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蓬莱の妃 1章1節 《水の章》 §3


前振り


いつも来て戴きありがとうございます。
今回は前日出した物の続きになります。
出し方を試行錯誤しておりますのでご迷惑をお掛けいたします。
セクションごとに分割して出している関係で今回は2万字まで行ってしまいました。

この章は既に一括で電子出版している物になりますので、一括でご覧になりたい方はこちらまで。

あと前日だしたものはそれぞれこれになります。



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 右田 勇次郎(みぎた ゆうじろう):東村越市にて造り酒屋『手嶋屋酒蔵』の代表取締役社長をしているが、もう一つの仕事として現役の登山家としても活動中。今回の事件の依頼主。極めて理知的な性格をしており身内や社員から、その他地域からの信頼が厚く経営手腕も国の内外から注目されている人物でもある。が、妻と義理姉のやりとりには何も出来ないという無力さに悩んでいる節もある。 
 黒田(光流)とは宮内家からお酒のご贔屓にしているだけでは無く、2年前から富士北麓での『フジトレ』ツアーの企画で全面協力している関係もあり目上の人間として二人の『猛獣使い』(宮内姉妹)として黒田の事を信頼している。



§3 マーベラスな空間とイケメンと囚われた存在【咲夜語り】


《宮内姉妹は今日の依頼で東村越にある【手嶋屋酒蔵】に到着。其処に待ち受けていたのは・・・》

 私達が依頼者の店に到着したのはギリギリ正午前、店内に入って私は『相変わらず混んでいるなぁ』と感じましたが、後で聞いた話では一時期より落ち着いて来たとの事です。
 今日の調査の日の指定は確かに手嶋屋さんからの指定(恐らく更来紗さんの計略で決まったと思われますが)で比較的に余裕がある昼前のこの時間帯に来ました。

 この建物が出来た時には全世界・衛星上の都市というような内惑星の報道関係者がこぞってここに取材に来てその時の記事に、

 《今から400年以上前の建物が未だにこの地にて存在している。
 まるでタイムスリップで現れたような外観と内観は古の日本人の魂が息づいている。非常にマーベラスな存在だ。》

 とその時の取材したマスコミからは一律にこんな書かれ方をされていたと言う記憶が有ります。

 私がここの店に来ることになったきっかけは、今から5年前ですから私は未だ未成年の時にどういう研究で来たのを失念していますが、私が大学生の時に入っていた『ボタニカル研究会』と言うサークルで伺ったのが初めてでした。

 その時は今日のように電車ではなくサークルの方が自家用車を所持していたのでそれで来たと記憶します。
 その私が在籍していた『ボタニカル研究会』はメインメンバーは薬学研究学科と言う学科所属の人間が中心になって居ました。
 メンバー人数は幽霊部員を入れると把握できないので積極的に参加していたのが大体10人前後ぐらいでした。

 活動内容は元々の創設母体が薬学研究をやっていた人間が中心だったのでケミカルな薬ではなく自然に存在している植物等から薬を開発すると言う正当な活動に即したものから、いわゆる『魔女の秘薬を研究・実験』までしている物までやっていました。
 魔法研究(あくまでも一部の人間だけですが(無論咲夜も入っている(笑))をやっていると言う事で一部では怪しい同好会扱いをされたり、メンバーが『ちょっとネジを外れた事』を悪意でやってはいなかったものの頻繁にやらかしていたので学校でも目を付けられたりして、私自身能力の一部を使ってメンバーさんと(※1)色々魔術的な事もしていたので別名『咲夜様ファンクラブ』とか『黒魔術養成塾(虎の穴(笑))』とも言われていました。

(※1)『仲介者』や能力者が能力を利用する際には一応の規制がかかってはいるが、それらを法律で規制しようとするものは存在していない。
その理由として過去の国民会議において《能力の規制法案化》と言う議案審議の際にそれに反対していた議員から「自然に獲得した能力や学術等で習得した能力はその取得者の個性であり、研鑽に基づいた成果であるから規制するべきでは無い。
これらによって刑法上に違反行為を行なった場合のみ制約と処罰、一定期間の監視、更には能力の強制剥奪をするのが最も適切な対処方法だと考えられ、能力があるからと言ってその能力を規制するのはスポーツでトップクラスになった人間にそのスポーツをするなとか、日頃の研究において発明された物に対して『他の商品より優れている商品だからこの部分は機能として規制する』と言うようなおかしい話にもなり得ますけど、この発案者はどのような考えで規制しようとしておるのでしょうか?」という言葉が出たため、結局規制する法案は廃案となり能力者として登録されている人間の管理能力に任されているのが現実。

 そのサークルメンバーとここに来たときに副店長の方からこの店を増築した当時の話をして戴いたのを思い出しました。

 「この雲川地域もかつては多くの住宅が立ち並んでいたとの事で、この地域における最盛期だったのが約100年ぐらい前の話ですからこの地域の原住民である私でも正確な事は解りません。
 現在は最盛期から宅地が3割から4割ほど減っておりまして、この建物を増築し始めた時には既にこの区画には酒蔵を除き全て更地になっていました。
 この手前の道を挟んで向かい側に以前も中層マンションが建っていまして、解体直前には入居率が半分ぐらいしか無かったとの事で現在は新しい完全管理型マンションを建築予定される予定で更地になっています。
 今でこそ内の隣に30台ぐらい入れる(その内5台分が無人タクシー待機場)駐車場がありますが、当時は予算上土地の購入が出来ずそれほど余裕が無かったので、せいぜい10台分の駐車場しか確保出来ませんでした。
 そのせいで当初は駐車場に入れないお客様の車が道路の両サイドに駐車する事が当たり前になっており、この道を常日頃利用している方々からの苦情がしばしば有りご迷惑をかけていました。
 それでも周囲の方々や行政の方の協力を戴きまして、5年前に今の駐車場スペースを確保できるようになりましてから、今も混雑してご迷惑をおかけしておりますけど近所の方々からの協力もあって柔軟に対応できる体制になってきて苦情らしい事はなくなりました。」

 という今とは比べようもない混乱している状況だったとの事です。
 とは言え今日も駐車場はほぼ満車状態で、無人タクシースペースには平日に拘らず1台も待機しているタクシーがない状況です。

 毎度この店に入って感じるのがここの空間は天井が高く圧巻と言う一言です。
 建物は平屋建てとの見立てですが、同じ平屋建てに住んでいる我が家とは空間のボリュームが全然違いますと言う見当違いな感想を浮かんでしまいます。
 平家と言いながらも階高が高くかつ天井が張って無い直天井という屋根の構造材が剥き出しになっており、階高が高すぎて一番上の構造材まで照明が当たらずぼやけてます。

 しかしながらその構造材が存在感と安心感を示している感じもして、同時にこれらの古めかしい空間ですから『何かしら』居ても不思議では無いのかなと・・・まぁ実際既に近くに居ましたけど。


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