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酒井格:雲に架かる橋 曲紹介(初出:「好きな吹奏楽曲を語りたい!」)+もろもろ

まえがき

こんにちは。
ずっと掲載しようしようと思っていた文章なのですが、なかなか時間が取れず今のタイミングになりました。
タイトルにもありますが初出は「好きな吹奏楽曲を語りたい!」という同人誌になります。(現在は購入不可)

先日、CD「酒井格作品集」も発売されたので、ちょうど良いタイミングかと思い掲載することにしました。
なお、タイトルの「雲に架かる橋」はCDには収録されていません。
CDの購入はこちらからどうぞ。

本文

※掲載されている情報は2021年3月当時のものになります。

曲名:雲に架かる橋(2005)
作曲:酒井格
時間:約8分30秒
難度:5(難しい)
出版:ブレーン株式会社

はじめに

曲名の「雲に架かる橋」の「橋」とは本州と淡路島をつなぐ明石海峡大橋のことであるという記憶があったため、当初、明石海峡大橋と曲の内容を絡めて書くつもりであった。しかし改めて調べたところそのような事実が明記されているような文献を探し出すことができなかったため、諦めて別のアプローチからこの曲について書いてみたいと思う。

曲の概要

2005年2月に作曲、2005年5月に都賀城太郎指揮、春日部共栄高校吹奏楽部により初演された。春日部共栄高校の委嘱作品である。代表的な音源は響宴XI(NTT東日本東京吹奏楽団、指揮:山田昌弘 品番: BOCD-7482)のほか、ナクソス・ミュージック・ライブラリーでも聴くことができる(大阪音楽大学吹奏楽団、指揮:北野徹 品番:9558-MCD)。
「雲に架かる橋」は、2002年から2004年にかけて全日本吹奏楽コンクール全国大会で三年連続金賞を受賞した、龍谷大学学術文化局吹奏楽団の委嘱作品「三角の山」「森の贈り物」「七五三」の後、比較的早い時期に作曲された作品である。

曲の聴きどころ

高校の吹奏楽部の委嘱作品としては難易度が高い。楽譜の紹介ページに「トランペットとユーフォニアムに極めて優れた奏者のいる超上級バンド向けの作品」と但し書きがあるぐらいの難易度である。初演の音源は残念ながら所持していないが、先出のNTT東日本東京吹奏楽団および大阪音楽大学の演奏を聴いても、特に149小節目からのトランペットソロの難易度が高い。楽譜に書かれている音符以上の表現をしようするのであれば、相当の名手が必要であろう。ライブ録音とはいえ、経験のある大人や専門的に学んでいる音大生でも曲の難易度を如実に感じさせる演奏となるのであれば、高校生、ましてや初演となれば曲を表現しきれないのも致し方ない。しかし、同じように難易度が高いとされている、34小節目からのユーフォニアムのメロディーはNTT東日本東京吹奏楽団の演奏も大阪音楽大学吹奏楽団の演奏も非常に魅力的で聴き応えがある。酒井格の楽曲のユーフォニアムのメロディーといえば「たなばた」の中間部がよく知られているだろうが、他にも、行進曲「海辺の道」など、ユーフォニアムのメロディーが印象的な楽曲がある。酒井格はユーフォニアムの魅力を引き出し、奏者のポテンシャルに応えることができるメロディーを書ける稀有な作曲家の一人であろう。
曲全体に触れると、雲というタイトルにふさわしい、ゆったりとしたテンポと流れが印象的である。ユニゾンが多く用いられ、楽曲の構成も勢いで押し切れるものではない。それゆえに演奏される機会があまり多くないのだろうか。もしくは、知名度の高い「たなばた」「森の贈り物」などの楽曲の演奏機会が多いのだろうか。一時期酒井格作品を頻繁に聴きに行っていた私も、「雲に架かる橋」の生演奏を聴いたのは響宴XIの一回のみである。音源が複数ありながら演奏が聴ける機会がないのももったいないので、できればプロのセッション録音が発売されることを願うばかりである。

