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日めくり文庫本【9月】

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記事一覧

『ピタゴラスと豆』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月1日】 九月一日 (土曜)  朝はしけ模様で時々暴雨が襲ってきた。非常な強度で降って…

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『二百十日・野分』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月2日】「それから……」 「まだ何か注文があるのかい」 「うん」 「何だい」 「君の経歴…

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『ことばの歳時記』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月3日】野分  今どき、野分などというと、なかなか気取ってきこえる。台風と言えば、そ…

『センス・オブ・ワンダー』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月4日】 雨の日は、森を歩きまわるのにはうってつけだと、かねてからわたしは思っていま…

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『ブーレーズ作曲家論選』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月5日】 多くの人にとって、僕もそのひとりだけれど、貴君は、とても早くから、破壊——…

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『21世紀のポップ中毒者』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月6日】『インランド・エンパイア』はインダストリアル・ミュージカルだ! 川勝 とにか…

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『プリンシプルのない日本』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月7日】講和会議に随行して  飛行機でポッと飛び出し、二週間目には、また飛行機で帰って来るという慌ただしい旅だったので、外国まで出かけて行ったという興奮もなかった。昔の船旅なら、やっとサンフランシスコに着くぐらいの期間しかなかったのだから……。忘れられないのは、総理〔吉田茂〕がはじめて葉巻を手にした瞬間だった。講話条約の調印が終わって一時間半後、総理は、アチソン長官から招待された午餐会(ごさんかい)に出席した。食事が済んだあとで総理は何という名前か知らないが、細長いシガ

『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月8日】 老いた父親は客を迎えにいそいそと立ち上がった。彼がドアを開けて、着いた人間…

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『グレ-プフル-ツ・ジュ-ス』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月9日】 序 第二次世界大戦中、田舎に疎開しているとき だんだん食べるものがなくなって…

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『ソクラテスの弁明』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月10日】六  何のためにこんなことをお話しているのか、考えて見てください。私への中…

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『トゥルー・ストーリーズ』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月11日】覚え書き 二〇〇一年九月十一日、午後四時  十四歳になるわが家の娘は、今日…

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『ソラリス』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月12日】 私は一瞬ためらった。 「いいだろう」 「待ってくれ」私がドアのほうに向いた…

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『ワインズバーグ、オハイオ』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月13日】 ジョージ・ウィラードは『ワインズバーグ・イーグル』紙で働き始めたとき、ジ…

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『フラニーとズーイ』 – 日めくり文庫本【9月】

【9月14日】 フラニーはもう一度咳払いをした。自分に課した「純粋な聞き手としての役目を全うするべし」という刑期は既にしっかりつとめたはずだ。「どうして?」と彼女は尋ねた。  レーンの顔に微かではあるが、水を差されたという表情が浮かんだ。「どうしてって、何が?」 「その試論がちゃんと評価されないだろうと思ったのは、どうしてなの?」 「そのことはさっき言ったじゃないか。ずっと説明していただろう。このブルーグマンってやつは、きわめつけのフロベール信者なんだよ。というか、少なくとも