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いかに選択肢を広げるか(3)会社四季報を使った就職活動法

志望企業の選択肢を広げる上で、次に紹介したい本が「会社四季報」です。会社四季報は株を売り買いする投資家向けの情報誌。業界地図と同じく、発行元は東洋経済新報社です。辞書のように分厚い本にも関わらず、大型書店にはうずたかく積まれています。それだけ売れている証拠です。皆さんの中にも書店で見たという方がいらっしゃるのではないでしょうか。

その中身はデータだらけ。見た瞬間嫌になって、本を閉じてしまいそうです。でも、ちょっとお待ちください。そこには就活生に役立つ情報が満載なのです。(ちなみに就活生向けに企業情報を掲載している本は「就職四季報」です)

会社四季報には何が載っているのか。

会社四季報に掲載されているのは、煎じ詰めれば上場企業の客観的データです。上場企業は、株を買ってもらうことで広く投資家から資金を集めています。一方で上場企業は、企業の財務状況などのデータを広く世に公開する義務があります。つまり上場企業のデータは、ホームページなどで誰でも見ることができるのです。会社四季報は、この上場企業のデータを要約して全企業分掲載したデータ集です。1冊で全上場企業の分析ができる優れものなのです。

就活生が見る5つのポイント

では、会社四季報の中で、就活生が見るべきポイントをご紹介します。
【業績】【財務】【キャッシュフロー】【比較会社】そして、記者のコメント欄の5つです。

1.【業績】欄の売上高、営業利益は順調に推移しているか
売上高は企業が売り上げたお金です。そこから製造コストや仕入れコスト、営業社員の人件費などの費用を引いたものが営業利益です。企業がきっちりと売上を上げ、利益を出しているかがここで分かります。営業利益÷売上高×100%=営業利益率です。同業他社の営業利益率も調べることで、どちらの企業が効率的に利益を出しているかを比較することもできます。
ちなみに細かい話ですが、この欄には、四季報や企業の「予測値」も載っています。予測はあくまで予測ですので注意しましょう。

2.【財務】欄の自己資本比率は健全か
自己資本比率とは、会社の総資本のうち、返さなくて良いお金の割合です。これが高ければ、会社は自己資本(株主からの調達資金や利益の積み上げ)の割合が多く、有利子負債(銀行からの借金や社債)の割合が少ないということになります。つまり、自己資本比率が高ければ、借金が少ないということです。ここから会社の健全性がうかがえます。
これはあくまでも一般論ですが、自己資本比率における健全性の目安は下記の通りです。
自己資本比率が
・10%以下 財務基盤が貧弱
・10~20% 10%未満の会社よりも安定しているが、それでも安泰とはいえない
・20%~40%ごく一般的な水準
・40%以上安定しており、倒産事例が少ない
※ただし、銀行を除く
(参照:決算書はここだけ読め! 前川修満著 講談社現代新書)

3.【キャッシュフロー】欄は健全か
キャッシュフローとは会社の現金の流れを把握するものです。会社にどれだけ現金が入ってきて、どれだけ出て行ったのか。つまり現金の収支が分かります。特に大切なのが、「営業CF(キャッシュフロー)」です。営業CFは、本業に取り組んだ結果、どれだけキャッシュ(現金)が入ってきたか、または出て行ったかを表しています。本来、営業を行った結果、現金が回収され、出ていくお金を上回ってプラスになるというのが通常の姿です。逆に営業CF がマイナスという状態が続けば、手持ちの現金がなくなった際に会社が倒産してしまいます。
次に「投資CF」です。設備投資や株式投資など、企業の投資活動でのお金の出入りを表します。企業は将来のために投資を行いますので、ここはマイナスというのが通常です。逆に持っていた設備を売却して、お金を得た場合はプラスになります。
最後に「財務CF」です。資金調達など、財務活動における資金の出入りを示します。簡単に言うと、借入金の返済が多いとマイナス、借り入れが多いとプラスになります。
以上が【キャッシュフロー】欄の簡単な説明です。営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナスというのが一般的な形と覚えておきましょう。
ただし、会社の状況によって、キャッシュフローの在り方は異なりますので、一般的な形以外でも、成長している会社はたくさんあります。例えばメルカリ。メルカリの営業キャッシュフローはマイナスです。今は赤字でも、将来の大きなリターンを見越して経営しているのです。

4.【比較会社】欄から同業他社を比較する
志望企業だけを分析してもその会社の強みはわかりません。分析は比較することなしにはできないことを理解しましょう。比較会社のデータを調べたり、説明会や店舗見学にも行くことで、志望理由がより具体的になります。さらに【海外】の数字を確認しましょう。この数字から、売上高のうち何%を海外で稼いでいるかが分かります。今後グローバル化がさらに加速するメーカーであれば、ここの数字を他社と比較するのも良いと思います。

5.各企業の記事から、その会社の状況を確認する
会社四季報には東洋経済新報社の記者が、全企業にコメントを掲載しています。ここには、企業の現状がどうで、今後どのようなところに注力するのかが端的に書かれています。この欄も志望理由を書く時のヒントになると思います。

以上が、私がお勧めする、会社四季報5つのポイントです。

日本の大学生は、商学部や経営学部で財務分析を勉強した学生以外は、会社の経営データに全く関心を持ちません。しかしそれでは、主観的な感覚だけで企業を選んでいるということになります。会社四季報に掲載されているのは上場企業だけです。それでも3762社(2020年1月号)が掲載されています。会社四季報をめくるだけで「この会社、知らなかったけど、良さそうな(面白そうな)会社だな。」という偶然の出会いがあるかもしれません。偶然のきっかけづくりとして会社四季報を購入し、まずは前述の5つのポイントを確認しながら、企業研究を行うことをお勧めします。

さらに、副読本として、下記の本を読むことを強くお勧めします。財務分析の方法が本当にわかりやすく説明されています。読む順番は①→②→③の順がよいです。今回のnoteの執筆でも参考にさせて頂きました。

①『決算書はここだけ読め!』前川修満著 講談社現代新書
②『決算書はここだけ読め!キャッシュフロー計算書編』前川修満著 講談社現代新書
③『図解で分かる会社の数字』花岡幸子著 ちくま新書

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