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5000円が意味するもの(その2)〜なぜ4月から年金受給額が減るのか

私にとって、“年金“というものは、ぼんやりとした存在で、「引退したらそれだけで生活できるのか?」程度の意識しかなく、深く勉強しようとは思っていなかった。

60歳を迎えると、状況はガラッと変わる。年金関連の手続きがやって来る。簡単に言うと、「何歳から受けとりますか?」という質問に答えなければならなくなる。こうして、年金というものが、急に身近になった。

さて、今回の5000円は、高市政調会長によると、公的年金減少の補填という説明である。(なお、朝日新聞の報道によると、5000円給付は高市氏主導で出てきたアイデアではないらしい) 4月からの公的年金の支給額は前年度比0.4%減額される。国民年金と厚生年金で差があるが、年ベースで概ね3000円〜10,000円位の減額となるようだ。

では何故減るのか。年金制度は複雑で私も完全に理解しているわけではないが、大まかに言うとこういうことだ。年金額は、物価または現役世代の賃金に連動する。物価が上がれば、年金額は上がる。賃金が上がれば年金額は下がる。その逆もある。

物価の上下と賃金の上下が同一なら簡単だが、そう簡単にはいかない。足下、物価は上がっているが、賃金は上がっていない。この場合の年金額はどうなるか。物価上昇率>賃金上昇率の時は、賃金の上昇に合わせられ、物価上昇をカバーすることはできない。

では下がった場合はどうなるか。今回の改定では、物価は0.2%下落、賃金は0.4%下落なので、大きな下落幅が採用され、上記の0.4%減となる。簡単に言うと、なるべく年金支出の額が抑えられるようなメカニズムになっている。

理屈はある。年金は現役世代の賃金から徴収される年金拠出額でまかなわれる。これが増えない、あるいは減少するとなると、年金もそれに合わせざるを得ない。現役世代も苦労しているのだから、痛みを分かち合おうという精神である。

なお、これまでは物価も賃金も下落している場合は、物価に合わせることとされていたので、2022年度の年金支給減少幅は0.2%にとどまっていた。更に、物価が上昇し、賃金が下落した場合(2023年度はそうなる可能性があると思う)、旧制度では年金額は据え置きとなっていたが、今回の改定から適用になった現行ルールでは賃金の下落率に合わせて減額となる。

これだけなら、話はまだ単純である。厄介なのは2004年に導入された「マクロ経済スライド」である。

それについては、また明日


ニッセイ基礎研究所のレポートより


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