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蓬莱の妃 1.5章 《火の章へ》 §5



前置き


いつも来て戴きありがとうございます。
個人的に非常ぉに欲している物がまだ来ていないという日常を送っております。
現在このシリーズの最新章の清書と小冊子で出版予定している物の下書きを書いております。
あと、元々やっていたアートワークを再開する為のトレーニングやカードリーディング業を再開するのでカードさんたちと『会話』をしているところです。

近況は此処までになります。
で、今回も1万字越えになってしまいました。
前セクション(§4)を未購読の方はこちらに有ります。

あと、この章の一括にある電子書籍はこちらまで。



登場人物


 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。能力者であるが本人の希望で今のところ未開発。その他姉妹や輝夜のモデル仲間からは『鉄分提供者』とか『師匠』と呼ばれている。

 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしており、本人が出かけるのはこの地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行う時か、自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルで都内に出かける時しか無い。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 エバレスティーヌ 早津妃:東京都内にて「ル・アトリエーヌ・ヴィーネ(株)」と言うモデル事務所・イベント企画の会社を経営。亞人と人間のハーフであり「能力者」認定者。この事務所には矢作夏美と妹である祐希(ゆき)が所属。黒田紗夜子とは大学で知り合い、それ以来の友人であり呑み友。矢作夏美の「お酒の師匠」でもある。現在6歳の男の子のシングルマザーで、その息子をとにかく溺愛をしている。

 黒田 紗夜子(くろだ さやこ):黒田光流の妻、と言うより主。富士吉田市内にてランジェリーデザイン&販売会社「アンジェロ・クローゼ」を経営。1男1女の母親。宮内姉妹にとっては「お酒の師匠」の一人にあたる。因みに未だに夫さんにラブラブ。



§5 11月8日、宮内姉妹宅にて


《この日の夜、宮内家では今日大きな仕事を無事達成できたという事でそれらに携わった人間、その他この日仕事で富士吉田市に来たメンバーを含めた大宴会が催されていた。》


 11月8日、昨日から二日連続で黒田と宮内姉妹は怒涛の日々を過ごしており、この日は黒田が旧小山村から救出した子供二人と一緒に姉妹の自宅まで戻ってきました。

 帰って来た時既に自宅では二人の美熟女が宴会を始めており、更に二人の他にリビングで甲斐甲斐しく世話をしている美女もいました。
 黒田が屋内に入った時には未だ部屋内が然程アルコール臭が無かったのでまだ飲み始めかなと思われ、黒田が家に入って来たのを二人の美熟女があたかも自分の家のよう振る舞ってきた。

 「みー君お疲れぇ」

 「旦那さん、もう奥方とやっちゃっていますので変なお構えしない様に。」

 黒田は二人の姿を見つめながら『もう少し待ってくれたらよかったのに』とは思ったものの、今は一番優先にする事があったので二人にその要件と依頼を伝えた。

 「・・・もう呑んでしまっているみたいですけど、まだ足元がおぼつかなくなっている訳ではないようですね。

 ・・・ええと、無事旧小山村から子供二人救出し今子供達は車内で眠っていますので、一旦ここの空き部屋に寝かしつけようかと思いますので手伝って戴けるでしょうか?
 私はこれからお嬢様達が帰ってくるのでそれらの準備等をして手を離せなくなりますのでよろしくお願いします。」

 すると【非能力者】である黒田妻の紗夜子と仕事で顔見せという事でこの富士吉田に初めて来た矢作祐希さんが手を挙げて手伝ってくれた。
 恐らくこれも唯一手を挙げなかった『能力者』の早津妃社長が予め二人にどういう子供なのかが解っていたので、未能力者の二人にお願いしたのかなと思われました。

 二人は早速家から外に出て数分後家の中に二人の子供を抱えてそのまま空き部屋に起こさないように運んで行った。

 黒田は早津妃社長に予め二人に依頼したのか等の理由を訊いて見たら、彼女自身の体験からという事だった。

 「・・・私こう見えても一応一児の母親なのよね。私達のような『ハーフさん』の子供って普通の子供より色々面倒な事が有るのですわ。

 私の事務所所属のモデルさんにも普通に母親しながらモデルをしている方も居るので、時々同じ母親同士という事で日常の様々な愚痴、みたいな事を言い合ったりしておりますのよ。
 そこでよく出てくるのは子供が急に熱を出したり、イヤイヤ期の子供への対処にオロオロしたり、元々アレルギー持ちの子供さんの場合の食事に対して気を配らないといけなかったりすると言う話しをされるのよね。旦那さんも二児の父親であれば解って戴けると思うのですけど。

 ・・・まぁ旦那さんは特殊過ぎる二人の実質上の父親歴二十年だから寧ろそこらの母親よりも対処しているのかなと思うのですけどね。」

 「・・・まぁ確かに名付け親兼お世話係なので考え方では父親歴二十年とも言えます。」

 「でも普通の子供であれば、イヤイヤ期の対処なんかはネットの掲示板で画面を余裕で埋められる程のアドバイスがあり、アレルギー持ちの子供の場合はそれらの※1治療を段階的にしたりする事でそれらの体質を寛解させたり解消させたりという事も出来るから、母親としてそういう経験を経ながらその子供も今の時代大抵無事に育って行くのよねと思ったりするのですのよ。

