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「はばたけ!落語と講談四人衆」(その1)〜桃花の「転宅」は木久扇伝承の“カッパ“と共に

意図したつもりはなく偶然重なっただけなのだが、11月は演芸月間となり、4回目の落語・講談会通いとなった。

この日は清澄白河の深川江戸資料館での第2回らくご報知「はばたけ!落語と講談四人衆」である。“四人衆“全て女流で、落語は立川小春志蝶花楼桃花、講談は田辺銀冶田辺いちかである。

19時開演なので、その前に腹ごしらえ。この近くには「だるま」という名大衆居酒屋がある。日本酒に肉豆腐。量がたっぷりあるので、私はこれだけで十分である。向かいのカウンターに座る二人も同会に行く前のようで、演者について話している。聞こえてきた名前の一つが「田辺銀治(ぎんじ)」、「ん?」。「違いますよ〜銀冶(ぎんや)ですよー」と訂正したかったが、ぐっと堪えた。実際の高座で彼女は「田辺銀冶(ぎんや)と申します」と名乗っていたので、おそらくお二人は間違いに気づいたでしょう。

会のトップに上がったのは講釈師の田辺いちか。四人の中で唯一の二つ目だが、彼女も今後の講談界を引っ張って欲しい存在。「井伊直人」をしっかりと演じた。

二番手は蝶花楼桃花。若手大喜利で座布団最高枚数獲得、商品として林家木久扇師匠から大事なものを授けられた。それは“カッパ“の芸!、木久扇から「どこで演ってもいいです」と言われたが、「これ、どこで使うんですかねぇ」と。

ちなみに、木久扇は最初の師匠三代目桂三木助が他界し、八代目林家正蔵(後の彦六、前名蝶花楼馬楽)門下に入る。桃花はその彦六の曾孫弟子(師匠は春風亭小朝)。つまり、木久扇は桃花のおじいちゃん(大師匠の五代目春風亭柳朝)の弟である。

入ったのは演目は「転宅」。機転の効くお妾さんが、間抜けな泥棒を言いくるめる噺。女流の利点を活かして、魅力的なお妾さんを演じ、泥棒がだまされるのにも納得。しっかり“カッパ“を入れ込み、明るく笑いの多い舞台で客席も大いに沸いた。

中入り後は、四人のトーク。個別に交流はあるが、四人揃う会は珍しいとのこと。桃花は小春志のことを“姉さん“と呼ぶ。桃花が先に真打に昇進したが入門は2006年11月、小春志も同じ2006年入門だが3月なので上となる。この日に私は知った。

面白かったのは、小春志の様子。今年の春、立川こはるから小春志となり真打に昇進した。私が観てきた高座は、師匠談春の助演、今秋の真打昇進披露興行。披露目では師匠やゲストの先輩人とのトークコーナーもあったが、流石に彼女も緊張感があった。それが、「普段はこんな感じなのか」と思わせるほどリラックスしていて、文字通り化粧っ気のない“普段の小春志“が見られた。

四人のトークが終了し、後半の高座がスタートした


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