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『桐島、部活やめるってよ』TRPG その2(キャラクターメイキング編)

2 キャラクターメイキング

 このゲームは、サンプルキャラクターを用いたクイックスタートはなく、キャラクターを1から作るところからがスタートとなる。

 映画に出ていたキャラクターたちを、プレーヤーが直接操作する事はできない。彼らはGMの裁量で、NPC(ノンンプレイヤーキャラクター・プレーヤーが直接操作できないキャラクター)として登場する事がある。

 キャラクターシートはこちらからダウンロード出来る。
(エクセルファイルが希望の方はこちらから)

 キャラクター作成例としてはこんな感じ。

2-1 名前、年齢、性別、クラスの決定

 キャラクターの名前を決める。日本のどこかの高校に存在するであろう説得力を持った名前である必要がある。

 年齢は、プレイキャラクターに出来るのは高校二年生の16か17のみ(誕生日が春・夏にするなら17、秋・冬ならば16とするとよい)。
 NPCの場合のみ、高校一年生と三年生は作成できる。

 性別は、もし男女以外のトランスジェンダーを選択する場合、GMと要相談である。

 クラスは、2年A組、B組、C組……などからチョイス、あるいはその他「x組英文科コース」など、リアリティのある範囲で創作してもよい。
 映画に登場するかすみ(橋本愛)や前田涼也(神木隆之介・映画部)らがいたクラスは、映画を見る限りは「F組」であるらしい。「桐島」は映画でも原作でも何組にいたのかは不明であるが、ゲームでの絡ませ方を考えると「F組」と考えてもいい(個人的には、どうも別クラスだったようにも思うが)。
 その他の生徒がいる組を「A~C組」と考えると良い。
 特にこだわりのない場合は、「F組」に設定する事をお勧めする。

 部活動は、大きく分けて「文化系」か「体育会系」あるいは「帰宅部」とあり、リアリティがあればどんな部活動とする事も出来る。ただし「卓球部」は「文化系」として扱う。決めかねる場合は、ランダムシート(DL可能)内の「部活動決定D66シート」を使ってもよい。

 映画や原作小説に登場しても不自然ではない説得力をもった創作をしようとする事が大事であり、ウケを狙う、面白がらせるという思考で作らない事をお勧めしたい。
 GMは、あまりに突飛な設定や名前だと感じたら、後述する「スクールカースト」の数値の減少を指示する事が出来る。

2-2 基礎能力値の設定

 そのキャラクターが基礎的に持っている能力値を決定する。
 設定できる数値の最小は1、最大で5。
 下記の数値は、1~5の間なら自由に設定してよい。オール5にする事も当然可能だ。しかし、このゲームは数値が高ければ高いほどいいのかと言うと、必ずしもそうではない。不利な状況に追い込まれる場合もある。自分のイメージに合わせた能力値を設定すると良い。

【運動】
 
そのキャラクターの運動性能を示す。高いほど強く、1で運動音痴。5で部活動のエースクラスと考えると良い。
 運動に関する判定や、あるいは(あんまりないと思うが)戦闘に関する判定もこの数値を使用する。

【器用】
 
手先の器用さ、作業のスムースさ、記憶力、注意力、気づきを示す数値。人間関係に関する器用さではない。1で何をやっても不器用。5でクラスで一番器用で敏感。

【精神】
 
精神的なタフさ、傷つきにくさを示す数値。1ですぐに泣くようなメンタルの弱い人、5で何事にも動じないタイプ。ゲーム初心者は高めに設定すると良い。

【社交】
 
コミュニケーション能力を示す数値。1では限られた友人とも話す事が困難。3で友人と雑談が苦もなく出来る程度、5で誰とでも積極的に交流できる程度。

【知識】
 
博学さや知識量などを示す数値。必ずしも勉強の出来をしめすものではない。1で何も知らない無知。5でクラスで一番博識で知的。博識のジャンルは問わない。

【外見】
 
文字通り、外見の良さ。オーラ等は含めず、単純に外見だけの良さや、ファッションセンス、身体的なスタイルの良さ、性的なアピールも含まれる。1で、誰が見てもブサイク。5でクラスで1番の美男美女。

【勉学】
 
勉強が出来るかどうかの数値。面倒くさければ【知識】と【器用】の平均値(小数点切りあげ)で算出してもよい。といっても、多分あまり使わないデータである。キャラクターの味付け程度に。
 GMの裁定にもよるが、この学園の舞台はそれなりに進学校である事を留意したい。「2」程度でも、いわいるFランクの大学程度ならば進学できる程度と考えていいだろう。

