見出し画像

全編通じて感動した〜リンダ・ロンシュタットのドキュメンタリー

私の大好きな歌手、リンダ・ロンシュタットについては、1年ほど前に書いた。今、彼女を映したドキュメンタリー映画「サウンド・オブ・マイ・ヴォイス」が期間限定公開されており、新宿シネマカリテに向かった。

彼女の生涯を見事にまとめた映画で、中には知らなかったエピソードも多く含まれていたが、とにかく、終始感動して見ていた。

その源泉は、彼女の素晴らしい歌声である。パンチがあり、ふくよかで伸びのある声で、あらゆるジャンルの音楽を歌いこなす。

ドイツ/メキシコにルーツを持つ彼女の家族は、アリゾナ州ツーソンに住む音楽一家であり、父親の素晴らしい声も聴かれる。幼少の頃から音楽に親しみ、兄弟でコーラス・グループを結成する。

音楽を目指し、ロサンゼルスに出て、スターダムにのし上がる。映画には、ジャクソン・ブラウンJDサウザードリー・パートンエミルー・ハリスなどなど、彼女と共演した人々が登場するが、ボニー・レイットは当時のリンダを評して、“今で言うと、ビヨンセのような存在だった”とコメントしていた。

スタジアム一杯の観衆を魅了したリンダだが、違和感を感じ始め、1980年代に入り、ブロードウェイで上演されるギルバート&サリバンの「ペンザンスの海賊」に挑戦する。オペラである。これは知らなかったので、映像が見られたのは嬉しかった。

次に、彼女はジャズ/ポピュラーのスタンダードに挑戦し、レコードは大ヒット。さらには子供の頃、意味も分からずに歌っていた、メキシコ音楽に回帰する。

根底にあるのは音楽に対する愛情、そして父母を始めとした家族が愛した音楽への想いである。彼女を突き動かすのは、「あの曲を歌わずにはいれない」という気持ちであり、それを達成するまでは強い意志を持って突き進む。

さらに、彼女は謙虚さを持って音楽に向かい合う。決しておごらず、勉強を欠かさず、真摯なアプローチを忘れない。それが故に彼女は曲を自分のものとし、全てが彼女のために作られた音楽のように歌い上げる。

イーグルス(元はリンダのバックバンド)の“Desperado“、ロイ・オービソンの“Blue Bayou“、ローリング・ストーンズの“Tumbling Dice“(リンダのことを書いたという説もある)などなど、多くのカバー曲は、全て彼女の代表的な楽曲となっている。

映画に映し出された、彼女の音楽を愛する姿、それを自分の歌として具現化する才能は、終始、私の気持ちを揺さぶった。

残念ながらパーキンソン病が彼女を襲い、思うように歌うことができなくなったリンダは引退する。嬉しいことに、映画の最後で、彼女は甥といとことコーラスする場面が映し出される。それは、紛れもないリンダ・ロンシュタットであり、歌姫の声だった。

なお、本作は昨年のグラミー最優秀音楽映画賞に輝いた。今年の同賞受賞は「サマー・オブ・ソウル」である



*字幕なしだが、全編はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?