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世界に「豊かさ」を取り戻すために【インタビュー記事#11:共感資本社会を生きる】

大切な一冊をおすすめしてくれた人と、1冊の本を出発点として人生を語り合うインタビュー記事第11弾。今回は、淡路島を拠点に挑戦意欲あふれる若者と事業者をつなげるインターンシップをはじめ様々な活動を展開する「淡路ラボ」より、齊藤美結様(淡路市地域おこし協力隊)と佐藤洸大様をお招きしました。

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淡路ラボ

おすすめいただいた本は『共感資本社会を生きる』。
淡路ラボのメンバーの思いの「原点」とも語られる一冊は、どんな魅力を秘めているのだろうか。

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 ”豊かさ”とは何かについて考えさせられた一冊です。
共感を価値にした新しいコミュニティ通貨eumoを作った新井和宏氏と、生産者と消費者を繋ぐ産直サイト「ポケットマルシェ」創業者の高橋博之氏が対談形式でお金と幸福について語ります。読みやすくも深く、我々の生き方について考えさせられます。

「響きあう地球」を目指す

本屋余白(以下、「余」):本日はお二人とも兵庫県の淡路島からですね。よろしくお願いします!
佐藤洸大様(以下、「佐」)&齊藤美結様(以下、「齊」):よろしくお願いします。
:早速ですが、自己紹介をお願いします。
:はい。齊藤美結と申します。1993年生まれで、現在28歳です。現在は淡路市の地域おこし協力隊(編注:淡路ラボ内の一組織)として活動しており、昨年の11月に淡路市に移住しました。
その前は新卒で5年半ほど、広告会社で営業や企画の仕事をしていました。
実は淡路ラボ以外にも移住・定住促進をしているNPOと二足の草鞋で活動していまして、ライターの仕事も個人的に請け負ったりしてます!
:佐藤洸大と言います。もともと余白の正副代表と同じサークルに所属していて、そこをやめた去年の秋くらいから「淡路ラボ」のメンバーとして活動しています。
4月からは大学を休学して、淡路島に滞在して活動するようになりました。休学中のビジョンとして、「地域の個性が溢れたまちづくり」と「地域にお金が回る仕組み作り」を掲げて、淡路ラボという場でそれを達成するために頑張っています!
:ありがとうございます!淡路ラボについても簡単に紹介していただいて良いですか?
:はい。淡路ラボは、一言でいうと「地域の事業者と全国の若者をつなぐ共創型プラットフォーム」です。具体的には、全国の学生と淡路島の様々な事業者様をつなげるインターンシップを運営しています。学生には「淡路島という舞台での挑戦機会」を、事業者様には「やりたかったけどできなかったような『本音のチャレンジ』のきっかけ」を、それぞれ提供できればと思っています。
インターンシップ以外にも、様々な地域の事業者様の応援活動を手掛けています!
:最近団体としてのビジョンをリニューアルして、「響き合う地球」を掲げました。
地域も個人も、学生も事業者も、そして私たちも、関わりあう人びとすべてがそれぞれの個性を生かしあって、可能性を幅開かせられるような、そんな社会を淡路から作って行けたらいいね、という思いを込めて。
インターンシップの運営組織、と言って思い描かれるようないわゆる中間支援組織ではありたくないと思っています。淡路島全体を舞台として様々なプロジェクトが創出されるきっかけとなる種まきをし続けるプラットフォームのような、そういう場でありたいなと思っています。
:活動の対象は淡路島だけなんでしょうか?
:いえ。島内外のみならず、これからは国境を越えて海外の方も巻き込んでいきたいと考えています。
一方で、活動の軸足は淡路島にあると言ったら良いのでしょうか。もともと淡路島は古事記で「国はじまりの島」、日本で最初にできた島として描かれているんですね。そういうルーツを踏まえると、淡路島から何かが始まる、何かを始めるということに対しての追い風は吹きやすいのかな、と思っています。
:ありがとうございます。「国はじまりの島」、素敵ですね。
お二人が淡路ラボで活動することになったきっかけをお伺いしたいです!
:「若者の挑戦機会を創出する」ことにワクワクしました。
僕は秋田出身なので、地域で挑戦したい、という思いはあったのですが、なかなかきっかけがつかめなくて。淡路ラボを見つけて「これだ」と思いましたね。
淡路島という場所が、若者の挑戦の場としてちょうどいいと思ったのも大きいですね。田舎すぎず都会すぎないので、ここを足場に何か挑戦しようと思ったときに、程よい挑戦機会でありながら地域のキーパーソンにつながりやすいんです。
:いろいろな理由がありますが、自分の中で譲れないものが淡路島というフィールドにあった、と言えると思います。
前に言ったように、私は以前広告会社で営業や企画に携わっていました。そこで仕事をする中でわかってきたのが、「熱量が伴っている誰かの思いを受け取って、それを他の人に伝えるお手伝いをすることで、誰かの心を動かす」ことに私は喜びを感じるんだ、ということでした。
自分にとっても広告の仕事をすることは夢でしたし、もちろん充実感はありました。一方、大きな会社で仕事をしているとどうしても手触り感が足りないと言いますか、お客さんとのつながりが薄く感じてしまうこともあって。
そんなときに淡路ラボに出会いました。淡路ラボと地域の事業者様との打ち合わせにご一緒する機会があったのですが、そこで衝撃を受けたんですよね。事業者様から出てくる言葉が「どうしたら自社の商品が売れるようになるか」じゃなくて、「どうしたら自分たちの挑戦で島をもっと盛り上げられるか、島の魅力を伝えられるか」だったんです。おこがましいかもしれないけれど、そういう人たちにであれば、自分の限られた人生の時間を割いて役に立ちたい、と思えたんですよね。