 これらの数値を設定するのが面倒くさかったらサイコロを振って決めてもよい(6が出たら振り直し)。が、基本的にはキャラクターのイメージを優先して設定するのがよい

2-3 スクールカーストの制定

『桐島』世界の学校生活には、目に見えない階級が存在する。それらを数値化したものがスクールカーストだ。通常は1~5の数値で処理される。ただし、この数値はゲーム中変動する事がある。

 1が最も最下層。休み時間に話しかける相手が限定的で、サッカーの授業のチーム分けジャンケンで最後に選ばれる程度。しばしば文化系の部活に所属している。
 5が最も位が高く、クラスの中心、人気者。サッカーのチーム分けジャンケンをする側の立場など。

 1から5、これも好きにチョイスできるが、先ほど設定した能力値や部活動によって選択出来る条件がある。

○ 【運動】【社交】【外見】の能力値に、一つでも「5」がある場合、スクールカースト「1」を選択する事は出来ない。

○ 女子の場合、【外見】が「1」の場合、スクールカーストは「2」以下となる。

○ 男子の場合、【外見】の能力値が「1」の場合、スクールカーストは「3」以下になる。

○ 男子の場合【運動】の能力値が「1」の場合、スクールカーストは「3」以下になる。

○ 部活動が「文化系」の場合(卓球部含む)、スクールカーストは「3」以下になる。

 そのほか、あまりに周囲の人間から浮いている設定だとGMが判断した場合は、スクールカーストを低く変更させる事が出来る。

このゲームでは、スクールカーストが0になる、また6以上になってしまうと、「周囲から浮き過ぎてこの世界に存在できなくなる」ため、部活を辞めた桐島のように「日常」に存在できなくなってしまう。注意すべきだろう。

 高めにするにこしたことはないが、スクールカースト「5」を選択すると、ファンブル値が「3」になるので注意したい。逆に、スクールカースト「1」の場合は、ファンブル値が「0」になる。これについては後述する。
 また、特定のスクールカーストでなければ取得できない回復技能もある。これも後述するが、とにかくゲーム的な有利不利を考えるよりも、イメージに合わせた設定で数値を決定する事を強くおすすめする。

2-4 初期所持「私」の決定

 「私」とは、このゲームでは、いわいる「HP」や、クトゥルフTRPGの「正気度(SAN)」に相当する数値である。

 キャラクターは判定に失敗するたびに、あるいはショックな事を経験したり、アイデンティティを揺るがすような出来事に遭遇すると「私」が減少する(GMが指示できる)。つまり、「私」とは、自分が自分でいられる精神的な状態を示す数値であり、「私」が減少するとは、精神的なダメージを負って、自分が自分でいられなくなってしまう状態の事を意味する。
 キャラクターは「私」が0以下になると、「私喪失ファンブル」が発生し、さまざまなデメリットが発生する。また、セッション中、日にちをまたぐ時に「私」がゼロになっている場合は、その時点でゲームオーバーとなる。

 初期設定した【精神】の数値を半分にし(小数点切りあげ)、それに3を足した数値が、【初期所持「私」】の数値となる。

「私」は最大で12まで持つ事が出来るが、そんな事態にはなかなかならないだろう。

2-5 特徴要素の確定

 作成したキャラクターの特徴を、5つ挙げる。これらを【特徴要素】という。特徴は、どんな些細な物でもよく、内面、外見を問わない。特徴は簡潔な物が望ましい。またネガティブな特徴でも構わない。

 ただ、なかなか特徴を思い付かない場合は、「身体に関わるもの」「性格に関わるもの」「社会的な立場」「長所や短所、好み、特技」「学校内でのキャラ」と分けて考えると良いだろう。キャラクターを、5つの特徴で表現するのだ。

 それでも思い付き難い場合は、ランダム特徴表シートを利用すると良い。ジャンルを選びD66で特徴を選択してみよう。もちろん、気に入らなければ振り直してもよく、またその特徴に自分なりのアレンジを書き加えるのもよい。

 作成した5つの特徴に、それぞれ1から5の数字を割り当てる。1は弱い個性、5になればなるほど、その人を特徴づける強い個性と言える。
 キャラクターは、これらの【特徴要素】を使用して、基礎能力判定にプラスかマイナスできる。
 これら特徴を利用した判定は、基礎能力判定よりも、多めの日常点(後述)を稼ぐ事が出来る。

