小林信彦とあるミュージシャンの邂逅〜「本音を申せば」より

4月1日発売の週刊文春4月8日号、小林信彦の連載コラム「本音を申せば」はこんな展開である。小林信彦が紀伊國屋書店の喫茶店にいると、旧知の音楽評論家(次の回で、ジャズ評論家の岩浪祥三であることが分かる)が、スピーカーから流れている音楽の作者である、ミュージシャン/DJについて小林さんに問う。

小林さんは知らないのだが、評論家は、そのミュージシャンは小林信彦を知っていて、<「クレイジーというか、今だに、植木さんがらみのことにくわしいと言われている」>と説く。植木とは、クレイジーキャッツの植木等のことであり、小林信彦はそう行った方面に、私も含め多くの次世代を引き込んだ人である。

この会話を受け、小林さんは、このミュージシャンに放送局経由で、クレイジーキャッツにインタビューした記事が載る雑誌を送る。すると、<とにかく急いで会いたい>という返信が来る。ミュージシャンとは大滝詠一である。

大滝詠一が逝去したのは、数年前のような気がしていたが、2013年の12月、もう7年以上前だ。2019年の山下達郎のコンサートで、大滝詠一への思いと共に「君に天然色」を演奏したのを聴いたことも、その死について間違った時点修正を手伝ったと思う。

そして最近、Apple Musicで大滝詠一の作品が配信解禁となり、未聴のものも含めて聞き返していた。そんな時の、小林さんのコラムである。

このコラムのエピソードの続きは、4月8日発売の週刊文春に記載されているが、そこで触れられている、1983年発売の小林信彦編「テレビの黄金時代」(キネマ旬報別冊)。手元にあったので確認すると、これには大瀧詠一名義で参画し、植木等のインタビュアーの他、谷啓・小林・大瀧の座談会で、フランキー堺とシティスリッカーズ(谷啓・植木等も在籍)からクレイジーキャッツにつながる系譜について、谷さんから聞いている。大瀧さんは、スパイク・ジョーンズ(注:音楽家)、シティ・スリッカーズは、<50〜60年代以降のポップスの一つの原型を作っている>、効果音も含めた音楽と音の<カリカチュアライズ>と評しているのが、彼の音楽との関係性も含めて興味深い。

この本で、私は小林さんから大滝詠一を教えてもらう。そして「ロングバケーション」である。

小林信彦と大滝詠一の邂逅が、私の世界を広げた


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