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年末の課題図書の前に〜霜月蒼のススメで「五匹の子豚」

デビッド・スーシェがポワロを演じるテレビシリーズ「名探偵ポワロ」。今は、NHK BS4Kで放送されているが、過去に撮り貯めているものを時々見ている。ドラマを観て興味がわくと、原作を読むこともたまにある。クリスティーはそれなりに読んでいるが、未読の作品もまだまだ沢山。

その第50話「五匹の子豚」。タイトルは、アガサ・クリスティーお得意の「マザーグース」から来ている。画家のエイミアス・クレイル、恋仲にある女性エルサの肖像画を描いている最中、体に変調を来たし死亡する。死因はビールに入っていた毒。嫌疑をかけられた妻キャロラインは有罪となる。

エイミアスとキャロラインの間には小さな娘がいたが、事件から引き離すため、カナダの親戚の家に預けられる。10数年の時がたち、この娘がポワロを訪ねてくる。依頼事項は、母親の無実を明らかにして欲しいとのこと。これを受け、ポワロは、事件の場にいた5人、エルサ、エイミアスの友人兄弟、家庭教師、キャロラインの妹などを訪ねる。。。。

なかなかに面白い。原作を読むか、例によって参考にするのが、霜月蒼著の「アガサクリスティー完全攻略」(2014年刊:第68回日本推理作家協会賞ー評論部門ー受賞)である。本書の“はじめに“によると、霜月氏は、ミステリ評論を名乗りながら、クリスティー作品は7作(この鼎談では6作)しか読んでいなかった。その理由は、<「クリスティーはこういうふうに面白い」という明快な説明を名にしたことがなかった>。また、クリスティーについて取り上げられる作品は、一部に偏っている。曰く、「アクロイド殺し」、「オリエント急行」、「そして誰もいなくなった」など。

ならば自分で読んで、<古典としてではなく、いまここにある新作として読み、評すること>にしたのが、本書である。クリスティーの全作品を5つ星で評価している。

さて、「五匹の子豚」の評を見てみよう。なんと、5つ星の満点である。そして、<スゴい。これは傑作だ。最高傑作であろう。未読のものはすぐに本屋に走るように(太字原文ママ)>とある。私は未読どころかタイトルに覚えもない。そして本屋に走らず、Amazonのボタンをポチッとしていた。

数日後には、文春などの年間ミステリーベストが出る。今はクリスティーを読んでいる場合ではないと後悔したのは、時すでに遅しであった。

確かに傑作だった。ケレンは全くない。派手なトリックも、豪華な列車も、不思議な招待状、メソポタミアやエジプトといった旅情もない。イギリス郊外が舞台で、事件は既に発生しており、小説は関係者の証言、手記で構成される。

それを材料に、事件の際の当事者5人=「五匹の子豚」と、犯人となったキャロラインの心理状態をポワロは掘り下げていき、結論に導く。物的証拠はゼロの中での推理であり、霜月は<ポアロのいわゆる「心理的探偵法」がはじめて効果を発揮した作品>と書いている。

クリスティーの世界、まだまだ奥が深い。でも今は“新作”に注力しよう


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