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リバプールのクロップ監督に“あっぱれ!“〜カラバオ・カップ決勝

こういう試合があるのか。イングランドのサッカー(フットボールと言うべきだが)、カラバオ・カップの決勝、チェルシー対リバプール、スコア0−0のまま延長戦でも決着がつかず(ダイジェストを見たが、オフサイド地獄に落ち入っていた) 、PK戦に突入、両チーム10人全員が成功し、遂にゴールキーパーがキッカーに。そして、リバプールのクィビーン・ケレハー(アイルランド代表)が決め、チェルシーのケパ(スペイン代表)が外し、リバプールがタイトルを獲得した。

これだけでも凄いのだが、ドラマはこれだけではない。

イングランドのプロサッカーには3つの大きなタイトルがある。プレミア・リーグでの優勝、世界最古の大会FAカップ、そしてカラバオ・カップである。FAカップはアマチュアも参加するが、カラバオ・カップはプロリーグのチームのみで争われれる、いわゆるリーグ・カップであり、“カラバオ“はスポンサー名である。日本で言うと、ルヴァン・カップに相当する。

3つの中で一番重要なのはプレミア・リーグ、次がFAカップ 、3番目がカラバオ・カップ。リバプールのようなトップチームは、この3つの国内タイトルに加え、欧州チャンピオンズリーグを同時並行的に戦う。さらに主力の多くは、国の代表選手でもあるので、そちらでの試合もあり、かなり過密なスケジュールとなる。

したがって、格下と戦うこともあるFAカップ、プライオリティの最も低いカラバオ・カップでは主力級を温存し、2番手以降の選手を起用することが多々ある。日本代表の南野が先発するのは、そういうケースが多い。

そのようなカラバオ・カップであるが、2番手チームとは言え実力のあるリバプールは勝ち進み、決勝まで来た。こうなると起用方法は、これまでとは大きく違ってくる。

試合後のインタビューで、クロップ監督はその難しい決断について語っている。カップ戦を勝ち進む中で起用、貢献してきた選手の中から、スタメンはおろか控えからも落とさざるを得ない選手も出てくるのである。頑張ってきた選手を起用してやりたい、一方で監督として勝ちを優先した非情な選択も必要。事実、勝ち進んできた試合の中でも、選手起用法について批判を受けている。

結果、南野はスタメン落ちするが、ゴールキーパーについては、ブラジル代表のアリソンを控えに回し、ケレハーを起用、彼の調子が良かったことに加え、「プロサッカーの世界であっても、多少の感情が入る余地がある」、「ケレハーは若い選手で、カップ戦でプレーしてきた。私はどうするべきだろう? 私には二つの顔がある、プロの監督そして人間である。そして、人間が勝った。彼(ケレハー)はそれに値する」(Times紙の記事より拙訳)とクロップはコメントしている。

(南野は、控えには入ったが出場機会なし。ただし、クロップ監督は試合後のインタビューで、このタイトルはここまでの戦いの中で貢献した、全ての選手のものであり、南野についても、「拓実なしには、優勝できていない」と言及している。)

結果、ケレハーは期待に応え、0点に封じる。そして迎えたPK戦。チェルシーは延長終了間際に、メンディから、PK戦に強いキーパー、ケパに代えていた。結果は上述の通り、見事ケレハーが決めてリバプールにトロフィーをもたらした。

逆の結果になっていたら、クロップ監督からはサポーターからの批判の嵐にさらされていた可能性がある。勇気ある起用に“あっぱれ“である。

もう一つのドラマは、ロシアのウクライナ侵攻である。これを受けてか、チェルシーのオーナー、ロシア人のアブラモビッチは、この決勝戦の前に、チームの経営管理をチェルシーFCの慈善団体に委ねると発表した。アブラモビッチはプーチン大統領とも近いと言われているが、この唐突なアクションが、ウクライナ侵攻と無関係と考える人は誰もいない。

↓はTimes紙日曜版スポーツセクションの1面である。“Toxic“(有毒)と強烈に批判されている。

こうしたピッチ外の出来事は、この試合を見守るファンや選手たちの心に多少なりとも影を落としていたこと思う。

なお、未だ慈善団体サイドが、この動きを受諾するかどうかにつき、態度を保留している 。

ロシアはサッカーの国際試合からも締め出された。平和にフェアーに競争し合える状態に、早くなって欲しい



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