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シンプルな映画は心地よい〜「三人の狙撃者」

小林信彦の「外国映画ベスト50」の方も、未見の作品を少しずつだが消し込んでいる。

1954年公開、ルイス・アレン監督の「三人の狙撃者」である。まったく認識していなかった作品だ。

アメリカの田舎町、飾り気のない駅がポツンとあるような街に、大統領が訪問するという。地元の保安官トッド・ショウ(スターリング・ヘイドン)と、シークレット・サービスが共同して警護にあたる。駅を見下ろせる丘の上に一軒の家があり、ここには未亡人のエレン、息子のピッジ、エレンの義父で元シークレット・サービスのポップが住む。

この家がドラマのメインの舞台なのだが、街の警戒レベルが上がる中、この家に現れた三人組、大統領警護のFBIのエージェントと称するが、実は大統領暗殺を狙う悪者。この三人のリーダー、ジョン・バロンを演じるのがフランク・シナトラである。

この丘の上の家に、警備上の調査のため、保安官トッドらが訪れるのだが、ここからドラマが動き出していく。

プロットは極めて直線的であり、結末も大体予想される中で、いかに緊迫感を演出するか。単純なだけに、登場する役者の演技に負う部分が大きい。それが見事で、気持ちよく見られる映画だった。シンプルな映画は心地よい。

シナトラがこんな悪役やるのかと思った。私にとってのイメージは、ミュージカル「踊る大紐育」である。この頃の、シナトラは演技派への広がりを目指しており、 フレッド・ジンネマン監督「地上より永遠に(ここよりとわに)」では、アカデミー助演男優賞を獲得している。

オリジナルのポスターの惹句は、“Sinatra....as a savage, sensational-hungry killer!“、「シナトラが…残酷で、センセーショナルで貪欲な殺人者に!」という感じだろうか。なかなか、引かれる文句である。

原題は、“Suddenly“。これは、舞台となった架空の街の名前。もちろん、「突然に」という意味をかけている。前述の宣伝文句、タイトル、そして映画の内容と、うまい具合にマッチしている。ただ、直訳のタイトルをつけても何だか分からない。この辺りが、日本語タイトルの難しさである。

U-NEXTで視聴。 Amazon Primeでも配信。字幕なし版はパブリック・ドメイン

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