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文藝春秋十二月号「米国はすでに敗北している」〜エマニュエル・トッドの記事は必読

12月1日付の日本経済新聞に“ウクライナ戦争 長期化当然“という見出しで、英FT紙の記事同紙の国際報道編集者が、ウクライナを訪問した記事が翻訳掲載されている。

ガザ地区における戦闘に押し出されて、ウクライナに関する報道量の減少したことを受けて、現状をレポートしたものである。記事は、ウクライナは西側諸国が中東での紛争に気を取られていることに絶望しているわけではない。しかし、戦争の長期化を懸念し、西側の支援が後退しかねないと不安視している。そして、最大のリスク要因はアメリカの大統領選であるとする。

同日の1面にはゼレンスキー大統領のインタビューが掲載され、見出しには“「停戦、ロシア撤退が前提」交渉には応じず〜武器不足、苦戦認める“と書かれている。

この戦争の現状、今後はどうなるのだろうか。

私が日常的に目にするウクライナ関連の報道は、ウクライナ側からの見解、西側諸国の立場にバイアスがかかったものが殆どである。実態を把握するには、複数の視点から見ることが重要である。文藝春秋12月号掲載のエマニュエル・トッドによる「米国はすでに敗北している」を読んで、改めてそのことを感じた。

フランスの歴史人口・家族人類学者であるトッド氏は、これまでも様々な書籍を上梓、文藝春秋誌にも度々寄稿し、その切り口は大いに参考になると思っている。

トッド氏は、アメリカが十分な軍事物資を届けられない状態になった今(金は出せても軍需品の生産力が不足)、<米国の敗北はほぼ確定しています>(同記事より、以下同)と語っている。

一方のロシアについて、<多くの人が見誤ったのは「ロシア経済の強さ」>とし、経済の金融化・サービス産業化が進み、GDPでは生産力は測れないと説く。

ロシアと取引している国は中国始め多くあり、日本もロシア産のカニを輸入している。おかげで、カニの値段が今年は下がったと呑気に報道していた。国内の水産加工業を守るためだが、こうした経済封鎖の穴はたくさんあるのだろう。

さらにトッド氏は、<この戦争をめぐる一番の不安定要因は、米国にあるように思います。> 米国のエリート集団は、合理的な戦略に基づいて行動していないとし、強烈な一言は<「バイデンという老いぼれに率いられた子供っぽい集団」というのが、「世界一の大国」であるはずの、この国の指導層の実態なのです>とする。

私はこの一文を読んで、「そんなバカな」とは思わず、同時に背筋が寒くなった。次の大統領選はそのバイデンと、もっと子供っぽいトランプの戦いになる可能性があるのだ。

さらにトッド氏は、ウクライナ問題におけるドイツ・ポーランドの立ち位置を解説し、さらに欧州全体が置かれている状態を解説する。

これらを踏まえて日本は何を考えるべきか。

トッド氏は、<米国の危うい行動によって日本が不必要な戦争に巻き込まれることを本気で心配しています。>

文藝春秋新年号の発表までまだ数日あります。立ち読みでも良いので、是非ご一読ください。



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