本来の「豊かさ」を思い出させてくれる一冊

:素敵なお話、ありがとうございます。
もっとお二人のお話をお伺いしたいところですが、今日は本の話をしにきたんですよね(笑)。
おすすめいただいた本を簡単に紹介していただいても良いでしょうか?
:はい。『共感資本社会を生きる』という、ポケットマルシェ代表の高橋博之さんと株式会社eumo代表の新井和弘さんという方の対談インタビューが本になったものです。
ざっくり言ってしまうと、「現代の資本主義社会が引き起こしている問題の根っこには『お金』という制度があって、それを乗り越えるために『共感資本』という新たな価値基準を導入しよう」という本ですね。
もう少し詳しくお話しした方がいいですね。
一言で本の内容を説明するのはとても難しいので、省いてしまっていたり不正確なところもあると思いますが…。
本来、ものごとの価値基準は人それぞれで、そういうばらつきとか凸凹とかっていうものが、人間を豊かにするはずなんです。でも、資本主義社会を駆動する「お金」という単一の測度が存在するためにそういう多様性が埋もれてしまっていて、人間は本当の幸せを感じ取れない。そうならば、「お金」という価値基準そのものをアップデートしないと、多様性は生まれないんじゃないか。そういうことを言っているのがこの本です。
そして、「お金に代わる新たな価値基準」として、著者の一人である新井和弘さんが代表を務める株式会社eumoが発行している「共感コミュニティ通貨」eumo (ユーモ) を提案しています。

ポケットマルシェはこちら↓
ポケットマルシェ

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EUMO

:いきなり振ってしまったのに詳しくお話ししていただいて、ありがとうございます。
「共感資本社会」は、資本主義社会に代わるものというよりは、アップデートされた新たな資本主義社会の形、という理解であっていますか?
:そうですね。資本というもの自体を否定するというよりは、新たな「資本」のあり方を示している、といえばわかりやすいでしょうか。
:今のように、ある商品やサービスに対してダイレクトにあらかじめ定められた対価を払うようなお金のあり方ではなくて、そのやりとりの過程に生じる「感謝」とか「共感」を表現する手段としてeumoを払う、そんなイメージですかね。「感謝」や「共感」の度合いはもちろん人それぞれですから、払われるeumoの量も定められているわけではないことになります。
:なるほど…。ありがとうございます。本当に内容を理解するにはちゃんと本を読まなきゃいけないな、と思ったけれど、少しわかってきた気がします。
事前に少し聞いていたけれど、この本はお二人のみならず、淡路ラボのみなさんが読んでいる,淡路ラボという団体にとって大切な一冊、ということであっていますか?
:そうですね。ただ、全てのメンバーが同じようにこの本を読むわけではなくて、この本の魅力を感じるところは人によって違うな、と思います。
:そうですね。本当に響き方は人それぞれだと思います。でも、地域の「豊かさ」っていうものにモヤモヤを感じてる人が多い中で、そのモヤモヤを言語化してくれるっていうのは共通してるところだと思います。納得感も学びもすごくある。

