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“2023年のWBC“は歴史に残るのか(その2)〜New York Times紙の記事から

私にとって、WBCはこれまでどことなく中途半端にイベントであった。日本では盛り上がるが、アメリカの本気モードが感じられなかったからである。今回はそれが変化し、本気と本気のぶつかり合いの決勝となり、それでも本気度で上回った日本に勝利の女神は微笑んだ。

New York Time紙(NYT)のオンライン版、3月22日付に次のような見出しの記事が掲載された。“野球界のユニコーンがWBCを『本物』にした“(拙訳、以下同)。そもそも、‘ユニコーン‘とは何なのか。

新英和大辞典が詳しかった。‘unicorn‘=<一角獣。額に一本のねじれた長い角があり、山羊のあごひげ・ライオンの尾・雄鹿の足を持つ馬に似た伝説的動物;処女なければこれを捕えることができないとされた;純潔・清純の象徴とされた>。

米メディアやマイク・トラウトなども、以前から大谷翔平を“ユニコーン“に例えた。この語釈を見ると、大谷にピッタリではないか。

この記事は、大谷の活躍を、アメリカン・フットボールの伝説のプレーヤー、ジョー・ネイマスになぞらえている。アメリカン・フットボールのプロリーグNFLの前身は1920年に発足した。

1960年に、NFLに対抗する組織として生まれた、言ってみれば全日本プロレスに対抗する新日本プロレスのような組織がAFL。NFLとAFLは1970年に合併し新生NFLとしてスタートするのだが、合併に先立ち1967年からこの両者の対抗戦として始まったのが、今やアメリカにおける最大のイベントと言えるスーパーボウルである。


1969年第3回スーパーボウル、新興AFLの代表チームがニューヨーク・ジェッツ。QBはアラバマ大学を全米一に導いたジョー・ネイマス。彼の活躍でAFLが老舗のNFLに初勝利する。この試合が開催されたオレンジ・ボウルの跡地に造られたのが、今回のWBC決勝の舞台ローンデポ・パークである。

ネイマスの活躍により、新興AFLのチーム、ジェッツが勝利し、スーパーボウルというイベントが国民的行事として確立する。大谷の活躍などによる“2023年のWBC“を、スーパーボウルの勃興期に見立てたのである。

NYTの記者は書く、<WBC5回目にして、日本とアメリカという(野球の)超大国が決勝であいまみえる。大会はもはや“離陸“したのではない、軌道に乗ったと言って差し支えないだろう>。

ベネズエラ代表、昨年のワールドシリーズ優勝チーム(ヒューストン・アストロズ)の主力である、ホセ・アルチューべが大会中に骨折など、怪我等によってレギュラーシーズンを犠牲にした選手も、残念ながらゼロではない。

MLBとの兼ね合い、大会のフォーマット、開催時期などなど、まだまだ課題は多く残されているが、間違いなくWBCが“本物“になり、MLBを“本気“にさせた大会が“2023年のWBC“だったと思う。

‘ユニコーン‘が躍動した“2023年のWBC“。これからも語り継がれる歴史になるだろう、なって欲しい

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