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若き指揮者が躍動〜マキシム・エメリャニチェフ指揮の新日本フィル

イギリスに住む次女からLINEが来た。11月4日、サントリーホールで開催される、新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートに行かないかというものだった。

以前に少し触れたが、娘はエジンバラを本拠とするスコットランド室内管弦楽団でバイオリンを弾いている。そのオケの首席指揮者マキシム・エメリャニチェフが新日本フィルで客演する予定で、彼の方から我々を招待するというオファーがあったのだ。

新日本フィルの演奏会、最後に行ったのは記憶にないくらい昔である。ステージに登場した演奏家を眺めると、若い人が多く入っている。そこに颯爽と登場したエメリャニチェフ、1曲目はハイドンの交響曲第95番。そもそも、オーケストラのライブも久方ぶり。音の波が気持ちが良い。この曲は、チェロがかなりフィーチャーされるが、熱演を聴かせてもらった。

続いて、ピアノのアレクサンドル・メルニコフが加わり、プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番。ハイドンの古典的な美しさから、一気に現代である。このピアノ協奏曲を聴くと、そこには音楽のジャンルを超越した世界を感じる。「ジャズやロックは好きだけれど、クラシックはちょっと」と思う方は、是非聴いてみて欲しい。

音楽の可能性、パッション、迫力、抒情性などなど、さまざまな魅力を感じることができると思う。ピアノを打ち鳴らすメルニコフの存在感は凄まじく、それと協奏するオーケストラを導くエメリャニチェフ。ロシアの文化を、二人の同国人が形成してみせる。

アンコールは、メルニコフとエメリャニチェフの二人がピアノに座る。ドビュッシーの四手の連弾のための小組曲。第1曲の「小舟にて」が演奏された。

休憩後は、ラフマニノフの交響的舞曲Op.45。1940年の夏から秋にかけ、アメリカに滞在中にラフマニノフが作曲した。戦争の足音が高まる中での創作かつ、彼の最後の作品である。

元々は、バレエ音楽を作曲しようとしていたが実現せず、この作品の形となった。様々なパーカションが駆使され、それぞれの管楽器も見せ場があるなど、聴いていてダレることがない。もちろん、それを見事にまとめる指揮者の力も素晴らしい。

あたかも空間にダンサーが舞っているような錯覚も感じられる。チャイコフスキー、ストラヴィンスキー、プロコフィエフなど、ロシアの偉大なバレエ音楽の系譜でもある。ラフマニノフのバレエ音楽、もっとあればとも思う。

プロコフィエフ(ウクライナ生まれ)、ラフマニノフ、ロシアは素晴らしい音楽を生み出し、この日客演した二人の演奏家もロシア人。彼らが活動できていることは喜ばしいが、早く平和が戻って欲しい



エメリャニチェフ、1988年生まれの俊英である。ピアノ、チェンバロといった鍵盤楽器奏者でもあり、古楽オーケストラも指揮する。今年10月は、ベルリン・フィルへの客演も果たした。これからが楽しみな才能である

身内の宣伝にもなるが、スコットランド室内管弦楽団を指揮したCD、シューベルト交響曲第9番「グレート」も出している。



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