命あるところ、不等価交換、ノイズ…

:なるほど。そうすると、お二人それぞれのこの本が響いたポイントが気になりますね。
:僕は、ポケットマルシェの高橋さんがおっしゃっていた「人とのつながりや命あるところからしか豊かさは得られない」という話にすごく共感しました。特に、淡路島にきてからそう思うことが増えたように思います。
例えば、東京でよくあるようにチェーンのスーパーでただお金を使うんじゃなくて、ちょっと高くても淡路島で日頃からお世話になってる人のお店のものを買ったり、安くはなくても地域のお惣菜を買ったり。普段の感謝とか、そういうものがこもった消費のあり方を自分はすごく居心地がいいな、と思うようになりましたね。
あと、この本ではないけれど、同じく高橋さんが言っている言葉として、「不等価交換にこそ人間の本当の豊かさがある」っていうものがあって。普段の感謝とかおまけとか、そういう完全な等価交換からこぼれ落ちるものにこそ人は豊かさを覚えるというのは、すごく納得しました。だからこそ、僕自身も、損得感情じゃなくて恩とか、そういうもので行動したいな、と思っています。
:ありがとうございます。齊藤さんはどうでしょうか?
:「ノイズ」を大事にするべきというところに共感しましたね。
今の世界って、すごく効率性を大事にする。でも、何でもかんでも効率化していく中で置いてけぼりになるものがある。不要不急、雑談、遊び、そして余白。この本ではそういうものたちを「ノイズ」という言葉で表現していて、本当はそういうものこそがその人をその人たらしめていたんじゃないかというようなことを言っています。
私自身は「ノイズ」をすごく大事にしたいなと思っています。特に、決して「効率的」ではないような「人のこだわり」とか、熱量が宿っている仕草や言動を大事にしていきたい。そして、淡路島にはそういうこだわりを大事にしている人が多いし、こだわりを受け入れてくれる土壌があるな、と思います。
そんな環境はとても居心地がいいですし、こういう輪がどんどん広がっていけばいいな、と思いますね。
:それでいうと、自然と距離が近いのも大事なのかもしれないですね。今日は天気がいいから夕日を観に行こう、とか、帰りは海沿いだから海を見ていこう、とか、そんなことも多いです。
:ありがとうございます。
それこそ本屋余白が大事にしているものも「ノイズ」だな、と思いましたね。
最初本屋を立ち上げるときも「絶対オンラインショップでやった方が儲かるよ」といろんな人に言われたんですよね。でも、実際に本屋さんに訪れて、「効率的」に買いたい本を買えるオンラインショップだったら検索しないような本に出会って手に取る、偶然の出会いを大事にしてほしかった。そういう思いがあって、フィジカルな売り場も作ることにしたんです。
:良いですね。ぜひ淡路島に余白の2号店を作ってほしい(笑)
:淡路島って本屋さんが全然ないんですよ。私も本好きなので、あったら嬉しいです(笑)
:良いですね!ぜひ検討させてください(笑)
今日はお二人とも、ありがとうございました!
佐&齊:ありがとうございました!

編集後記

「豊かさ」というのは不思議な概念だと思います。
インタビューをする中で出てきた「共感」「感謝」「不等価交換」「ノイズ」…いろんなことが「豊かさ」に「まつわって」いるけれど、「豊かさ」を完璧に表現する言葉は誰も持ち合わせていないように思われました。でももっと不思議なのは、そうであるのに、同時に全員が「豊かさ」の概念を寸分違わず共有しているようにも思えることです。ちょうど、淡路ラボのみなさんが『共感資本社会を生きる』という本の違うところに魅力を感じながらも、根っこのところで共通した思いを持って活動されているように。
ともあれ、「豊かさ」を語るだけではなくて、効率的な世界の中に分け入って種をまこうとする勇気と行動力を持ったお二人の姿はとても素敵でした。お二人と淡路ラボのみなさんを、個人的にも余白としても、これからも応援していきたいです!

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