戯言#1

雨上がりの渋谷には独特の雰囲気がある。
傘を指して歩く人。看板を畳んだ飲食店。アスファルトにできた、黒い水たまりに反射する街の明かりと、信号機の光。

何かをアウトプットしないといけない衝動。
それほど、動かない感情。
毎日は代わり映えのないよくある、日々の1コマとして、記憶の海に流されて行く。

人生にはテーマとか違和感とか、誰に訴えるわけでもなく、目的なく、発したい「なにか」が必要で。
そういうエネルギーだけが、人を唯一進化させてきた「力学」なんだろうと思う。
見返りを期待して行う「なにか」では、何も生み出せない。

エネルギー保存の法則。
理想空間では、エネルギーは完全に保存され、なにかしらに変換され変化なり、なんなりが起きるというあれだ。
この地球上は、科学で扱うその「理想空間」とはかけ離れている。
エネルギーは損なわれる。
発したエネルギーが何かに影響を与える事を期待して、変化を期待しても、その変化はすぐに訪れない。
温かいお湯が周りの空気を温めるように。
冷たい水が回りの熱を奪うように。
それは、徐々に周りを変化させ、同時に自らも同質化していく。
大きな変化をもたらすためには、例えコップ一杯の水だったとしても、エネルギーを与え続けなければならない。
少し手を休めても、少し冷たい風が吹いてきても。すぐに損なわれてしまう。
絶望的なバランスで設計された、過酷な環境の中で、エネルギーを与え続け、発し続ける事。
それだけが唯一新しい火種が発火する機会を生み出すことなんだろう。

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