戯言#2

成長とは坂道を登る過程に感じるものなのだ。
平坦な道をただ歩いたところで、感じるのは過ぎていくときの流れだけだった。

歌舞伎町のアーケードを超えた雑踏の真ん中で、酒に酔っていつもより多少勢いづいた声の大きさで、店に入るか否かを検討する。
楽しみといえば、こんなことしかない。
日常は真っ暗だ。

心を開いた様をみて、それを成長と捉えるかどうかは考えなければならない。
処女性の喪失であり、単なる劣化であるかもしれない。しかし、そうすることで生きることができる。
いや、果たしてそうだろうか。

何を消費しても、非消費の貯金を切り崩すが如く、楽しさは経験へと変わり、新しい刺激を追い求めるようになってしまう。
きっと外部からの刺激だけに頼る快楽というのは、有限であり、あらゆる些細な刺激に対する感受性を失わせるだけなのかもしれない。
波なのだ。寄せる波があれば、引く波もあるのだ。大きな山のあとには底知れぬ谷がくるのだ。
何をやっても新鮮な刺激を感じれなくなった僕は、はじめてのメイド喫茶に興奮を抑えきれないおじさんの横顔を眺めながら思った。
刺激をコントロールするすべを覚える必要がある。現実に興味をなくして、欲の沼に溺れないための。

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