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「フック」と「ロック」で"競争優位性"を考える。


こんにちわ、NEWh 堀です。
去年9月から描き始めたnoteも今回で6本目。
続いてるえらい。

今回のテーマは「競争優位性」。
事業開発の中では必ず向き合わないといけない論点。
ポジショニングマップを書いて、自社の独自の立ち位置だったり、競合より優れている点を明示したり、比較表を書いてみたり。

ただこの競争優位性って人によって結構解釈に揺れがある、いわゆるビッグワードだなとも感じてたりします。
今回はこの競争優位性、というものと向き合ってみます。


競争優位性を分解してみる。

競争優位性とは比較対象となる他社より自社が優れている要素であり、
言い換えれば、顧客が自社を選ぶ理由と表現できるものだけど、
今の時代、業界の垣根は崩壊し、競合とすべきプレイヤーは広がり、同時に、新市場を切り拓いたとしても、後発参入業者のスピードも早くなっている。なので、顧客に選ばれるだけじゃ不十分で、不確実な時代においても選ばれ続ける。持続性の観点も必要な気がする。

と、考えると競争優位には2つの側面がありそう。
競合/代替品を使っている顧客が自社に振り向いてくれる、「選ばれる理由」
そして、その上で、
自社を選んでくれた顧客が、後発参入や競合の侵食/進化の中でも自社から離れない「選ばれ続ける理由」
この2つの論点と向き合うことが競争優位性と向き合う、ということかと。

つまり、
競争優位性とは「選ばれ、選ばれ続ける理由」であり、
構成要素としては、
選ばれる理由「フック」、そして選ばれ続ける理由「ロック」この2つに分解される。
そんな捉え方をしてたりする。

2つの優位性「フックとロック」


選ばれる理由「フック」

フックと表現した側面は比較的イメージがしやすいかも。
ポジショニングマップだったり、競合比較の星取表のようなもので割とアウトプットされてる印象もある。
ただ、このフックの観点でよくない例として2つくらいある気がする。

①顧客放置型のフック
いわゆる会議室ポジショニングマップ、とも揶揄されるような優位性の規定。当然自社が選ばれる理由は、顧客にとっての判断軸の上で展開されるべきもの。
なんだけど、実務上はどうしても自社の立ち位置、ユニークさを表現することに思考が傾き、顧客にとって重要ではない軸で、自社が選ばれる理由を事業主主導で描いてしまうようなパターン。あるある。


②夢想型のフック
こっちもありがち。競合優位性は自社だからこそできる実現性の上にあって初めて規定されるべきもの。実現性を伴った優位性こそが描かれるべき。
だけど、顧客の重視している軸に傾きすぎたり、違いを明示することに傾きすぎたりすると、実現性が放置された夢物語のような優位性を描いてしまうパターンもある。
東京から大阪が10秒で移動できるような速さがあれば、どんな人も選ぶだろうけど、現時点では夢物語。

2つのパターンは文面で眺めると、そらよくないでしょ、となるけど
実務上では割と描きがち、描かれがちな気がする。

顧客が自社を選ぶ理由である「フック」は顧客の目線と、競争環境の観点、そして、自社の目線、それらの板挟みの中で規定されるべきもの。


概念としてはこんな感じかも。

「フック」は顧客と競合、自社の板挟みで描かれる

※顧客と競争環境から描かれる「競争軸」の考え方については過去のnoteで書いてみたのでそちらを参照



構造としては、事業/サービスを特徴づける、違いを出す軸/要素はいっぱいある。
その中で、
顧客にとって重要な軸、競合間で違いを作り出そうとしている軸を通じて
選ばれるかどうかを分つ軸「競争軸」が浮かび上がり、
自社が突き抜ける軸「選ばれる理由」に帰結されていく。
一方で、
自社が選ばれる理由は、
自社や他社の様々なアセットによって支えられ、体現される。
さっきの構造をもう少し細かくすると、
一つの大樹のような、こんなツリー構造になってくる。

