立正安国論③【お祖師さまのおしえ】vol.12

【お祖師さまのおしえ】は、私がお祖師そしさま（日蓮聖人）の御遺文ごいぶんを少しずつ読んでいく過程を報告するコーナーです。

今回は「立正安国論りっしょうあんこくろん③」です。まだ①、②を読んでいない方はこちらからどうぞ。

参照しているのは、『昭和底本　日蓮聖人遺文』（日蓮教学研究所、改訂増補第三刷、2000年）と、『日蓮聖人全集　第一巻　宗義１』（春秋社、1992年）です。

さて、前回は、災害や飢饉によって世の中が乱れ、多くの人が命を落としている状況に対し、ある人は西方極楽浄土さいほうごくらくじょうどの阿弥陀如来あみだにょらいの名前をとなえ、またある人は東方浄瑠璃世界とうほうじょうるりせかいの薬師如来やくしにょらいの経典を読んで救われようとしていました。今回はどのような方法で苦しみから救われようとする様子が語られるでしょうか。

さっそく読んでみましょう。

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或あるいは病即消滅びょうそくしょうめつ、不老不死ふろうふしの詞ことばを仰あおぎて法華真実ほっけしんじつの妙文みょうもんを崇あがめ、

或あるいは七難即滅しちなんそくめつ、七福即生しちふくそくしょうの句くを信しんじて百座百講ひゃくざひゃっこうの儀ぎを調ととのえ、…

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或あるいは病即消滅びょうそくしょうめつ、不老不死ふろうふしの詞ことばを仰あおぎて法華真実ほっけしんじつの妙文みょうもんを崇あがめ、
「病即消滅、不老不死」というのは、『妙法蓮華経』「薬王菩薩やくおうぼさつ本事品ほんじほん第二十三だいにじゅうさん」からの引用です。

「薬王菩薩本事品」には、「此この経きょうは則すなわち為これ閻浮提えんぶだいの人ひとの病やまいの良薬ろうやくなり。若もし人ひと病やまいあらんに是この経きょうを聞きくことを得えば、病やまい即すなわち消滅しょうめつして不老不死ふろうふしならん。」と説かれています。

「此この経きょう」というのは法華経のことです。そして、「閻浮提えんぶだい」というのは、古代インドの世界観で、人間が住む場所のことを指します。

つまりここでは、「病におかされている世界中のすべての人にとって、法華経というのはよく効く薬であって、もし病気の人が法華経を聞くことができれば、病はたちまち消え去り、不老不死を手に入れられる」ということが説かれています。

このように説かれていることから、法華経のことを真実の「妙文」（人知では計り知れないほど奥深く優れている経典）として崇め、信仰している人がいる、というわけですね。

話の流れとしては、このあと、これらのような信仰のしかたではいけない、という話になっていくと思っていたので、ここで法華経が出てくるのは意外でした。

或あるいは七難即滅しちなんそくめつ、七福即生しちふくそくしょうの句くを信しんじて百座百講ひゃくざひゃっこうの儀ぎを調ととのえ、
「七難即滅しちなんそくめつ、七福即生しちふくそくしょう」とは、仁王般若経にんのうはんにゃきょうという経典に説かれている言葉で、「七つの難がたちまち消え去り、七つの福がたちまちもたらされる」という意味になります。「百座百講ひゃくざひゃっこう」とは、100人の僧侶を招いて、仁王般若経の講座を100回開くという「仁王会にんのうえ」という儀式のことです。

つまりここでは、「仁王般若経によってさまざまな難が消え福がもたらされる、という教えを信じて、仁王会を行って災難から救われようとする人もいる」ということが語られているわけですね。

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今日のところは以上になります。今回は、法華経と仁王般若経が出てきましたね。

本当に少しずつしか読めなくていつ終わるのかと不安になりますが、焦ってもしょうがないので落ち着いて読んでいこうと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、また。