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脳性麻痺児の体調管理【目的別の温めセルフケア】

お子さんの体調管理に気を揉んでいる親御さんは多いと思います。
今回は体を温めることで体調管理が出来ますよ!という内容です。

当記事が対象として設定しているのは小学生くらいまでです。中高生や成人は温める時間を5〜10分プラスしても大丈夫だと思います。
紹介する注意点やリスクは同じです。

ご家族はお子さんやご自身の体調管理に、セラピストはご家族への提案の1つとして!
是非、御一読下さい。

まずは注意事項やリスクから把握しましょう。
アプローチする際に重要なのは「悪くしない事」と思っているのでお付き合い下さい。



注意点

ホットパックにしろホッカイロにしろ温かい物を体に当てる場合に注意したい事が、
・感覚鈍麻(熱を感じにくい)
・感覚脱出(熱いと全く感じない)
・言語コミュニケーション困難
などです。

いずれにしても「熱い」「不快」を訴える事が難しく低温ヤケドのリスクが高まります。
・肌に直接当てない
・お肉の少ない所に当てない
・マメにチェックする
・一定時間で場所をずらす
・当てたまま寝ない
など、気を付けたいところです。


低温ヤケドとは?

おおむね44〜55℃の熱源に数分から数時間にわたり接触して発生する専門的な治療を要するヤケドです。
低温ヤケドの特徴は、
・痛みや熱さを感じにくい
・見た目は軽症
・皮膚の深い所で進行する

具体的には、
「44度で3時間20分、46度なら1時間半、50度では2分45秒で症状が表れ、熱さや痛みを感じないため皮膚の深い部位の組織が壊死して重症となる傾向があります。」
※引用 三豊・観音寺市医師会

どうやら40℃中盤あたりが安全な感じです。
一般的な熱源の温度がどのくらいか見てみましょう。


一般的な熱源の温度

●ホッカイロ(はるオンパックス)
・最高温度 63℃
・平均温度 53℃

●ホットアイマスク(めぐリズム)
・約40℃
公式にあまり情報が無かったです。

●ホットパック(あずきのチカラ)
・約40℃(500wで2分加熱)

めぐリズムとあずきのチカラは蒸気が発生する湿熱となるのでホッカイロより深部を温める事が出来ます。

ホッカイロは平均温度も高く低温ヤケドのリスクが高そうです。小児に対してホッカイロを使用するのはイマイチかもですね。

ホッカイロは乾熱(乾いた熱)なので皮膚が薄く皮脂の少ない小学生の時期は乾燥トラブルにも繋がるのでオススメしません。


リスクの高い部位

おおむね皮下脂肪が薄く、直下に骨がある様なところになります。
例えば、

・仙骨、骨盤部

引用 ヒューマン・アナトミー・アトラス

・膝関節や肘関節

引用 ヒューマン・アナトミー・アトラス

一般的にはこんな所だと思います。
ただし、脳性麻痺など肢体不自由の子供達は少し事情が異なります。

脳性麻痺児の場合

脳性麻痺のお子さんは、
・筋肉が少ない
・皮下脂肪が少く痩せ
・血管の発育が弱い部位がある
・血流が悪い部位がある

などの理由から背中や太ももなど通常安全そうな所でも注意が必要です。

「えぇ・・・じゃあ出来ないじゃん。」
「どうやったら良いんだよ。」
大丈夫です、ちゃんと考えてます!笑


エビデンス・ベース・ケア

セルフケアでご家族が気になるのは
効果あるの?
どうやるの?
どの位やれば良いの?

個人的な経験のみだと明瞭に答えることは難しくなります。なのでセルフケアについてはより一層エビデンスベースで提案しています。

エビデンスレベルは高くないですが、しっかり効果測定をした事実を基にした方法論となります。


用意する物

・レンジ加熱のホットパック
または
・ホット用のペットボトル
・フェイスタオル

ペットボトルを湯たんぽ代わりに使用する場合の水とお湯の割合は、
・お湯100℃
お湯4〜4.5:水6〜6.5
・お湯90℃
お湯5:水5
フェイスタオル等で包んで使用。

お湯と水の比率はお好みですが、低温ヤケドのリスクを考えると42〜45℃あたりが適度と思われます。

レンジ加熱のホットパック製品はだいたい40℃くらいなので記載通りの使用方法で大丈夫です。

目的別の温めケア

当てる温度は論文ベースだと20分程ですが、脳性麻痺という事を考慮して10分とします。
☆マークのついた文章は個人的な見解です。

●筋肉や関節が固まるのを予防したい、筋肉の緊張を軽減したい!
・当てる箇所
固いと思う所や麻痺している部位
☆膝や肘なら凹側が良い
・より効果的
温めてからストレッチ

●リラックスして欲しい、睡眠を改善したい!
・当てる箇所
首や肩

●苦痛の軽減
・当てる箇所
首や肩

●便秘を改善したい!
・当てる箇所
腹部、心窩部(みぞおち辺り)、腰部


【参考文献】
・ホットパック療法における筋硬度、血流量対する効果の検討
・ホットパック療法における治療時間の検討
・自律神経活動からみたホットパック温罨法のリラクゼーション効果
・脳性麻痺児・者に対するホットパックの有効性の検討
・2008年から2019年に発表温罨法に関する国内文献の検討


経験的にオススメなケア

●風邪の予防
・当てる箇所
首の横、デコルテ

●腹痛、下痢、足の冷え
・当てる箇所
内もも

●手の冷え
・当てる箇所
脇の下

●低気圧による不調
・当てる箇所
耳、首

●発育を促す(栄養の改善)
・当てる箇所
みぞおち


まとめ

温めるケアは注意点などを知れば有効で安全なセルフケアです。体を温める事で免疫も活性化して体調管理に一役買います。

免疫はウィルスや細菌などの外敵駆除だけでなく、体内の掃除係でもあります。
体の中で1番多いゴミは自分の死んだ細胞です。
掃除が行き届けば体調も良い状態を保ちやすいので冬場だけでなく通年やってもらえると体調管理としての意義も高まります!

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