優位性ツリー:顧客と競合、アセットの間で「実現性を伴う優位性」が描かれる


どう表現すれば自社の特徴が伝わるか、ではなく、
顧客と競合、そして自社の観点の板挟みの中で、
自社が選ばれる理由「フック」は導いていかないといけない。深い。


選ばれ続ける理由「ロック」

一方、競争優位性のもう一つの側面である「ロック」
こちらは顧客が振り向いた後、自社を選び続けてくれる理由。
事業の持続性に向き合う側面。

こちらは、さらに2つの側面に分解される。
顧客を離さない理由を作るのか。
競合が動けない理由を作るのか。
片方と向き合うことが結果的にもう片方をロックすることにも繋がるという関係性はあるが。

「ロック」の2つのパターン



さらにさらに分解すると「ロック」の構築パターンは色々ありそう。

「ロック」のバリエーション

この辺りの詳細は今回は説明解説しちゃうけど、いずれにせよ事業の持続性と向き合う「ロック」のアプローチは様々なものがあり、
自社だからこそできる構築アプローチと向き合うことが必要な気がする。


じゃ、どう描くのか。
根底にある思想は、
Amazon創業前にジェフベゾスが紙ナプキンに描いたと言われている成長サイクル図。ぐるぐる図。
事業活動を通じて、何が蓄積し、どのように事業がより強固なものへと進化していくのか。
このぐるぐる図を構想し、なぜ自らの事業は「選ばれ続けることができるのか」と向き合う。そういうアプローチな気がする。

amazonの「成長サイクル」


このぐるぐる図を描く上での論点を
かなり抽象度を高め、言語化すると3つの問いに集約されるかもしれない。

つまりは、
Q.事業活動を通じ、何が蓄積されるのか?
Q.それは自社事業における「何を強化するのか?」
Q.結果として、「なぜ選ばれ続けることができるのか?」

ロックを描くための3つの「問い」


どのような事業であれ、世に出し、事業活動を継続していく中で新たに獲得、あるいは蓄積されていく資産があるはず。
それは、新たなデータかもしれないし、新たな顧客層やパートナーとの接点、関係性、あるいはオペレーションの習熟など様々なものがある。
自らの事業を動かしていくことで蓄積されていくものは、何か?が一つ目に向き合う問い。

2つ目の問いは、「(蓄積されたものを通じて)自社事業の何が強化されるのか?」。
データや、オペレーションの習熟といった新たに蓄積されたものは当然、蓄積されるだけでは意味がなく、自社の事業活動の中の何かに活かされることが必要。先のamazonの例では出品者が増え規模拡大により、規模の経済性が働き、低コスト構造への繋がりがある。
ただ、この「何が蓄積され、何が強化されるのか」という繋がりは、
様々なものが描けるはず。
顧客の購買データを蓄積していくことで、レコメンドの精度が強化されていくのもあるし、
もしかしたら、
書店や出版社、著者との繋がりが蓄積されていくことで、新刊などの事前情報を取得する速度が強化されていく、という繋がりも描けるかもしれない。

そして、
最後の問いが「結果、どのようなロックに繋がるのか?」
ここまでの2つの問の主語は「自らの事業」だけど、この問いにおける主語は「利用者や競合」。
自社事業が強化された結果、利用者や競合にとってどのようなロックを創り出すことに繋げられうるのか?の言語化が最後。

Amazonを例に挙げて書いてみるとこんな感じか?

Amazonのロックを書いてみる


自社事業が強化される循環サイクルにはいくつもの要素と、繋がりが絡み合うので、他にも要素や繋がりはあるかもしれない。
だけど、その中でも
中心に据える自社のぐるぐるサイクルはなんなのか、と向き合い、
そぎ落とし、言語化する。

これが「ロック」と向き合うことな気がする。こっちも深い。


まとめ

競争優位性って深い。
自らのアイデアの特徴を上司に伝えるためだけに描かれるべきものじゃなく、選ばれ、選ばれ続ける理由を、
いろんなことを頭に入れながら、考え、そぎ落とし、言葉にしていく工程。
言うは易し、なんだけども。。
大事な考え方な気がする。

以上、競争優位性とは。でした。

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