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人生を「旅」するすべての人へ【インタビュー記事#01:旅の効用 –人はなぜ移動するのか】

大切な一冊をおすすめしてくれた人と、1冊の本を出発点として人生を語り合うインタビュー記事第1弾。第1弾と第2弾では、運営の二人がお互いにおすすめの本を紹介し合う。第1弾は、代表を務める小澤俊介が登場。

おすすめの本は『旅の効用: 人はなぜ移動するのか』。

おすすめのメッセージはこちら↓

この本は僕にとって「旅のしおり」。新しい環境に飛び込む勇気、就活で描くキャリアの幅、本との出会いが人を変えるという体験、そして本屋余白の立ち上げ。どれもこの本が僕に与えてくれた大切なものです。人生という「旅」をする全ての人に読んでもらいたい一冊です。

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Bookshop Travellerで買った最初の一冊

本屋余白_多賀(以下、「多」):じゃあやっていきますか。

小澤(以下、「[小]」):はーいよろしく。

多:改めてすぎるけど(笑)、簡単に自己紹介をお願い!

小:了解(笑)。本屋余白の代表を務めております、小澤俊介です。東京大学経済学部の3年、20歳です。大学に入ってからの2年間は国際系の団体に入って活動してました。今は絶賛就活中ですね。あとはお笑いがめっちゃ好きで、特にジャルジャルはガチで推してます。余白とコラボさせてほしい(笑)。

多:(笑)。夢が広がるね。ちなみに国際系の団体ではどんな活動をしてたの?まあ俺はずっと一緒に活動してたから知ってるんだけど(笑)、読者の皆様向けに。

小:日本の企業と海外の学生をマッチングして、リモートのインターンシップをコーディネートするっていうのをやってた。普通のインターンの仲介と違うところは、マッチングして終わり、じゃなくて、インターンの期間中インターン生と二人三脚で成長を応援することを大事にしてることかな。

多:ありがとう。ちなみに活動を通していろんなことを考えたよね。自分について、社会について、世界について。

小:いやー本当にね。その思考が余白を生み出したといっても過言ではない。

多:俺もそう思う。ってことで、早速だけど本の話に入っていきますか。おすすめの本を教えてもらっても良い?

小:OK。『旅の効用 –人はなぜ移動するのか』この本です!

多:どんな本か簡単に紹介してもらってもいい?

小:書名の通り、テーマは旅。スウェーデン人の作者が過去30年にわたって世界各地を旅してきた人なんだけど、章ごとに違う場所に行った時のことについて書いてる。

多:面白そう。旅行記、みたいな?

小:うーん、その側面もあるんだけど、この本の特別なところは単なる旅行記に留まっていないところかな。副題(「なぜ人は移動するのか」)の通り、旅や人間の本質まで探るような深い作者の分析が入ってるところが面白い。

多:おお、もっと面白そうに思えてきた。本の中身についてはあとでもう少し聞くとして、この本と出会ったきっかけを教えてもらってもいい?

小:これ、実はBookshop Traveller (本屋余白が棚を持っている、下北沢の棚貸し本屋) (以下「BST」と表記) で最初に買った1冊なんだよね。

多:まじか!すごい。

小:うん。BSTの棚を眺めてたときにこの黄色い装丁が目立ってたから「なんだこれ」と思って手に取ったのが最初。それで見てみたらタイトルに興味を惹かれて、買ってみた。

多:確かに、俺も最初おざ (小澤) におすすめされたとき「旅の効用」って面白いタイトルだなって思ったの覚えてるわ。

小:「旅」と「効用」ってコロケーション的に違和感あるよね。あとはサブタイトルの「-人はなぜ移動するのか」にも興味を持った。旅の本といえば観光地まとめだったり紀行文がイメージされるけど、旅に理由を求めるのって不思議だなって。

物理的な「旅」を通して、精神的な「旅」を語る

多:たしかにそうだね。さっき少し話題になった本の中身について、もう少し踏み込みたいな。「深い作者の分析」って言ってたけど、具体的に印象に残ってるところとかある?

小:本文から引用してみようかな。

「あなたは異文化の中に入って初めて、自分を見つめることができるのよ。別の文化に反応することによって、自分が何者か、自分がどこから来たかを理解する。異文化の人たちから奇妙だと思われることによって、あなたの自画像は正確になっていく。旅は鏡のようなもの。そして最高のセラピー」

多:深みのある文章だね!これは完全に自分の考えだけど、多様な他者とか環境の中に自分を置くと、その他者とか環境が鏡みたいになって自分の新しい形を映し出してくれると思う。だからこそ、対峙(たいじ)する他者や環境の種類が多様であればあるほど自分について深く知れるんじゃないかって。旅に限らない話だけど。

小:まさに自分が言いたかったことだ(笑)。この本は、切り口はあくまでも物理的な「旅」なんだけど、おそらく肉体の移動は本質的じゃないんだよね。新しい環境に飛び込むこと、いわば精神的な「旅」の価値についても語ってる本だと思う。その意味では、他者との出会いも「旅」の一つなのかな。

新しい世界を拓くきっかけになった

多:面白いね。言われてることも興味深いし、さっき引用してくれた文章の言葉選びも素敵だったからすごく読みたくなる。本の内容について聞く中で少し見えてきた気もするけど、おざにとってこの本が大切な理由を聞いてもいい?