2-6「私」の回復技能

 キャラクターは任意で【「私」の回復技能】を1つ習得できる。ただし、それぞれ習得には条件がある。以下が特技技能である。習得しなくてもかまわない。
 回復技能は、1日に一度挑戦できる。また、これらの技能は、ゲーム中スクールカーストを減少させてしまって実行条件外になってしまった場合、使用する事が出来なくなる。

◎【うちこめるものがある】(【◎う】と略す)
 スクールカースト「2」以下のキャラが習得と実行可能。
 一人静かに何かに打ち込むことで、「私」を1点回復出来る。打ち込む事を書く事。
(記述例:「バドミントンに打ち込んでいる(◎【う】)」)
 何かに打ち込んでいると判断できる時に、それに適した行為判定を行える。成功すると「私」を1点回復。
 ただし、周囲に自分よりカーストの上のキャラがおり、それが多数派の場合、判定は出来ない。

◎【深くうちこめるものがある】(◎【深う】と略す)
 
スクールカースト「1」のキャラが習得と実行可能。
 周りが引くくらい、何かに打ち込むことで、「私」を2点回復出来る。キャラクターシートに打ち込む対象を記述する事
(記述例:映画制作に深く打ちこんでいる(◎【深う】))
 何かに打ち込んでいると判断できる時に、それに適した行為判定を行える。成功すると「私」を2点回復。
 自分よりカーストの上のキャラが周囲に存在していても問題なく判定できる。

◎【共感する】(◎【共感】)
 
スクールカースト「3」のキャラクターが習得と実行可能。
 自分の他のスクールカースト「2」~「4」のキャラクターの行動や発言を聞いた時に、共感できるかどうかの【精神】判定が行える。成功する事で、「私」を1点回復出来る。
 キャラクターシートに特にどういった事に共感するのかを記述する事。(記述例:他人がつらい状況に陥っているのを見ると共感してしまう。(◎【共感】))

◎【見下す】(◎【見下】)
 スクールカースト「4」以上のキャラクターが習得と実行可能。
 スクールカースト「3」以下のキャラクターの失敗した判定に対して(あるいは、NPCの失敗したような行動に対して)、満足いくように見下せるかどうかの【精神】判定が行える。成功すると「私」を1点回復出来る。(記述例:他人の必死な姿を見ると笑ってしまう(◎【見下】))

2-7 友人関係

 キャラクターは任意で、初期設定の時点で1人と【友人関係】を結ぶ事が出来る。
 この場合で言う友人関係は、「秘密を打ち明けられる程度」の関係であり、「いつもつるんでバスケをしている」「なんとなく一緒にいる」程度ではない。
 ただし、スクールカーストが「2」以上離れているキャラクターとは、友人関係には設定できない。

 プレーヤー同士で【友人関係】にしてもよく、また後述する原作NPCや最初に提示されるNPC、あるいはキャラクターをもう一人作成し、それをNPCとして【友人関係】にしてもよい。

 友人関係を結ぶメリットとして、【友人関係】を結んだキャラクターと一緒にシーンに登場している時に各種判定に失敗した時、その友人の基礎能力数値を使ってもう一度同じ判定に挑戦する事が出来る(友人の【特徴要素】は使えない。)

※ 友人拡張ルール 初期設定で【恋人関係】を結ぶ。

【友人関係】を結んでいる中で異性である場合は、初期設定から【恋人関係】に設定できる(プレーヤー同士のキャラである場合は、両者の合意が必要)。ただし両者のスクールカーストが「3」以上でないと設定は出来ない。また、【外見】の値が「1」のキャラクターも設定できない。

 この関係を結んでおくと、上記の各種判定再挑戦の他に、以下の【「私」回復技能】を自動習得できる。ただしこの技能は、他の回復技能を持っていた場合習得できない。

◎【恋人と心を通わせる】(◎【恋人】)
【友人関係】で、恋人を取得している場合に習得と実行可能。
 恋人と何らかのコミュニケーションを取った際、それにふさわしい判定に成功すると、「私」を1点回復出来る。この場合は、メールや電話などでも「コミュニケーション」と判断してもよい。(難易度はそのシュチュエーションによる。GM裁量)。
 恋人とどのような事をすると「心が通い、自分を取り戻せるのか」を記述する事。(記述例:恋人と話していると心が和む(◎【恋人】))
 ただしこの判定に失敗した場合、自分は「私」を2点失う。

2-8【秘密】の設定

 各キャラクターは【秘密】を持つ。秘密は複数持つ場合がある。またロールの最中、秘密が出来てしまう事がある。この秘密は【秘密暴かれ判定】によって暴かれる事がある。
 最初に設定する秘密の中身は何でもよいが、【秘密】を暴かれると、「私」が2点減少する。また、秘密が暴かれることで、スクールカーストが減少するパターンもある。

