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ずっと書けなかったイベント〜松任谷由実「深海の街」ツアー(その3)

(承前)

一旦、「深海の街」に戻り、“NIKE〜The goddess of victory“。そして、「ダイアモンドダストが消えぬまに」から“LATE SUMMER LAKE“。クライマックスに向けて、盛り上がる気配である。

“Hello, My Friend“、そして“ANNIVERSARY“。この曲が収録された1989年の「LOVE WARS」は、私が“何故か”リアルタイムで買った、唯一のユーミンのアルバムである。

ショーはいよいよクライマックス、そして最後の曲として歌われたのが、1980年のアルバム、「時のないホテル」から、“水の影“である。私には、ユーミンが「今日はお祭りじゃないからね」と結んだ感があった。

♫時は川 昨日は岸辺 人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて 思い出に手をふるの♫

このショーが、過去と未来をつなげるものであることが、改めて提示させる。それは、アンコール1曲目でさらに強いイメージが形成される。

1983年の「VOYAGER」から“青い船“。<♫私たちを乗せた船は 東へと漕いでゆく>と、“水の影“と同様のモチーフではあるが、旅する空間は宇宙へと広がり、空間と時を股に掛ける感がある。

♫私たちを乗せた星は 涼しげに輝いて
木星を 金星を 導いてゆくように♫

アンコール2曲目は、デビューアルバムから“空と海の輝きに向けて“。これで、彼女は旅の先に希望を求めることを訴えてくる。

♫遠い波の彼方に 金色の光がある
永遠の輝きに 命のかじを取ろう♫

これを書くにあたって、各曲を何度も聴き、読み解こうとした。“空と海の〜“ほか、アルバム「ひこうき雲」からは3曲が演奏されたのだが、当時ユーミンは19歳。恐ろしい才能の持ち主だったことを、今さらながらに思った。

最後は、1993年「U-miz」から“二人のパイレーツ“。子守唄で静かに幕を閉じた。最後まで、祝祭ムードはなかった。

冒頭に“一度は見ておかなくてはと思うもの“として、松任谷由実のコンサートを挙げた。ネガティブな表現に変えると、“一度見ておけば満足するもの“とも言える。ところが、この日観たものは、私のイメージしていたコンサートとは、全く違ったものであった。そして、それは想像を超えた素晴らしいショーだった。

したがって、一度で満足することはない。これからも注目する


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