おわりに

そもそもなぜ明石海峡大橋と絡めてこの作品について書こうかとしていたかというと、諸事情により2019年頃からサッカーJリーグのチームである徳島ヴォルティス(2019〜20シーズンはJ2リーグ、2021シーズンはJ1リーグ)の試合を見に行く機会が増えたためである。私は大阪在住なので、徳島ヴォルティスの本拠地であるポカリスエットスタジアム(徳島県鳴門市)に行く際、必ず明石海峡大橋を通る。その他にも私は2017年と2018年に神戸マラソンを走ったことがあり、マラソンコースで近くを通る明石海峡大橋には強い思い入れがある。私は自分の趣味同士をつなぐ文章を書きたいと思い、吹奏楽以外の趣味との橋渡しとなるような作品を選んだが、そもそもの作品に関する前提が証明できなかった。なお、酒井格の作品には「月明かりと渦潮」という、鳴門市付近特有の海流をタイトルに冠する作品がある。もし機会があれば、「月明かりと渦潮」に関連して徳島ヴォルティスについて書きたいと思う。なお、私自身は徳島ヴォルティスのサポーターではなく、サッカーJ2リーグのチーム、レノファ山口FCのサポーターである。
話が逸れたが、酒井格作品は「たなばた」「おおみそか」「七五三」といった季節のイベントに関する楽曲が有名だが、それらの楽曲と並ぶぐらい「大仏と鹿」「三角の山」「響瀬の鹿」という、地域に関連した楽曲も数多く発表されている。いわゆる「聖地巡礼」ではないが、楽曲に関連する土地を訪れるという楽しみ方もできるのも酒井格作品の魅力の一つである。曲を聴くだけでなく、曲に関する土地を実際に訪れる楽しみ方も今後提案できればと思う。
 
(ごいんきょ(えりおっと))

参考文献:

雲に架かる橋 –株式会社ブレーン
https://www.brain-shop.net/shop/g/gYDOS-B07/ (参照:2021/03/16)
雲に架かる橋 –ナクソス・ミュージック・ライブラリー
https://ml.naxos.jp/work/1788415 (参照:2021/03/16)

その後の展開

藝大定期で演奏されました

同人誌「好きな吹奏楽曲を語りたい!」は2021年5月に発売されました。
その後2021年11月に開催された東京藝大ウィンドオーケストラ定期演奏会で演奏され、のちにその演奏が東京藝大デジタルツインにて公開されました。
以下のリンクの最後の曲になります。ガイドがあるのでわかりやすいと思います。

タイミング的に「好きな吹奏楽曲を語りたい!」発売後約半年になりますので、ご要望に応えていただいたのかが不明ですが、何にせよとても素晴らしい演奏で大変感服いたしました。大満足です。ぜひみなさまにも聴いていただきたいです。
ちなみにこの演奏会に気づいた時はチケット完売で、かつ私も別の予定があったので現地では聴けませんでした。ですので、動画公開もありがたかったです。感謝してもしきれません。
ちなみにこの演奏会の翌日に行った試合はこちら

おまけ

CD「酒井格作品集」に収録されている「さよなら、カッシーニ」の演奏会ポスターも同人誌に掲載しようと思ったのですが、当時めちゃくちゃ忙しすぎて急いで書いたのですっかり忘れてました。のでここで掲載しようと思います。ちなみにポスターがあったのはハンバーグで有名なレストラン「さわやか」の店舗内です。

「さよなら、カッシーニ」初演の演奏会のポスター

この前にヤマハの企業ミュージアム「イノベーションロード」に行ってたのにポスター撮るのすっかり忘れてたんですよね。そもそも何で浜松にいたかというと磐田×山口の試合に行ってたからです。2021年アウェイ初勝利の試合でした。懐かしい。そういえば昨年磐田×山口〜ティアモ枚方×沖縄SVという試合観戦はしごをしたのですが、まさしく「さよなら、カッシーニ」的なはしごだったなあと思い出しました。こちらも試合結果が一勝一分で沖縄SVはJFLアウェイ初勝利だったのでよかったなあと思いました。

あとがき

タイトル画像は明石海峡大橋です。私が撮影したものですが、こちらは著作権がややこしい感じだったので掲載を取りやめました。雲が多少かかっていますので、「雲に架かる橋」っぽく見えるといいなあと思います。

という、お話でした。

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