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「野菜は安くなければならない」という呪い

野菜が高い。

ここ十年あまり、家庭菜園で果菜類と冬場の菜葉類をほぼ自給していて野菜の価格に鈍感なのだが、先日成城石井でブロッコリー1個580円という価格を見てさすがに驚愕した。

産地の切り替えがうまく行っていないのか、はたまたこの暑さと大雨で苗がやられた・生育が進んだ・病気が出て早く終わったなどが原因だと思うが、それにしても580円。初めて見たぞ。

いつでもなんでも売っている昨今だが、本来、関東の平地ではブロッコリーの栽培適期は秋から冬だ(最近は春もOK)。夏は高原とか北の方とかの涼しいところで栽培し、産地をうまく回して周年で供給できるしくみだ。が、劣化の速度が早く流通もむずかしいブロッコリーは、夏場に栽培するのにはそもそも無理がある。その無理が今年は表面化したということか。

さらに。きゅうり一本100円にもビックリした。一週間くらいなら冷蔵庫に貯蔵しておいて出荷調整ができるので、不作になってもどこからともなく出てくると思っていたきゅうりだが、今年は品質がよくない。すでに老化の兆しが見えたり、見た目はよくても老化していたり。家庭菜園で新鮮なきゅうりを食べていた身としては、とても買う気にならない。

高値の理由は、必要量が出荷されていないからだ。

野菜価格はおおむね相場制なので、供給が足りないと高くなり、供給が過剰になると安くなる。供給が全然足りない野菜にはべらぼうな値がつくことがある。「野菜が高いと困りますねえ」とか「財布に優しいもやしやきのこを食べて」とか報道する前に、もう少しそういう背景を説明してみたらどうかと思うけど、そういうのはあまりニュースにならない。

なぜ野菜だけ安くあり続けられると思うのかもナゾだ。農業にも電気やガス、ガソリンは使うし、肥料や資材も物流費も軒並み上がっている。これらが一般家庭同様、農家の家計を圧迫しているのに、野菜の価格は十年一日のごとく安価なまま、なんてことがあるだろうか。
あなたのお家と同じく農家も大変なんですよ、という視点をもった報道があってもいいんじゃないかと思うが、残念ながらそういうのは見たことないし、今後もないだろう。

このところありとあらゆるものの価格が上がっているから家計が大変。電気やガス、お肉の値段は上がってもしょうがないけど、いつも安いはずの野菜がこんなに高いのは困るのよ。というような前提で報道されているように思う。しかし今年のような大雨・酷暑などの悪天候が今後も続くなら「いつも安い野菜」という前提が、すでに間違っていると考える必要があるのではないか。

野菜という食材の価値が、単に「安い・高い」などの価格でしか測られないのは残念なことだ。今日もニュースでは「この野菜は今高いから価格の安いこちらの野菜を買いましょう」と言っている。それを見るたびに悲しくなるんだが、皆さんはそうではないですか?

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