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映画「トキワ荘の青春」〜まんが道の向こう側(その1)

トキワ荘と言えば、手塚治虫を始めとして、二人の藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫、水野英子ら、日本のマンガ界のレジェンド達が住んだ東京練馬区のアパートである。

この名前を認知したのがいつだったのかは覚えていないが、そこでの詳しい様子を知ったのは、藤子不二雄Aの自伝的マンガ「まんが道」である。大好きな作品で、こう書いていると、ついまた読み返したくなる。藤子不二雄(マンガでは合作名、足塚茂道)をモデルにした、満賀道雄と才野茂、富山でマンガ家を夢見る日々に始まり、上京、そして手塚治虫と入れ替わりでトキワ荘での生活を始める。そこでの交流、青春の日々が描かれる。

そんなトキワ荘を舞台に、手塚治虫に憧れ、手塚に追いつけ追い越せと奮闘する若者の姿を映し出した映画、「トキワ荘の青春」がNHK BSで放送された。

監督が市川準、主演に本木雅弘といった程度の事前知識で見始めた。本木が演じるのは寺田ヒロオ、代表作に第1回講談社児童まんが賞を受賞した「スポーツマン金太郎」がある。小学生の頃、時折遊びに行く友人の家に、この単行本があり読むのが楽しみであった。金太郎と桃太郎がプロ野球の選手になって大活躍するという、子供向けの楽しいマンガだった。

テラさんこと寺田ヒロオはトキワ荘に住むマンガ家たちの支柱で、「まんが道」の中でも重要なキャラクターである。雑誌「冒険王」編集部との面談のため上京した満賀道雄は、手塚治虫を介してすでに売れっ子マンガ家となっていた寺田ヒロオと会い、4時間二人は話し込む。そして、満賀は、病気で上京できなかった才野への大きな手みやげを、<手塚先生からもらった生原稿と、寺田ヒロオとの出会いだった!>と独白する。

その後、本格的にマンガ家を目指すため、満賀と才野は東京に引っ越す。手塚治虫に会うため、トキワ荘を訪れた二人は、寺田に再会、寺田は二人を歓待するとともに朝食をご馳走する。「まんが道」の中で、二人は話す。

才野:いやー テラさんってとってもたのもしい人だな
満賀:だろう、まるで兄貴という感じだ
才野:うん! まんがを書く人に似合わず、きちんとした性格みたいだし。。。。。

寺田は、二人に生活の心得を説くとともに、訪ねてきた「漫画少年」の編集に紹介し、仕事のチャンスを授ける。こうして、足塚茂道こと、藤子不二雄のプロ漫画家としての道が始まる。

当然ながら、藤子・石ノ森・赤塚らの成功の影には、陽の当たる“まんが道”を歩けなかった作家、“道”から外れた作家がいる。寺田ヒロオはその一人である。

映画「トキワ荘の青春」は、そうした「まんが道」の向こう側とも言える寺田ヒロオらにスポットライトを当てた。その視点が素晴らしい。

いつものことだが、前置きが長くなった。映画の内容は次回



献立日記(2021/12/8)
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*トキワ荘を再現したミュージアム


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