未必のマクベス
シェイクスピア作品で唯一、朧気ながらあらすじを知っている「マクベス」。
理由は、
早瀬耕さんの著書『未必のマクベス』(ハヤカワ文庫)に完全に引き込まれたから。
小説化されたタイミングで書店のPOPに
『こんなにも素晴らしい作品を書店として表に出すまで時間がかかりすみません』という趣旨のメッセージが添えてある。
「初恋の人の名前を検索したことがありますか?」
この帯文が胸に刺さる。思い当たる節しかない。
一度は買わずに書店を去ってから幾日か経って、刺さったものがじわじわと深くに入り込んでくる。
手にしてから、読み進めるまで時間がかかった。
今となって何度も読み返すと、冒頭をちゃんと読まないといけなし、
スルスル読めるのに、その時は時間がかかった。
読書はタイミング。
その時々に欲するものに出会えばスルスルと読めるが、
タイミングでないものは時間がかかる。
『未必のマクベス』を読めたのは出張か旅行かで飛行機に乗ったときだった。
飛行機に乗ると憑りつかれたように読み進めた。
降りながら、移動しながら、とにかく読んだ。
「初恋の人の名前を検索したことがありますか?」
の意味を無事回収して、浸る。
遠方に出かける度に読む。思い出す。それを繰り返している。
未必の日々を反芻しながら。
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