※1 治療を段階的にする:子供が基礎疾患を持ったまま産まれた場合、その子供のベースバイタルによって治療の方針や種類、治療期間を決める事に法律上定められており、大抵の場合短期間ではなく成長に応じて段階的な治療を行うのが一般的になっている。ただ、疾患が重篤な場合は遺伝子レベルの治療を要する為メディカルベッド(通称 コクーン【繭】)と呼ばれるものを使用される前提で治療する事になる。

 ただ私達ハーフさんの子供に関してはこれらの他に重大な事があるのよね。」

 と早津妃社長はほんの一瞬視線を落とし、再び視線を黒田の方に向けるとそこには一流モデルプロダクション事務所社長ではなく早津妃という一児の母親として若干切なげな表情を浮かべながら語った。

 「ハーフさんの子供って殆どが『能力者』の素質を持って産まれるから、それらを幼いながら時期から制御する事がハーフさんとして生きるには必須な事になりますのよ。

 まだ碌に言葉すらはっきり出来ない時期なのに能力の制御って・・・自分で子供を産みながら自分が亞人の血を継いでいるという事に対しての理不尽さを何度も感じましたのですわ。

 それでもうちの子供は早い段階から無事能力制御を出来るようになり、能力素質も歳の割にはレベル高めだから親としてつい鼻が高くなってしまいがちになってしまいましたわ。

 けど本人はこの能力を生かす事より今はスペースディンギーのパイロットになる為の訓練に励んでおりますよね・・・今はそちらの方の心配をしておりますのよ。」

 「ええ、社長の事情はわかりました。それで先程救出した子供達を避けたという訳は・・・」

 「それはこれから説明しようと思ったのよね。・・・旦那さんって結構せっかちさんなのかな?うふっ」

 「・・・続けてください。」

 黒田は早津妃社長の掴み所が無い所にもどかしさを感じながら話を聞き続けていた。

 「それでね、今運ばれた子供さんは亞人純種では無くハーフさんの子供だよね。しかもどうやら未だ世間で一部の人間が行方不明とされている『強制イニシエーション』を受けた子から産まれた子供さんだよね。

 何しろ現に旧小山村という廃村に潜伏していたぐらいだから行方不明の人間が隠れるとしたら自治範囲外で暮らす方が一番安全と言えば安全かも。
 その行方不明の子供、ある人間から言えば『成功した実験体』が子供を産み出されている事が出来たという事実は決して放って置けない事じゃないわね。メディアにとってはセンセーショナルな話しだけどそれだけでは済まない話しには間違いなくなりますわ。

 あの子たちの年齢から観るともう自分で能力のコントロールは出来ていると思われるけど、今までの過酷な環境とはいえ母親を心の支えに生きてきたんだけどね・・・今はその母親と死に別れたばかりという精神的に極限状態に今おかれている訳ですわ。

 そこで私みたいな能力者が至近で触れるような事をしたら、下手すればその子の能力が無意識に暴走すると思い、ぃゃ思うというレベルでは無く間違いなく暴走します。

 だから偶然ながらも此処まで旦那さん一人で車で運んで来た事が今言った暴走するという危険性を排除出来た訳ですわ。これも天の采配なのかも知れませんわね、旦那さんでかした。」

 と言いながら早津妃社長は黒田の左肩をちょっと強めにバンバン叩きながら褒めた。

 「うゎ、い、痛いです社長さん。それと私も一応微弱ながら能力者のレベルではありませんけど能力自体はありますけど。」

 「うん、知っているわ。でも影響するレベルでは無さそうだから今のところ無いものと同じようなものだわね。」

 黒田は肩を叩かれたより今の言葉にガクッと膝から崩れ落ちてしまい、思っていた以上にダメージを喰らってしまった。

 ちょうどその様子を空のワイングラス片手に持ちながらもう酔い気味になっていた黒田の妻である紗夜子が近寄ってきた。

 「ち、ちょっと早津妃。みーくんに今度は何言ったのよ。ねぇ私のみーくんを虐めないでよぉ。」

 と言いながら早津妃社長を両手でポカポカと猫パンチ風に叩いてきた。

 「こ、こら、酔っ払いが。ほんのさっきまでシラフじゃ無かったの?」

 と早津妃がリビングの方に目線を向けると、既に黒田と一緒に旧小山村に行っていたメンバーと埼玉の現場に行った輝夜も帰って来ており、大量に買い出しをしていた『燃料』を自分に急速充電をしている様子が見えた。

 それを早津妃は焦り『やば、ウワバミデカ娘まで既に参戦していたのか・・・こうしてはいられない』と呟きながら、自分に絡んできた紗夜子の首根っこを掴み足早にリビングの方に向かって行った。

 一人ポツンと放って置かれてしまった黒田だが、その様子を見て、

『そう言えば、昨日も此処で宴会していた気が・・・まぁこれ以上考えすぎても仕方無いです。』

 と思いながらも未だに先程言われた言葉のダメージが残りつつリビングに向かいながら、昨日にあった身内での宴会に巻き込まれていた事を想起していた。

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