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【Kuradashi】時流を捉えた価値と売り切る力を体現させる仕組みがすごい



はじめに。

初めまして、NEWhビジネスデザイナーの堀です。
NEWhという会社で企業の新事業開発を支援させていただくお仕事をしてます。事業開発領域に関わる中での気づきや、思考、悶々などなどを色々発信していきます!

NEWhでは、これまでの事業開発領域でのご支援の経験を通じて、事業構想を前に進めるためのフレームワークとして「バリューデザインシンタックス(以下VDS)」なるものを開発し、実PJTで活用しているのですが、今回はこのバリューデザインシンタックスを用いて、世の中の素敵な企業さんを紹介する、というnoteを書いてみました。

事業構想を「書く」フレームワーク。バリューデザインシンタックス。

バリューデザインシンタックスの解説についてはこちら。


VDSでケーススタディ「kuradashi」さん

で、今回ご紹介させていただく企業さんはこちら。
フードロス削減と向き合う「Kuradashi」さんです。

KuradashiさんをVDSを用いて整理してみました↓。
以下、このアウトプットに沿って、kuradashiさんの魅力を伝えていこうかと。

ケーススタディフォーマット

「kuradashi」の事業概要

まずは事業概要から。
kuradashiは、「日本で最もフードロスを削減する会社」というビジョンを掲げ、食品メーカー等の廃棄予定食品をオンライン、オフライン双方で利用者に届けるマーケットプレイス事業を展開する企業です。特徴的なのはオンラインマーケットから社会貢献団体へ向かう寄附の動き。kuradashi上に並ぶ商品ページにはそれぞれ支援金額が記載され、売価に内包されています。利用者が購入した金額の一部は社会貢献団体への寄付に繋がる構造になってます。

オフラインチャネルも展開されてますが、オンラインマーケットのみを切り出し。



このkuradasiの事業構造、魅力をVDSを用いて整理してみました。

「kuradashi」のコンセプト:フードロスのジレンマ


まずは、「誰の」「どの課題に」「何を提供し」「どのような価値を提供しているか」、kuradashiのビジネスコンセプトです。

VDS「コンセプト」ブロック:フードロス取り組みたい、けどできないというジレンマ

kuradashiにとっての顧客はメーカーと廃棄予定食品を購入する生活者の双方が存在しますが、kuradashiにとって仕入れ先となるメーカーを起点に、また飲料や食品等複数のメーカーが顧客となっていますが、食品メーカーを起点として解説をしていきます。

・kuradashiが向き合う課題
食品メーカーにとって、SDGsへの取り組みへの意識は高まる一方で、フードロスに関しての取り組みは大手を中心に様々な取り組みが進められていますが、抜本的な改善にまではなかなか至っていない現状であり、「やりたいけど、できない」もやもやが生まれています。その背景要因は2点。

1点目は、流通業界に存在する「1/3ルール」という独自の商慣習。メーカーは製造してから賞味期限までの期間のうち、最初の1/3を過ぎるまでに流通側へ納品をするというもので、食品の安全性、消費者の"鮮度"への関心の高さを背景に設定され浸透したものですが、この商習慣により、メーカーにとっては賞味期限まではまだ時間があるものの、既存の流通ルートでは流せず、廃棄品が生まれる要因の一つとなっています。

2点目の要因は、既存事業に対しての悪影響懸念。特にブランドへの影響懸念。廃棄予定食品の流通の中心はディスカウントストアですが、価格を下げてディスカウントストアで売られている商品が生活者の目に触れることによるブランド毀損への懸念は、フードロスへの取り組みの積極化を躊躇させる要因の一つです。

このような要因から、フードロスは食品メーカーとしても、「経営や社会的な期待、要求を背景に積極的に進めていきたいが、進められない、廃棄せざるおえない。」というジレンマ的課題がある領域となっています。

・kuradashiが提示する解決策
このような課題に対して、kuradashiは、「商品購入が寄付につながる社会貢献の側面を併せ持つ既存流通とは異なる新たな流通経路」を提供しています。
・社会貢献団体と提携し、利用者が廃棄予定商品を購入する際に、同時に寄付ができる。(購入画面に寄付金額が明示されており、利用者側にも寄付/社会貢献活動への参加が可視化される)
・メーカーは、1/3ルールに依拠せず廃棄直前であっても生活者に商品を販売できる。


