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東洋経済オンライン「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題

PCR検査が増えないことに対して過剰な批判が集まっていると私は思う。安倍政権の国民への説明の仕方、広報戦略が失敗していると言わざるを得ないが、やみくもに検査を増やせという議論は誤りである。

本日、東洋経済オンラインから

『「PCR検査せよ」と叫ぶ人に知って欲しい問題』

という記事が出された。重要な視点が書かれていると思ったので紹介したい。

そこで、国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一医師へのインタビューを行った。ウイルスセンターは国内では数少ない臨床ウイルス学の研究施設であり、全国の医療機関から依頼を受け、ウイルス分離や血清学的検査を行っている。PCR検査の現場をよく知る立場からの問題提起である。「感染者数をごまかしたいから、政府は検査しない」という話がSNSなどでは広まっている。だが、現場の話からはそうした見方とは別の厳しい現実が見えてくる。

本記事は西村秀一医師にインタビューを行ったものだ。

検査の目的は何なのか

西村医師が伝えたいポイントは

PCR検査は偽陰性(感染しているのに検出されない)、偽陽性(感染していないのに検出されてしまう)の問題があること。→なので、自分がかかっているか心配だから検査したいというような人に検査するのはかえって、陰性というお墨付きをもらったといって自由に活動することにつながり、問題がある。

検査技師はすぐに育成できるものではない→熟練の技術が必要で人をかき集めればよいという問題ではない。

③簡易キットや自動化された機器も使えるということに関しては、感度に問題がある場合もあり、また自動で多くやると検査に必要な試薬や資材の不足につながる。

これらを踏まえて西村医師はこう語っている。

あらためて検査の目的は何かということを、はっきりさせてほしい。臨床(患者の治療)のためなのか、感染管理をしたいというのか、疫学調査をしたいというのか。感染管理のためであれば、大量の活性を持ったウイルスの排出を見なければならないが、それを見ていないという意味では限界がある。疫学的な調査に使えという話であれば、それこそ大学の研究でやってもらえばいいくらいのもので、通常の検査の場にとってはものすごい負担になってくるうえ、偽陰性もむちゃくちゃ含んだデータの意味ってなんなのか、ということになる。

そもそも、PCR検査の目的は、コロナウイルスによる犠牲者を減らすことにあるとすれば、日本の死者数が海外よりも低いということを考えると何か今がものすごい問題であるというような考え方は成立しない。ちなみに、死亡者数については、

死亡者に関していえば、日本ではちゃんと把握をしている。肺炎で亡くなる人はそんなに増えていない。今のところ何らかの交絡因子(因果関係に対して、間接的に影響する変数)もあるもしれないが、超過死亡(感染症の流行の際に過去の統計などから予想される死者数を実際の死者数が上回る部分)で見ても死亡者はほかの年よりも低いくらいであると聞く。終わりのところで拾い上げた数字で見てそうなのだから、検査が少ないので感染のほとんどを拾い切れていないという言い方はおかしい。

と述べている。

今一度、専門家ではない私たちができることは、事態をよく冷静に見守ること、マスクを着用するなど人に移さないことである。過剰な批判は、現場で命がけで戦っている人々を苦しめることをよく認識すべきだろう。

2020/5/12 //パックマン

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