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『天外者』~神戸の異人館で、五代さんの、春馬くんの熱き想いに触れる

もうひと月以上前の話になるが、9月のはじめに、娘が神戸でよさこいを踊ることになった。
私は、北海道に続き80歳の母と共に神戸よさこい祭りを見物しに行くことにした。

最近では、どこかへ出かけることになると
「春馬くん所縁ゆかりの場所はあるかな?」と調べるのが私の癖になった。
旅行日程は二泊三日。
大半は、娘の踊るタイムスケジュールに合わせて、あちこち移動して歩くことになるので、春馬くん所縁ゆかりの場所にはそれほど時間は避けない。
おまけに、高齢の母を伴って、である。
行けて1~2箇所かな。

ネットで調べるとすぐにヒットしたのが、映画『天外者』でグラバー邸として使用された旧ハンター住宅。
この古い異人館は、なんと神戸市立王子動物園内にあるという。
何故?動物園内?
この蒸し暑いさなかに、高齢の母を伴って行けるかなあ・・・と自信なかったが、二泊三日の行程中どこかで行く隙はないものかと様子を伺いながらの旅だった。

バスを乗り継いで王子動物園へ

運良く二日目の娘の出番が午後からなので、午前中時間が取れそうだ。
調べると、旧ハンター住宅の内部を公開しているのは、9月は土日祝日のみだとういうことだ。ちょうどいい、行くしかない!

前日の夜に母に
「明日の午前中、王子動物園行かない?
 ここには、パンダとコアラがいるらしいよ!
 それに素敵な異人館もあるし。」
と、告げた。春馬くんに夢中であることは照れくさくて、母には明言していないのだ。

神戸市立王子動物園は、パンダとコアラ両方に会える日本で唯一の動物園だと言う。
特に、パンダにもコアラにもさほど興味無さそうな母ではあったが、
「あら、珍しい動物園なら行きましょうか」
ということで、すんなり受け入れてくれて安堵。

神戸繁華街のホテルに滞在していたので、翌朝は軽く朝食を取った後、近くのバス停から「王子動物園前」まで20分ほどバスに揺られて向かった。
途中、神戸の住宅街を通過したりして、観光地以外の神戸の日常を垣間見れたのも興味深かった。
バスから降りると、動物園の門構えが私達を迎えてくれた。
”O”の文字の真ん中にパンダさんがいるのね。

神戸動物園入り口

こんなに暑い時期なのに、思ったより人が並んでいた。小さいお子さん連れの家族連れが多い。
入場券を買おうと列に並ぶと、なんと、パンダのタンタン体調不良で観覧中止との看板が。

券売機前にパンダ観覧中止のお知らせが

私としてはそれがお目当てではなかったのだけれど、それでもちょっと残念。
パンダにつられて来た母も、がっかりしている様子。
「まあまあ、コアラは見られるし。」
と声をかけて園内に入場した。

この日、神戸市内最高気温33度。
暑い中、園内の動物たちもぐったり。言葉にはしないけど、きっと母も
「なにもこんな暑い時に動物園に来なくても」と思っていたことだろう。
それでも、珍しいコアラを見ることができて、気を取り直した母。

神戸市立王子動物園のコアラ

数匹いるコアラちゃんたちは、みんな木の上でお休み中。コアラは夜行性なので、昼はほとんど寝ているらしい。
母も喜んで、スマホでパシャパシャ写真を撮っていた。
春馬くんも動物好きのようだから、撮影の時には動物たちを見物したりしたのかしら。

見て歩くうちに、象さんのコーナーに
象さんは夜行性ではないので、暑さの中でも活発に鼻を動かしたり歩き回ったりしていた。
ふと、象さん紹介のプレートを見て、思わず声をあげてしまった。
メスのズゼちゃん。春馬くんと同じ1990年4月5日生まれではないか!
運命を感じてしまう。春馬くんも気づいたかなあ。

王子動物園の象さん(この方がズゼちゃんかは定かではありません)


私達は、残暑の中汗だくになりながらひととおり動物たちを見て歩き、ようやく園内のいちばん奥の奥にあある旧ハンター住宅に辿り着いた。

目の前に、この異人館が現れたときには、私も母も
「うわあ!」
と声を上げた。あまりにも豪華で美しすぎて。

旧ハンター邸宅

こちら旧ハンター住宅は、もともと明治22年神戸市中央区北野町にドイツ人邸宅として建てられたものだそう。その後英国人のE.H.ハンター氏がドイツ人から買い取り、現在のように改造を加えて住んでいたもので、当時の富裕な外国人の生活の一端がうかがわれる神戸の代表的な異人館のひとつということだ。それを、昭和38年にこの場所に移築したとのこと。

この日は日曜日ではあったが、こちらの異人館には見物客もまばら。最も、動物園目当ての家族連れにはあまり興味がわかない建物かもしれない。
入り口を入って右側の応接室に入ると、思いがけずポスターの春馬くん(五代さん)が迎えてくれた。

旧ハンター住宅内応接室
映画『天外者』のポスターがお出迎え

こちらの部屋は、映画の中で春馬くん(五代さん)がグラバーさんに土下座するシーンで使われた場所。部屋に入るとたちまちあのシーンが脳裏によみがえる。
ボロを纏い、乱れた髪に伸び放題伸びた髭、額に浮く血管。
ほかのどんな作品でも見たことのない凄みを帯びた春馬くんを思い出しながら、部屋の中を見回す。