 初期設定として必ず一つ秘密を設定する事。
 特に秘密が思い付かない場合、「特に秘密のない薄い人間である」と設定する事で、秘密の代用とする事が出来る。

 セッション中、秘密を取得する場合は、プレイヤーの宣言か、GMの指示によっても取得する。しかし、秘密を取得するメリットはないので、なるべくならば避けるべきだろう。

【秘密暴かれ判定】は、なんらかの判定が行われる時に、GMが「これを失敗したら秘密がバレるな」と判断したら、その場で宣言される。プレーヤーが自発的に行われる判定ではない。プレーヤーはその判定に失敗したら、秘密はバレた事になる。

 ただし、スクールカーストが同じかそれ以下の相手、あるいは【友人】の関係を結んでいる相手に、本人がいる場でそれを暴かれたならば、【先に打ち明ける判定】(【社交】で判定)か、【開き直る判定】(【精神】で判定)をする事で、「私」の減少を無効にする事が出来る。これらも、GMの裁定でそれらをプレーヤーに促す事が出来る。

※ 秘密拡張ルール1【うちこめるものがある】【共感する】【見下す】を、【秘密】扱いする事が出来る。

 これにより、自身のスクールカースト条件を無視してキャラクターに習得する事が出来、さらに対象のスクールカーストを無視してこれらの能力を発動できる。

 ただし、それらの判定をする前に、周囲に知られないよう実行できるか判定が必要。基本的に【器用】か【精神】などで判定(使用能力・難易度はGMの裁量による)。成功した場合、これらの技能判定を実行できる。
 しかし失敗すると、「秘密が暴かれた」扱いになり、「私」が2点減少し、さらに今後これらの回復技能は使えなくなる。

 この場合のキャラクターシートへの書き方の例として、秘密の欄に
【内心、派手なグループの人の事を見下している(◎【見下】)】
【映画部の活動に共感している(◎【共感】)】
【口では「内申書のため」と言っているが、かなり本気でバドミントンに打ち込んでいる(◎【う】)】

というように記入する事。しかし【深くうちこめるものがある】は、秘密には出来ない。

※ 秘密拡張ルール2 【友人関係】を秘密扱いにできる。

 友人関係を周囲に秘密にすることで、スクールカーストを無視して友人や恋人を設定出来る。ただしその場合は、関係者同士がお互いに【秘密】にしなければならない。
 どちらか片方の【秘密】が暴かれた場合、もう片方の【秘密】も暴かれた事になり、直接暴かれてなくても「私」は2点減少する。もしその時、スクールカーストが不均衡だった場合、高い方が低い方のスクールカーストと同じ数値になる。それを拒否した場合、友人関係は破棄される。関係を築いた相手がNPCだった場合、NPCの【精神】判定が失敗した場合、人間関係は破棄される。

同性同士でも【秘密】にしておけば恋人関係を結ぶ事が出来る。ただし暴かれるとスクールカーストが無条件でお互い2点減少する)

※  秘密拡張ルール3 秘密を隠してゲームプレイ

 上記の拡張ルール1、2を採用しなかった場合、拡張ルール3を採用する事が出来る。
 キャラクターの【秘密】を、他のプレーヤーやGMにすら見せないようにプレイする事が出来る。この場合、キャラクターシートの下半分を折り曲げて、見えないようにする事。
 ゲーム的には秘密を暴いても何のメリットもないが、相手の秘密が見えなくなるため、より玄妙なプレイが出来る。いわいるシノビガミプレイだが、このゲームは積極的に秘密を暴ける訳でもないので、これといってなにか面白いかというと、ちょっとわからない。

2-9 「桐島」との関係

 これはゲーム的にはフレーバー要素になるが、一方で非常に重要なファクターでもある。 
「バレー部の部長であり、県選抜にも選ばれた、誰にでも優しく、情熱的で、頼もしかった」桐島と、自分はどういう関係だったのかを書く。
 映画版レギュレーションの場合、「無関係」は設定できない。
 最低限「名前は知っている」以上の関係性を必要とする。思い付かない場合は「名前と顔は知っている」「声をかけられた事がある」等を推奨し、出来れば「桐島」に関するエピソードを、文にかけるだけ書くことが望ましい。その文が、キャラクターを動かす原動力となるだろう。

判定編へ続く→

(写真:ニシデアンナ)


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