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手の中の音楽25〜ジャクソン・ブラウン「Hold Out」はリアル・タイム

アメリカのシンガーソングライター、ジャクソン・ブラウンが本格的に私の視野に入ってきたのは、1980年に発表したアルバム「Hold Out」からだった。大学生になり、中高の友人たちとスキーに行った時、その一人が盛んに宿泊部屋で流したのが、発売後間もないこのアルバムだった。

ジャクソン・ブラウンは、1974年の「Late for the Sky」が全米14位、次の「The Pretender」が5位、そして1977年の「Running on Empty」が3位と順調にスターダムにのし上がる。この3枚は、後に私の愛聴盤となるが、最初は「Hold Out」である。

実は、このアルバムでジャクソン・ブラウンは遂に全米1位を獲得するのだが、批評家からの評価は前作と比べると低いように思う。その理由は、分かるような分からないような。そんなことはどうでもよく、私にとっては、やはり思い入れのある作品である。

1980年前後はディスコの時代である。映画「サタデー・ナイト・フィーバー」が1977年、ローリング・ストーンズがディスコ・ミュージックとも言える“Miss You“を出したのが1978年、山下達郎の“ボンバー“が大阪のディスコで火がついたのが1979年(これも、スキーを終えた夜、盛んに流していた)。

そんな時代、ジャクソン・ブラウンが、アルバム「Hold Out」で1曲目に持ってきたのが、“Disco Apocalyse“〜ディスコの黙示録である。ダンサブルなナンバーだが、“黙示録“である。

続く2曲目はタイトル・トラックの“Hold Out“。このアルバムのラストは“Hold On Hold Out“という楽曲で、Hold Outと対になる言葉としてHold Onが登場する。(私の理解だが)ここで使われている意味は、“持ちこたえる“、“持続する“という意味だが、“Hold Out"は求めるものに向かうという動的なもの。一方、“Hold On“は、ある状態を続けるという静的なアクションある。いずれにせよ、“頑張ろう!“というメッセージを伝えている。

"Hold Out"は、詩中の女性に対して、‘Go on and Hold Out'と歌うが、第5曲の“Of Missing Persons“は、求めても永遠に手に入らないものを歌う。アルバム制作の1年前、ジャクソン・ブラウンの友人でもあった、リトル・フィートの中心メンバー、ローウェル・ジョージが急死する。この曲は、彼の娘に向けて作られたものであり、感動的な1曲になっている。

"Call It a Loan"という楽曲(Setlist.comによると、本アルバムの中では、ライブ演奏の頻度が最も高い)も、しみじみ良い曲だが、こうして眺めると、非常にプライベートなアルバムのようにも感じる。そのストレートさが、全体を通じて聴きやすいアルバムになっており、若い頃の私にフィットしたのかもしれない。

本アルバムのツアーで、ジャクソン・ブラウンは来日するが、私は行きそびれた。本作から、私はリアルタイムで、彼をフォローした。彼は新しい曲を作り、社会問題に対して主張し、コンサートを開いている。

来月(3月)には6年ぶりの来日公演がある。私がミスしたツアーを除くと、「Hold Out」収録の楽曲の演奏頻度はそれほど高くない。今回はどうだろうか


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