小:大きく分けて二つかな!一つはいわゆる「旅」の魅力を知れたこと。俺、去年の夏くらいから長期の留学を検討してたんだけど、留学の選択ってそんな簡単にできるものじゃないじゃん。それで「海外に行く」とは一体どういうことなんだろう、って悩んでたときにちょうど読んでいて。この本が留学を目指すっていう選択を後押ししてくれたと思ってる。

多:なるほどね。俺もおざと一緒に留学を悩んでた人間だけど、あの頃のおざがこの本に影響を受けてたって聞くのは初めてだ。

小:大切な理由のもう一つは、こういう種類の本や価値観と出会えたことだね。大学に入って出会った優秀な友達に圧倒される中で、どうしても勉強では勝てない人たちがいることを知って凹んだ時期もあった。それでも過去の周りと比べてなんでもそれなりに上手くできていた(これも今思えば傲慢だったんだけどね。。)自分を忘れられずに、漠然と成長や「負けない」ことを目指していた。でも気づいたら視野が狭くなっていて、心にゆとりが無くなっていたんだ。それは読書にも現れていて、前はビジネス書とか、もっと実学的な本をたくさん読んでたのね。でもさっき言った通り、この本と偶然に出会って。偶然だったんだけど…というか偶然だったからこそ、かな。自分が今まで考えもしなかったような生き方をしてる人がいることを知れた。

多:偶然でもなければこの本を手に取ろうとは思わなかったもんね。

小:うん。作者は過去30年に渡ってインドを中心に世界各地をバックパッカーとして渡り歩いてる人なんだけど、これは「働く」、いやもっと大きく言えば「生きる」かたちとして自分が全く想定していなかったものだったんだよね。こんな生き方もあるのなら自分ももっと自由に色々考えてみようと思った。そうやって、新しい世界を自分に見せてくれたのがこの本。

多:まさにさっき話していた「精神的な『旅』」だね!

小:そうだね!それをきっかけにしていろんなジャンルの本を読むようになって、新しい考え方と出会うようになって、人生に少しゆとりが持てるようになった。本屋余白が目指すことと一緒だね。その意味では、この本は「本屋余白」を形作った最初の一冊と言えると思う。二人の間では何度か話してきたことだけど。

多:いやー、本当に。BSTっていう場所を用意してくれたのも含めて、本屋余白の象徴的な一冊だね。

この本は、僕にとって「旅のしおり」

多:恒例の質問だけど、おざにとってこの本を一言で表すなら?

小:少し考えさせて(笑)。

…「旅のしおり」これだな。

多:おおお、すごいお洒落なやつきた(笑)。

小:(笑)。「出発点」とかも少し考えたんだけど、この本は自分の来し方に置き去りにするようなもんじゃないから違うなと思って。ずっと自分に伴走して、悩んだときに立ち返らせてくれるような本だね。だから「旅のしおり」。

多:すごくいい。ちなみに「コンパス」みたいなのとはちょっと違う?

小:んー…少し違うな。コンパスは旅の間中ずっと見て進むべき方向を確認するものだよね。でも、「旅のしおり」はずっと見るわけじゃなくて、進むべき方向に迷ったときに自分の意識に乗ってくるじゃん?それがこの本とぴったりだなと思う。

多:なるほどね!「どこを目指すか」っていうより「どう目指すか」を示してくれる、って言い換えてもいいのかな。

小:あーそうだね、そう思う。

多:ずっとおざにおすすめされ続けてた本だったけど、改めて深く話を聞けてめっちゃ楽しかった!本屋余白の原点なのに読めてないのもおかしいんで、いつかちゃんと読みます(笑)ありがとう!

小:うん、読んで(笑)。こちらこそありがとう!

編集後記

本文中にもあるとおり、この本は思想的な面で本屋余白を象徴する一冊になっています。

ただでさえ余白の副代表を務めているうえ、来秋からスウェーデンに留学する予定の僕(多賀)にしてみれば必読の一冊としか思えないので、いつかじっくり読もうと決意を固めたインタビューでした…(笑)。

また、この本がいろいろな意味で小澤の大学生活、あるいは人生のターニングポイントになったこともインタビューの中で一層伝わってきました。多忙な毎日を過ごす中で偶然出会ったこの本が生きる手がかりを与えてくれた彼のストーリーは、きっと大切なメッセージを秘めています。彼のようにこの本を読む暇もないほど日々忙しい方こそ、勇気を出して手にとってみてはいかがでしょうか。


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