「kuradashi」の戦略と仕組み:"始めやすさ"を支える「売り切る力」

続いて、、競合ひしめく中でkuradashiが選ばれ、選ばれ続けている戦略と仕組みについてです。

VDS「戦略と仕組み」ブロック:"始めやすさ"を体現する

kuradashiにとっての競合≒(メーカーが廃棄予定食品を処理する方法)は、「ディスカウントストア」か、「廃棄する」というものが中心。フードロスへの取り組みは冒頭で解説した通り、メーカーとしても慎重にならざるを得ない領域である中で、メーカーを振り向かせることができた優位性は、「手軽さとリスクの少なさから作られる"圧倒的な始めやすさ"」なのかも、と感じます。kuradashiは、メーカーから廃棄予定商品を買取、販売する仕組みをとっているのですが、(※現在は一部メーカー保有商品をプラットフォーム上で直接販売できるマーケットプレイスモデルも提供)。メーカーからすると、kuradashiに商品提供をした時点で、売上が立つ。更に、掲載料や手数料も無料であるため、費用や収益的なリスクはほぼない。更に更に、社会貢献、寄付活動の側面を強く持つ場であるので、ブランド毀損観点のリスクもない。"リスクなく、とにかく始めやすい"ことがkuradashiがメーカーに選ばれた理由ではないかと。

一方で、この優位性を真の意味で実現・体現するには、kuradashi側には"賞味期限直前でも確実に売り切る力"が求められます。

この力は、
代表が物流/流通業界経験者であり、「賞味期限が近くとも確実に届け切るノウハウ、ネットワーク、適切な販売価格を設定する能力」を保有していること、そして、社会課題への意識の高まり、意欲を持つ生活者の増加といった「社会的なトレンド、時流」「オフライン・オンライン双方での商品提供による買える場の多様性」を通じて、実現をさせています。
※kuradashiのローンチは2015年2月でSDGs採択は同年9月。代表さんのインタビュー記事曰く、ビジネス構想自体はローンチ以前から長年温めてきたものだが、社会課題意識、機運の高まりを重視し世に出したとのこと。"タイミングを捉える"って大事・・。

ちなみに、
優位性は「選ばれる理由」だけではなく、「選ばれ続ける理由」という、事業の持続性を捉える側面も私たちは必要と考えてまして、VDSでも「選ばれ続ける理由」としても優位性を規定する構造となっています。
この観点においてKuradashiを眺めてみると、廃棄予定食品を買取、売り切るという事業活動を通じて、「どのような商品が、どのような人に、いくらであれば売り切れるか」というノウハウ、データが蓄積されていき、結果「売り切る力・精度」が更に強化され、kuradashiのフードロス削減における実績や信頼が溜まっていく。手軽にリスクなく始められるから選ばれる、利用を始めるとkuradashi導入による効果/実績が生まれ、それは信頼に変わり「選ばれ続ける理由」として昇華されていく。廃棄予定食品に特化した購買データって保有しているプレイヤーもあんまりいないのかもしれない。強い。



「Kuradashi」の収支モデル:売り切る力を証明

VDS「収支モデル」ブロック

最後に収支モデル・採算性について。
kuradashiにとっての収入の中心は廃棄予定食品を購入する際の生活者からの代金。一方で支出側は、メーカーからの仕入れ原価、及び配送に伴う各種費用(荷造り運賃)が主コスト。その他広告宣伝費等等は発生するだろうけど、コスト構造の中心はこれらの売上原価費目が占めている。(23/6期だと売上原価率は50%強)。
これらのコストはメーカーから廃棄予定商品を仕入れた時点で発生するけど、収入はkuradashi上で商品が売れなければ当然入らないため、"売り切る力"が実現できていなければそもそも粗利が生まれない構造。だけど、kuradashiは既に粗利どころか限界利益ベースで成立しているようで(※直近で限界利益率23.3%)、kuradashiの持つ「売り切る力」は、採算性観点からも証明している状態。

今後は固定費回収、ひいては利益創出に向けた規模拡大に動いているようだが、フードロスはじめ社会課題意識、トレンドは生活者、企業側双方で引き続き高まっていきそうなので、まだまだkuradashiさんの勢いは続きそう。

Caseからの学び

課題の着想/タイミングの捉え方。

1/3ルールは、業界の中にいなければ知りうることのできないものである一方で、業界の中にいれば前提条件、与件、当たり前として取り扱うようなルールな気もする。このルールに対して違和感を感じ、フードロスのボトルネックとして捉えた点がいいなぁ・・と。
また、文中でも触れたけど、事業として世に出すタイミングについてはかなり戦略的に意図されていたようで、「When:今が適切なタイミングか?」という観点もとても大事だなぁ・・と。


初回なので、甘いところも色々あるかもだけど、以上「VDSを活用してCaseStudyしてみる」でした。

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