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蓬莱の妃 1章1節 《水の章》 §5



前振り


いつも来て戴きありがとうございます。
今日は1章1節のセクション5、6をアップさせて戴きます。
結果的にこのセクションも1万字を越えてしまいましたので長文になりますがよろしくお願い致します。

この章を一気見する場合はこちらに電子書籍化しております。ご拝読をお願い致します。

なお、この章の最初はこちらになります。



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。一応能力者であるが未開発。



§5 紅葉と化け物狩りにでも【黒田語り】


《東村越の手嶋屋酒蔵の調査を終えた後、輝夜は山梨県大槻駅まで戻り、その駅で富士吉田から車で来る黒田と合流をし、駅から北の方にある現在は【廃村】になっている旧小山村に向かって行った。》


 私は車を姉妹宅から自動運転モードにして13時半過ぎに大槻駅北口ロータリーに到着するまでの間、車内にて一通りの仕事を終える事が出来ました。

 今日も周りには私の車の他にタクシーを含めて1台も停まっていないという非常に寂しい駅前風景を眺めながら待っていました。

 それから30分ぐらい後、駅北口改札にやたら背が高い黒髪女性の姿が見えてきてその女性がこの車に近づいたので女性の表情を見ると、独りで列車に乗るという全く慣れない事をしていたので顔の表情には既に疲労感を醸し出してました。
 しかしながら、私の顔を見ると相変わらず暢気そうな台詞を彼女は私に向けてきました。

 「黒田さぁん、お腹すきました。ご飯食べていないので何か食べさせてくださいな。」

 二人から連絡を受けてからそれぞれの移動したと考えると、咲夜お嬢様が東光鉄道本羽川駅には多分15時前ぐらいに到着すると思われるので、それより輝夜お嬢様は1時間ぐらい前の2時過ぎに大槻駅に到着したという感じです。

 「黒田さぁん、お疲れです。私はとにかくお腹が空いています。でも駅前の立ち食い蕎麦という気分では無いのでおにぎり何か持ってきてくれるとすごくありがたいですわ。」

 と彼女が言ったので、念のために(というより予想できたので)持ってきていたおにぎりを早速手渡した。反応は予想通り彼女はおにぎりを受けとりながら小躍りしていました。

 「お嬢様、おにぎりだけでは足りなければ旧小山村に向かいながら途中でコンビニに寄っていきましょうか?」

 「ううん、こんだけ有れば黒田さんのおにぎりだけでも大丈夫。そのまま小山村に向かってくださいな。」

 と彼女はそう言って車の後部座席のスライドドアを開けて、座席に座ったら直ぐ私が手渡ししたおにぎりを食べ始めた。
 私が昼食食べなかったのかと訊いてみましたけど『食べる気しなかった。それよりここに戻るまで必死でしたわ』と。
 まぁボッチで電車移動しない人間ですから、ここまで帰ってきたこと自体頑張ったねぇと二十歳の小娘に対して褒めるべきなのかは微妙な心境です。

 私は彼女が席に座っている事を確認して旧小川村へ車を走らせ始めました。
 無論これからはGPSと自動運転はカットしました。というのは此処から(大槻駅前)途中までは自動運転区間になっているものの、今廃村になっている場所まではそれらのエリア外になっていますので(※1)途中で切り替えるより最初からマニュアル運転する方が面倒では無いという判断の下で行動しました。

(※1)自動運転から自動運転エリア外に入った時について、通常の車は途中で切り替える事は自動運転機能の中に有るので運転手から特に操作する必要は無いが、今回のような『特別な場所』に行く場合にはナビからの『警告』がありその地点に入る前に自動的にストップするような機能になっている。ただ宮内家のこの車の場合はそれらを『特例』という事でカットする事ができる。

 あと、これからの移動をリアルタイムで『上の方』に監視されたくないという思惑も有ります。

 ふと彼女をバックミラー越しで眺めたら、必死におにぎりを貪っている姿と今日も彼女が愛用しているだいぶ使い古したバッグを掛けている事を確認できました。
 このバッグは襷掛けが出来るタイプの物で何処ぞのアフリカンなお店で本人が『そう言えば私バッグ無いのでこれが良いわ』とあまり考えず即決購入した物です。

 この肩掛けバッグは女子にしては大きいサイズのものになりますが、彼女ぐらいの体型なら丁度いいぐらいの大きさで使い勝手も本人好みだったので、1つ目の大学に入る前に私が二人と郊外のアウトレットモールでお買い物案内していた時に買ったものになります。それと同時に彼女がこれを買った時に一緒に彼女の服を多めに買いました。
 と言うのは、既に170センチ以上の身長が有り普段から着る服が無かった為と本人が出かける事を殆どしなかったという理由が有ったので服を購入する様な事をしなかったので。

 と言う事でこの機会で一気に買い替えたせいで、その時の帰りの荷物がトランクに入らなく後部座席に座っていた彼女が服やそれ以外の物に埋もれながら帰っていたと言う事を思い出しました。

 「お嬢さま、相変わらずこの襷掛けのバッグしか使っていませんね。」

 「ん、そーれす。モグモグ。これが一番丈夫だし使い勝手も良く、手入れも面倒臭く無いから最高ですわ。ングング」

 「でも、お嬢様だったらモデル仕事で結構バッグは戴いているかと。それらはどうしているのですか? 流石に勝手に売りに出すことはしていないと思いますけど。」

 「咲夜ちゃんにあげているわ。咲夜ちゃんも私が貰ったもの使っているけど、大学とか院生の同僚にあげていると言っていたわ。
 私の箪笥の肥やしにするより使って戴く方がバッグさんも嬉しいかなと思うのですわ。」

 確かにこの子は自分が採取したものや資料に関しては頑なに保存を主張している気概があるけど、それ以外の事に関しては(ただしお酒とお菓子については除く)基本執着ないから高価なバッグや靴でもポイポイ他人にあげている。
 私の妻も結構服を彼女から貰っている。特にバスト回りが原因で着れなくなった物は一番最初に妻にあげているとの事。
 それが丁度良いサイズになっているから服代がかからず助かっていると妻はしきりに感謝していると言っていた(一応社長をしていますがまだ(自称)零細メーカーなので自分の服代の節約ぐらいはしているとの事)。

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9,441字
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富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章目にあたる作品になります。

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