見出し画像

蓬莱の妃 2章1節 《火の章》 §5



前振り


いつも来て戴き有り難うございます。
この前振りを奇数セクションごとに書いていますが、特に毎日アドベンチャー的な生活をしている訳では無いのでネタ切れの状態で書いている事をご了承くださいませ(言い訳ですw)

前セクション(§4)は以下の場所になります。

あとこの章より前の話は以下の場所にあります。一部無料で読むことはできますのでご購読をお願いします。



登場人物


 榊原 由希子(さかきばら ゆきこ):現職の仲介者で裏との繋がりで在籍をしており様々な事件にも大きく関わっていると思われる。部下に自分専用の運転手、取り巻き(彼女は『狗』と呼んでいる能力者)が4人いる。性格は非常に傲慢で粗雑で倫理観皆無だが、彼女が『あの方』と呼んでいる人に関しては絶対なる信仰を持っている。佃からは『ゲス女』と呼ばれている。

 城戸 正三(きど しょうぞう):現在旧小山村の廃トンネルおよび近隣の隠れ施設にて人造人間を開発及び製作をしている科学者グループの責任者。元帝都東京大生物学教授だが倫理的に問題あったために学会と学校から追放されてしまった。だが本人は復讐より完璧な人造人間を作り出す方に専らの関心と情熱を持っている。無論人間としての倫理観は皆無。との事だが嘗て大学教授だった頃は学生に対しておおらかで【学校一のコーヒーマイスター】として尊敬されていた。

 須長 永順(すなが えいじゅん):日本共和国内務省副次官であり仲介者資格を持つエージェント。同じ省内にいる遠藤(遠藤仁明:内務省調査員統括)と同期になるが思想が正反対の人間。あくまでも己の出世しか考えていないのでその為にあらゆる者を利用している。《帝》の内通者の一人。

 ガントレット:本名不明。《帝》側から依頼されて宮内家の動向や妨害活動をしているエージェント。世界中で暗躍している【モルガナリアス族】から独立して暗殺稼業などを行っており、彼自身はイデオロギーでは動かず金銭的な事のみで動く信条を持っている人間。



§5 この博士に死刑宣告を添えて。【午前8時 由希子語り】


《榊原由希子は一昨日から廃村になったこの場所で行われている実験に立ち会っていたが、前日の盟友、というより愛玩していた狗1号をやられてしまったものの、此処での実験が佳境に迎えいよいよ『始動』するという事で待機していた。》


 「ほんと、此処って何にも無い所だわ。何が楽しくてこんな所でセコセコ仕事しているのかしら・・・半分化け物の私には最早考えもつかない生活ですわね。
 まぁ私はムカつく奴を殺してあとは・・・」

 私が今見ている風景には湖と木しか無いという普段の生活圏では殆ど縁が無い風景を嫌味なぐらいの癒し成分を見せつけられているわ。
 けど、それが私にとって如何に私の心が荒んでいるかと言うのを嫌なぐらい感じている。

 この村には一昨日からいるけど、一昨日は薄暗い元トンネルを改造した所で適当にパーティションに区分けされて寝室にしていた所で、昨日はそれよりかはだいぶマシにはなったけど、建物は古ぼけていて面白みの無い建物の2階の端っこにあるバルコニー付きの部屋に泊まる事になったのよね。
 この部屋になったのは建物内が全館禁煙と言う私にとって非常に不愉快な環境なので、施設として喫煙者が宿泊する際にはこの部屋を充てがわれる事になっているとの事らしいの。
 まぁ単に私の存在自体が鬱陶しいから端の部屋にしたと言っても怒りゃしないけど、バルコニーに出れば吸えると言う環境を用意しただけでも判っているわね。

 とは言え、今の私は上半身裸で赤のショーツを履いているだけと言うベッドから起き上がったままの姿で外部の冷気に素肌を曝せるのは貴重かも。
 家でこんな格好でベランダに居たら間違いなく変態さんと思われるから、こういう開放的になれる環境って新鮮だなとも思っているわ。
 多分外気は一桁の気温だと思うけど、この体になってからは裸でもこのぐらいの冷気だったら何にも感じ無くなってるので正直普通の人間では寒いのでしょうね。

 私が暫くこの周りに何にもない風景を観ながらタバコをふかしていると、部屋内から私の昨夜の性相手をしていた狗4号がバルコニーに入ってきた。

 「お早う御座います、マム」

 「おはよ。昨夜も私の性処理ご苦労さん。スッキリしたわ。」

 「お役に立てて何よりです。」

 「そうね・・・昨日1号が屠られたから、もう実験体は私とあんただけになってしまったのよね。
 【実験動物】として生きているのは私たちと下で眠っている実験体の子供を入れて3人・・・だったわね。

 私たち実験体は子孫が残せない筈だったのに・・・でも子供が居た事自体良かったのかどうか正直複雑な心境だわ。
 でもね、漸く色々やってくれた奴等に復讐できる段取りも出来つつ有るから・・・ほんとあんたにも苦労かけたわ。」

 「いいえ、私はマム程苦労はしておりません。全てマムが背負って戴いたのですから。」

 「一応私はあんたの飼い主だから忠実な者には優しくしているつもりなのよ。
 だからあの胸糞悪いマッドサイエンティストにはもう少し役に立ってもらわないとね・・・こんな裏切り行為をしているけど。」

 と言って私はA4サイズの紙1枚を右手で摘んで、それを顔の目の前に翳しその紙に軽く息を吹きかけた。

ここから先は

6,947字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の1節目の作品になり…

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?