能かどうか、という点についてお尋ねしていますね。

【安野】
確かに、AIの進化によってタンジブルなプロダクトの生成が可能になりつつあります。最新の生成AIは、3Dモデルの制作なども実現できるため、スクリーニングプリンターなどを利用して、物理的なアウトプットを迅速に行うことも考えられます。また、ファッション業界においても、AIを使用してスケッチやデザインのアシストが行われ、プロトタイプの製作に活用されています。このような技術は、様々な分野で広まりつつあり、大量のプロトタイプを効率的に生成することで、開発プロセスが迅速化し、イノベーションの促進に寄与する可能性があります。

将来的には、AIが生成から選択までのプロセスをサポートし、ECサイトや市場への製品の投入に活用される可能性があるでしょう。一方で、機械が選択する段階においても人間の判断が重要であり、そのバランスを保つことが重要です。AI技術の進化がビジネスや製品開発に与える影響は、これからの展望が非常に興味深いです。

【堀井】
近い未来を考えると、絵を描かせたり、情報を二次元に整理したりすることは簡単に実現できます。既に利用可能なプラグインを使って、図を描いたり、Mermaid図で出力したりすることが可能です。また、画像を自動的に生成するプログラムと連携して、迅速にアウトプットできるようになるでしょう。これらの進化は、半年から1年、2年程度のスパンで実現する可能性が高いと思います。また、3Dプリンターと組み合わせて利用するアプリケーションも増えてくるでしょう。

【宮越】
安野さんは自己紹介の際に技術実装と物語生成について言及されましたが、物語生成を妄想とみなす場合、実現可能性を保ちつつ妄想を最大限に活かすために重要な要素は何だとお考えですか?

【安野】
こういう技術があるときに、人間はどういう動きをするんだろうか、みたいなことを物語の中では考えていくんですけども、その人の気持ちになって考えると、i.school的に言え ば その人のエスノグラフィーを妄想の中でずっとやってるみたいな、ユーザーインタビューをずっとやってるみたいな 気持ちになってきて、その人の目線から見たときにこの技術はこういうものがあるといいんじゃないか、みたいなことを結構思いついたりするんですよね。それを普通にプロダクトを作る方向に持っていく、みたいなこともできますし、なんか結構物語を作るっていうのは、それ自体が割と何かに没入して何かを新しいアイデアを考えるみたいな きっかけになる気がします。

【堀井】
私も安野さんに質問があります。最近機械経営を始めたばかりで、5年後に成果を出すことができると予想していますが、その後何をするか、あるいは最終ゴールは何なのか考えていますか?

【安野】
何なんだろう。なるほど、すごい深遠な問いですね。堀井先生の最終ゴールって何なんですか?めちゃめちゃ質問で返してしまうんですが。

【堀井】
i.schoolは私のライフワークです。安野さんのような日本や世界を変える人材を育てることを考えて、i.schoolを開始しました。初期の段階ではワークショップの前半プロセスに焦点を当て、次にアイデアの評価やワークショップ後半の試行錯誤に取り組んでいました。去年から、アイデアの事業化にも焦点を当てた教育を提供するようになりました。これがうまく行けば、卒業生はアイデアの事業化に重点を置くようになり、安野さんのような方が増えるでしょう。それが私の最終目標の一部です。

【安野】
私の根本的なモチベーションはi.schoolの時から一貫しています。イノベーションや社会の変化を加速させたいという考えが根底にあります。今行っていることは、世の中の変化のボトルネックが何かを考える一環で、以前は技術革新のスピードがボトルネックでしたが、最近は社会の需要や個人の心の変化が重要になってきています。そのため、人々のマインドチェンジを促進する方法が進歩の鍵であり、物語を通じて人々の脳に影響を与えることが、効果的なアプローチである可能性があります。したがって、物語生成は世の中の変化の速度を向上させるための重要な手段であり、私のアプローチの方向性は変わらないと考えています。具体的な活動は状況によって変化します。

【堀井】
分かりました。次に安野さんが何を始められるのか、すごく楽しみです。よろしくお願いします。頑張ってください。

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