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蓬莱の妃 2章1節 《火の章》 §3



前振り(あまり本編とは関係ない話)


いつの来て戴きありがとうございます。
本当に今年の春ってよくわからん感じで終わったと思っておりまして、既に梅雨のはしりという感じの天候ばかりで滅入っております。
更にはもう10年近くお付き合いしているりんごpcさんがもう限界っぽい挙動をしている感もあり・・・もう買い替えかなと思っている次第です。
その為にも物書き収入は是非ともと思い日々書き連ねております。
という事でご協力をお願いいたします。

それで、前セクション(§2)はこちらになります。

それから一括でお読みになりたい場合はこちらまで。
それと今回も1万字越えになりました。

あとまだこのサイト(note)にて前章をご覧になっていない方はこちらにて。



登場人物


 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。能力者であるが本人の希望で今のところ未開発。その他姉妹や輝夜のモデル仲間からは『鉄分提供者』とか『師匠』と呼ばれている。

 矢作 夏美(やはぎ なつみ):輝夜のモデルとしての先輩であり「お酒の師匠」の一人である。モデルとしては日本国内でトップクラスの人気者。輝夜のモデル仕事は大抵彼女からの依頼によるもの。趣味は旅行と地酒巡りで輝夜と(と言うより黒田と)出会う迄は専らバイクでの旅行しかしなかったが、黒田から電車での旅行の話を聴いて(洗脳され)すっかり電車での旅行にもズッポリハマっている最中。故に黒田の事を『ししょー』と呼んでいる。

 春原 芽(すのはら めい):輝夜のモデルとして若干後輩であり友人。趣味はソロキャン、スピ巡り、遺跡巡り。彼女も黒田から影響され乗り鉄と言う趣味に目醒めた。公には隠しているが元々密教系の「能力者」でもあり、日々の鍛錬の一連という事で時折輝夜とフィジカルトレーニングをする事も有る。術式の能力をさることながら格闘センスは能力者としてトップクラスとの事(輝夜談)。後日、輝夜の「付き人兼世話役」の一人として過ごすことになる。

 後 清純(あとり せいじゅん):本名不明の30代女性で、元々奈良我真家の領主我真新(後記載)のサポートガーディアンの一人。9月に遭った強襲事件では新を逃した後最後までスタッフの事を守っていた人間で彼女他数人は現在富士吉田の宮内本家にて活動。能力は万能型だが補助と回復がメインの術者であり『仲介者』の資格をもつ。



§3 トラップ発動【午後12時半、午前9時過ぎ 黒田、咲夜語り】


《黒田、咲夜は今日こそ平穏な1日に過ごせるかと思っていたが、既に咲夜に対して禍々しい【トラップ】を仕掛けていた。》


(正午過ぎ 実姉が入院していた病院にて 黒田語り)

 「んー、今日も予定していた事が大きく変わってしまいました。」

 現在12時半を回っておりまして、私と咲夜お嬢様が今居るのが富士吉田市内の病院の入院病棟の一室です。
 私の当初の予定では、午後から東村越の手嶋屋様に一昨日の調査についての速報という形の調査報告書を提出する事になっておりました。

 しかしながら、今日も予定が変わってしまいまして現在は咲夜お嬢様の付き添いで病室内で見守っております。
 幸い彼女は容態が安定してぐっすりとベッドで横になって左腕に点滴を打っている最中です。

 私も流石に3日連続でこうバタバタするのは精神的にだいぶ負担がかかっている感じになっております。

 この3日前までは極めて平穏ながらも、ちょっとした人為的な騒動や富士山の小規模噴火が偶にあるぐらいの日常を過ごしておりましたから、この激動の3日間は私にとって相当量の命の配分を削られているなぁと感じております。

 此処に運ばれた当初、咲夜お嬢様からは『黒田さん、もう大丈夫だから入院までしなくても。』と言いましたが、ここ数日お嬢様も色々有ったのでひょっとしたら彼女でも解らないような精神的なダメージが思っている以上の物なのではと思いましたので、一通りの手続きをさっさと終わらせ彼女に拒否させる隙を与えず半強制的に入院させました。

 でも、正直こんなに上手く入院させる事が出来たと今更ながら思っています。何しろ当初は自分の端末も家の端末も一切通じなかった状態でしたから、断られ覚悟で生前姉が入院していたこの病院に飛び込みで入ってみると運よくベッドが空いていたと言う感じでした。
 それで何やらこんやらやっているうちに漸く落ち着き、お嬢様が寝ているベッドのヘッドボードに埋め込んである時計を見てから今の時間を知ることが出来ました。

 お嬢様の寝顔を見ると何となく私の判断は正しかったと確信していたものの、何故こうなったのか未だ詳しい事を訊き出してはいなかったと言うのが私の今時点に於いて考えられる不安材料となっております。
 家では端末が使えずどうしようも無かったのですが、病院に着いて手続きを終えた時再び端末を使用したら呆気なく本家に繋がったので咲夜お嬢様が入院していると言う事を本家のお手伝いさんに伝えました。

 『そうですか、それは大変でした。黒田さんの今のお話では幸い大事に至らなかったと言う事で私共も安心しております。』

 「それでまだそちらに輝夜お嬢様がいらっしゃれると思いますけど。」

 『確かにほんの一時間弱前までいらっしゃいましたが、今はお館様(荒太の事)と一緒に緊急の用事で大槻の病院までお出かけされました。
 何しろ昨日から大槻の方で原因不明の症状で病院に運ばれている方が沢山出ていると言う話しを聞きまして、多分良からぬ人間の仕業と言う事をうちの者から連絡が有りましたので御二方それらの救援でおでかけされました。』

 「え、お嬢様と荒太さんが・・・只事では無いかと。」

 『そうですわ、お館様が動くこと自体大事ですから。しかも輝夜お嬢様と一緒と言う事なので私自身は詳しい事まで判りませんが尚更大事な話しかと思われます。』

 「それで行ったのは大槻の病院、だけでしょうか?」

 『ええと、大槻の病院へは既にうちのエージェントも居ますから諸々対処するのはお任せするかと思われます。それでその後は確か・・・神姫湖に行くとも仰っておりました。』

 私は神姫湖と聞いてとても嫌な予感を感じながらも、今応対しているお手伝いさんに今後の事を伝えて通話を切りました。

 『これ以上何も起こっては欲しく有りませんけど、お嬢様たちを狙っている人が直ぐ近くに潜伏していると言う事ですけど・・・私にはどうしようも出来ません。』

 と私がこれからの事を悩んでいた時、咲夜お嬢様はぐっすりベッドに寝ている間朝からあった事を【意識外】で整理をしていたみたいです。

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既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の1節目の作品になり…

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