選択的夫婦別姓とスプリングスティーンの楽曲〜“I Wanna Marry You“
石破茂首相は、選択的夫婦別姓制度について、総裁選前は前向きな姿勢を示していた。しかしながら、現時点では導入を明言しておらず、自民党内保守派に配慮しているとも報道されている。元々、党内基盤が強固ではない首相だけに、政治的にはいたしかたないのだろうが、本制度のみならず石破氏の党内でのスタンスは、選挙に向けて自民党の大きなリスク要因だろう。
選択的夫婦別姓については、私は賛成の立場である。“選択的“なのだから、よいではないかと思う。今回の総裁選立候補者の中では高市早苗が反対派として有名だが、彼女の理由は「家族一体とした氏は残したい」である。
私も「家族一体とした氏は残したい」という気持ちは分かる。しかし、それを国が強制する必要はない。家族一体を何に求めるかは、人それぞれである。ちなみに、私の娘は二人とも国際結婚している。この場合、戸籍の苗字はそのままでもよいし、変更することもできる。ただし、戸籍は国籍と結びつくので、パートナーは戸籍に入ることはできない。結果的には、選択的夫婦別姓である。だからといって、彼らが一体感のある家族を築けないとは思わない。
さて、ブルース・スプリングスティーンの名盤「ザ・リバー(The River)」(1980年)所収の楽曲 “I Wanna Marry You“である。
LP2枚組の大作、1枚目のB面5曲目のバラードである。
タイトルは<君と結婚したい>と、極めてシンプルである。しかし、中身はかなり重い。「ボーン・トゥ・ラン〜ブルース・スプリングスティーン自伝」(早川書房)によると、<『ザ・リバー』は愛と結婚と家族が恐る恐る舞台の中央に出てくる初めてのアルバムになる予定だった>。スプリングスティーンの年齢は30歳を超えていた。
曲の主人公、彼が結婚したいと焦がれる女性、彼女はベビーカーを押している。二人の子供を抱えたシングルマザー、彼は彼女の生活の厳しさに思いを馳せながら、惹かれていく。
一方で、結婚することは彼女の自由を奪うことであると認識、それでも彼女と家庭を持ちたいと考える。愛情だけで全てうまくいくわけではなく、<おとぎ話(fairy tale)>のような結末にはならない。彼の父親は、“真実の愛など嘘っぱちだ(true love was just a lie)>と言って、失意の中で死んでいった。
それでも彼は彼女との結婚を望む。そして、彼はこう語る。
<I'd be proud if you would wear my name〜君が僕の姓を名乗ってくれたら、僕は誇りに思うだろう>
これを初めて聞いた19歳の私は、“wear my name“ってなんと素敵な英語だろうと思った。
選択的夫婦別姓を支持するが、私個人としては妻に自分の姓を名乗って欲しい、名乗ってくれるとありがたいと思う〜現実にそうなっているが。そんな気持ちが残る社会というのも、悪くないのではとも思う。
アルバム「ザ・リバー」全体については、またいつか
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?