応接室のマントルピース

写真がへたくそで申し訳ないが、映画中ではこちらの右側に机があり、春馬くん(五代さん)がグラバーさんからイギリスへの渡航費を受け取るシーンも撮影されている。春馬くんの綺麗な発音の「Thank you so much」が耳の奥で蘇る。

『天外者』グラバーさんの部屋

そして、こちらの廊下はグラバーさんと坂本龍馬さんが、春馬くん(五代さん)の行方を案じ「どちらにせよ、あいつは今どん底よ」と話しているシーンが撮影された場所。

旧ハンター住宅の廊下

広々として陽の光が良く入り、とても開放的な廊下だ。もともとベランダだったものを、日本の風土に適さないため窓枠を嵌めて廊下にしたものだそう。白い窓枠が本当に美しかった。床にうつる窓枠の影も素敵。

そしてこちらの階段。
映画公開後にTwitterで、グラバー役のロバート・アンダーソンさんが春馬くんと一緒に写っている写真を投稿していたが、あれはここで撮影されたものらしい。

旧ハンター住宅の階段

階段のところには、美しいステンドグラスが嵌められていた。繊細な模様。

階段の踊り場に嵌められてステンドグラス

ゆっくりと館内を回っていると、豪華な調度品と静寂にすっかり浸りきり、ここが動物園の園内であることを一瞬忘れてしまう。

庭から見る旧ハンター住宅

外へ出て、前庭の木陰にあるベンチに腰掛けてお屋敷全体を眺めてみる。
ペパーミントグリーンの柱に屋根、白い窓枠がなんともお洒落だ。
いつまでもそうやって空とお屋敷を見ていたかったが、明石大橋下の公園での娘の出番を見るべく、お昼前に撮影場所を後にした。

ちなみに、こちらの旧ハンター住宅は、土日塾日の内部公開は時期が限られているようだ。
もし、これから行かれる方は、神戸市立王子動物園の公式HPで確認されることをお勧めする。

無理やり連れてこられた母も、こちらの異人館をすっかり気に入ったようで、自宅に戻ったあとにも
「素敵だったね~」
と何度も写真を見ている。

六甲山から大阪港を見渡す

神戸最終日は、敢えて午後の新幹線を予約していた。
せっかく神戸まで来たのだから、六甲山に登り神戸全体を眺めてみることにした。
ケーブルカーに乗って六甲山頂まで登ろうと思い、電車で六甲道駅へ降り立った。確かバスでケーブルカーの下まで行けるはず・・・とバス停を探していると、
「六甲ケーブルカー故障の為、バスでケーブル下から六甲山頂まで代替運転しています」との看板を見つけた。
パンダに次いで、うわ~、またしても!
思い通りにいかないことに落胆しそうになるが、もしかしたら思いもかけないものに会えるかもしれない。
とりあえずバスで六甲ケーブル下まで行ってみる。
予告通りケーブルカーは故障のため休止。

六甲ケーブルカー

大きな観光バスがやってきて、係の人が
「山頂まで運行します~。お乗りください」
と案内していた。
成り行きに任せ、母とバスに乗り込んだ。
ケーブルカーだと山頂まで一直線に上っていくが、バスはジグザグの山道をのぼっていくので揺れに揺れる。
「こんな大きいバスでこんな細いくねくね道を運転できるなんて、運転手さんすごい!」と、道中母はずっと感心していた。

六甲山上駅に着き、六甲展望台に登ってみた。
初日に娘が踊ったポートピアや前日訪れた明石大橋などが遠くに小さく見えた。

そして、ずっも左側に視線を移すと、大阪湾と大阪の街並みが広がっていた。
これを期待して登ってきたわけではなかったが、結果、大阪湾までも見ることができるなんて。
ああ、ケーブルカー休止のお知らせにくじけなくて、本当によかった。


『天外者』の中で、
「今日大阪港が開港します
母上にお見せしたかった‥」
と、春馬くん(五代さん)が母上の亡骸に涙ながらに呟いていたあの大阪湾。
約150年の時を経て、いまやこんなに栄えている大阪湾。
これも、あの五代さんの奮闘があってこそなのだ。

低気圧のせいでかかっている低い雲が、大阪湾と街並みを劇的に見せてくれている。

六甲山から見下ろす大阪湾

春馬くんは、六甲山登ったのかな。
この景色を見たのかな。

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これからも何度も『天外者』を見るだろうが、そのたびに、今回実際に目にした異人館のマントルピースや白い窓枠を、お屋敷の前庭のむせぶような草の香りの記憶が蘇ることだろう。
春馬くん作品のロケ地に直接行ってみることは、実際に体感したその場所の空気感と相まって、作品鑑賞をより深く分厚いものにしてくれることを知った。

もう少し足をのばして大阪や京都方面の春馬くん所縁ゆかりの地にも行ってみたかったが、今回は仕方がない。

いや、行きたい場所に行き切れなかったということは、楽しみがまだたくさん残っているということだと思い直して‥。






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