AIがザハの意志とセンスを継ぐ
ザハといえば、曲線を使い大胆かつ奇抜なデザインで知られていますが、その先進性のために実際の建築にはさまざまなハードルがあり、多くのプロジェクトで予算が超過し、いくつかのプロジェクトが頓挫することもあったため、「Queen of the Unbuilt(アンビルドの女王)」とも呼ばれていました。
日本でも国立競技場のデザインが採用されたにもかかわらず後に白紙撤回されたことなどもありました。
彼女は2016年に65歳という若さでこの世を去ってしまいましたが、AIの進化により彼女の残したDNAは、新しいステージに向かっているようです。
先日、ザハ・ハディド・アーキテクツは、「DALL-E 2」や「Midjourney」のような生成AIを、デザインアイデア開発のために使用していると、明らかにしました。
この記事の中で、スタジオ代表のPatrik Schumacher氏は、
と述べています。
こちらは、Neomでザハ・ハディド・アーキテクツのプロジェクト候補をAIが生成した画像ですが、Schumacher氏は、このテクノロジーに「力をもらった」と感じているという。
こちらは、Stable Diffusionを使ったイメージですが、ザハの特徴的なデザインである流体が表現されています。
同じくザハ・ハディド・アーキテクツがデザインしたホテルですが、こちらは、「Midjourney」を使って、ヴィーナスの曲線をベースにしたホテルとダイニングのコンセプトを作り、女性の柔らかい曲線を有機的なラインで表現しています。
これまでも、多くのブランドにおいて、創業者やデザイナーがいなくなってもその世界観やデザインフィロソフィーは残ってきましたが、AIの進化によって、深いレベルの遺伝子が次の世代に受け継がれていることを感じます。
さらに、ザハ・ハディド・アーキテクツはこうしたデザインワークでAIを活用するだけでなく、対象となる建築物自体の中にもAIを有機的に取り入れる試みを行っています。
ザハ・ハディド・アーキテクツは、廃棄物管理会社Bee’ahのために環境に優しい本社ビルをアラビア砂漠に建設しています。この建物は、100%のグリーンエネルギーとリサイクルされた材料を使用して建設され、廃熱を利用して温水を提供するエネルギー回収システムが特徴です。Microsoftの協力を得て、AIシステムが室温、水の輸送、従業員へのアクセスなどのさまざまな側面を制御します。
かつて、英ガーディアン紙はザハの死に際し、彼女を「Queen of the Curve(曲線の女王)」と紹介して、哀悼の意を表しました。
そして時が経ち、彼女の意思を継いだ人たちが、AIと協働することによって新しい建築の形がみえてきました。そこでは、彼女は「Queen of the Architecture(建築の女王)」と呼ばれることでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?