『鳴りひびく鐘の時代に』課題本(仮)

中世後期の北ヨーロッパ。国民の幸福と王の栄を祈り、鐘の音は絶えず町中に流れていました。年若き王、アルヴィドは耳をふさぎます。

<なぜぼくは、ここにすわっているのだろう?

いったいなんのために……。>

孤独な王のもとに、王の鞭打ちの身代わりとして連れてこられた青年ヘルゲ。この出会いにより、二人の運命は大きく動きはじめます。

***

導入の言葉から、主題をつきつけられます。

自分は一体、何のためにここにいるのだろう。

国王の一人息子であったアルヴィド(16)は、生まれたときから「王」でした。そんな彼を誰ひとり「人」としてみるものはありませんでした。そんな生活のためか、はたまたアルヴィド自身少し変わっているからか、うまく人とコミュニケーションをとることができません。感情が乏しい。かといって自分の存在理由も分からず悶々とした日々を過ごします。

勉強中も話を逸らすばかり。不真面目(にみえる)態度に、本来なら罰が必要ですが、まさか王に罰を与えることはできません。そこで、占星術により選ばれた身代わり(ヘルゲ)(17)を王の前で鞭うちにする。それを王への罰にする、となりました。

ヘルゲが鞭打ちされた瞬間、二人に強い繋がりが生まれます。


この本のキーワードに「古星術」があります。現王様は錬金術や占星術にハマり、王の座を息子に押し付けて(これも占星術により決まった)研究に没頭。王の嫁も、身代わりも、占星術で決められていました。それにより人の意志より、目に見えないものが王の人生を動かしていたといえます。理不尽にみえて、しかし結果としてその通りになるというのがこの本の面白さだと思います。「運命」という言葉も同じようにでてきます。

丁寧に読むと、主題の答えもしっかり書かれています。自分の中の矛盾と向き合うことの大切さが分かる一冊です。

<もし読書会をしたらこんなこと>

・アルヴィド王、ヘルゲ、王の婚約者エリシフ。それぞれどんな人物か

・『鳴り響く鐘の時代に――』の後に続く言葉はなにか

・「運命」と「占星術」の違いって何でしょう。(イメージ的に)

・本文中の好きな場面、好きな言葉

・正直、読みにくくなかったですか・・・(汗)どうしてでしょう?

『鳴りひびく鐘の時代に』マリア・グリーベ作 大久保貞子訳 1985 冨山房


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