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【特級セミファイナル(3)】新曲作曲家の森 円花先生にインタビューをしました

こんにちは。
ピティナ特級公式レポーターの飯島帆風です。

8月14日(日)の特級セミファイナルでは、7人それぞれの個性溢れる演奏を楽しめました。
なかでも、特に興味深かったのが新曲課題の「前奏曲~未知なる世界へ~」。一つの曲が、さまざまな色に染まっていきました。
今回は、セミファイナル終了後に新曲作曲家の森 円花(もり・まどか)先生にお話を伺うことができました。


7人の演奏を一日で聴くということ

――セミファイナリスト7人によって新曲が演奏されました。作曲者として、演奏を会場でお聴きになった感想を聞かせてください。

森先生 まず、自分の曲を一日で7人に演奏していただくというのがレアで、聴き比べを楽しめました。
他の国際コンクールでも新曲課題があることが多くて、そこで曲の分析をするという経験はありましたが、今回のように一日をかけて聴き比べをするということはしたことがなく、新鮮でした。
実はオフィシャルなものとして、委嘱をいただいてピアノソロ曲を書くのは初めてでした。作曲とともにピアノを勉強してきたのですが、なぜかこういった機会はなかったんです。今までは、オーケストラの曲や弦楽器の曲を書くことが多かったです。

――そうなのですね。ちなみに、7人の演奏を通じて印象に残っているところがあれば教えてください。

森先生 各演奏者の個性が光っていたのが印象的でした。新曲課題以外の演奏も聴いて、「このコンテスタントからはこういう個性が感じられる。それならば、自分の曲はこう弾いてくれるのかな?」といろいろ考えたりしていました。演奏者によって着目するポイント、作品から引きだされる部分も異なっていましたね。たとえば、音楽的な空間を引きだしたり、音選びと丁寧に向き合っていたり。そのような演奏者による違いを楽しめましたね。


コンテンポラリー・ミュージックと人間性

――森先生の作品を聴いてみて、曲に演奏者の解釈が入り込む余白があって素敵でした。

森先生 ありがとうございます、そう言っていただけて嬉しいです。そこは今回こだわった点でした。特に曲の前半部分には、演奏者が音を選択する部分があります。演奏者によってさまざまに解釈可能な余白です。演奏者の個性を大切にしたいと思っていました。

――他に、今回セミファイナルの課題曲を作曲するにあたって、特に意識された点、こだわった点はありますか。

森先生ピティナ特級の各段階の指定課題の中では、リゲティが最も新しい作曲家です。そこで、リゲティ以降およそ100年分の音楽の流れを意識して作曲しました。
コンテンポラリー・ミュージック(現代音楽)という言葉には、前衛的でどこか機械的というイメージがあるかもしれません。さらに近年では、AIなどの技術が発達してきました。楽譜を打ち込めば、音楽を自動演奏することも可能な時代です。でも音楽は、人間が作曲して人間が演奏するからこそ価値のある芸術だと考えています。

――森先生の「前奏曲~未知なる世界へ~」は、たしかにコンテンポラリー・ミュージックなのかもしれませんが、豊かな人間性があるように感じられます。

森先生 そこがポイントです。知的かつ人間的な作品であるように、そして演奏者の個性が前面に出るような作品を目指しています。


インタビューの様子。それぞれの質問に丁寧にお答えしてくださいました!
(写真:特級公式レポーターの柚子と蜜柑さん


「いま、どこに向かうのか」

――では最後に、新曲を聴いた方々へのメッセージをお願いいたします。

森先生 今回はオンライン配信も通じて、多くの方々に新曲を聴いていただくことができました。
この曲のテーマでもある「いま、どこに向かうのか」。アヴァンギャルド(前衛)を切り崩していく――現代はそのような新しいフェーズにあると考えています。
それに加え、この曲の演奏を通じて、演奏者の個性や魅力を感じ取っていただけたらと願っております。
また、本日(※8月14日、インタビュー当時)より、「前奏曲~未知なる世界へ~」の楽譜も販売しております。お手元にお持ちになり、答えのない音楽を楽しんでいただけると幸いです。


インタビューを終えて

森先生、ご回答いただきありがとうございました。
お話を伺っているうちに、徐々に深いところまでお聞きすることができました。作曲家ご本人の言葉には、やはり説得力がありますね。とても貴重な機会でした。
これは私の感想ですが、森先生の新曲課題には余白が残されているという点に魅力を感じました。以前、音楽の「余白」という記事を書きました。偶然かもしれませんが、それが今回のインタビューに通じていたように感じます。
聴いた音楽と森先生の言葉が結びつき、ますます「前奏曲~未知なる世界へ~」の世界観に引き込まれました。


▼新曲課題「前奏曲~未知なる世界へ~」の作品解説、楽譜はこちらから

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最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(記事見出し画像の提供:ピティナ ※本レポートでの画像利用許可済)

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