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映画「マグノリア」から見る、人間の心の葛藤。

監督のポール・トーマス・アンダーソンが、エイミー・マンの歌にインスパイアされ、彼女の音楽を映画化した作品です。

「Wise Up」エイミー マン

It's not going to stop
現実は変わらない
Til you wise up
あなたが賢くなるまで
So just...give up
だから、あきらめて

エイミー・マンの歌詞の私の意訳です。

監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演者:フィリップ・ベイカー・ホール
    トム・クルーズ
    メローラ・ウォルターズ
    ジェレミー・ブラックマン
    ジェイソン・ロバーズ
    ウィリアム・H・メイシー
    ジョン・C・ライリー
    ジュリアン・ムーア
    フィリップ・シーモア・ホフマン
公開年:1999年

マグノリア


1、映画のあらすじ

この映画は9人の主人公がとある1日を繰り広げます。

トムクルーズが演じるマックスは自身の主催する男性向け自己啓発セミナー“Seduce and Destroy(誘惑してねじ伏せろ)”で教祖的な存在。でもその内面に怒りと憎しみを抱えている。

ジミーは人気長寿クイズ番組『What Do Kids Know?(子供は何を知ってるの?)』の司会者で、癌で余命2ヶ月の宣告をされています。

クローディアはジミーの娘。ドラッグに溺れ、行きずりの男性とベッドを共にする。父親のジミーが訪ねると話どころか異常な拒否を示しました。

ジムは警察官。職務中にクローディアに惹かれる。正義感が強いが、どこかコンプレックスを持ち、離婚の経験からか女性に奥手。

スタンリーは『What Do Kids Know?』に出演する天才クイズ少年。父親が賞金目当てで出演させつづけ、生放送中にトイレに行きたくなるも行けず。読書で得た知識で賢くはあるけども、それは本当の頭が良いのか。

ドニーは初代優勝者である元天才クイズ少年。過去の栄光が捨てきれず、まるでスタンリーの未来を示しているかのよう。愛する男と同様に歯の矯正をすれば愛されると思い込んでいる。

アールはその天才クイズ番組の元プロデューサーで、末期癌で自宅療養中。かつて妻と息子を捨てた男。死際となり過去の過ちを悔いはじめます。

リンダはアールを愛していないけど財産目当てで結婚した後妻。アールの主治医、弁護士、薬剤師と手当たり次第、自分の被害者意識を抑えられずヒステリーをぶつけている。

フィルはアールの付き添い看護師。アールから息子に会いたいと頼まれる。



2、映画のハイライト

それぞれの人生や心の葛藤、過去の後悔、人を信頼できない、愛せない・・・そんな側面を絶妙に描いてくれます。

3時間と長編映画ですが、その長さを感じさせません。

本当は自分の課題に向き合うしかないのに、自分で自分を縛り続けてしまう。そんな時に最後のクライマックスの衝撃なシーン。ネタバレになるのであえてその衝撃の内容はここには書きませんが、自分の想像を超える現象が発生した時に、自分を縛っていたものをちっぽけなエゴに過ぎなかったと気づくことが出来るのかと思わされます。

主人公たちがエイミー ・マンの「Wise Up」を口ずさむシーンがこの映画の山場です。

「欲しいものが手に入ったり、癒しを手に入れたと思っても、現実は変わらない。あなたが賢くなるまで。だから(現実から逃げられると思うことを)諦めて。あなたが気づくこと以外に、賢くなること以外に、手段はないのよ。」

エイミーマンの「Wise Up」に込められたメッセージだと思います。

3、問題を抱えた9人の主人公に共感するワケ


主人公それぞれの葛藤に、私は自分とリンクするのです。この映画が心に響いた理由の一つだと思います。
最後に綴りますが、監督とサビアンシンボルが一致しているということも大きな理由です。

トムクルーズ演じるマックスは過去を憎み、その反動から女性をねじ伏せるという自己啓発セミナーで教祖的存在。物事を言い切り、自分がすべてを手に入れているという姿に信者が集まってくる。人は自分で考えることよりも、「この人が言っていた、このやり方でうまくいく」という、思考を排除した意見に流されていく。考えることはものすごくエネルギーを消費し、ストレスだから。わかります・・。

マックスは一見、エネルギッシュで前向きだけど、憎しみと怒りのエネルギーに満ちている。それが今の彼の生きるエネルギー源でもあるけど、その内面の本質の問題に迫ってきた女性記者に対し、その怒りを抑えきれなくなるトムクルーズの演技はもう圧巻。感動します。

話を戻して、本質に攻め込まれると怒りとなるという状態で生きるのは、本人が苦しい。でも、そこを乗り越えるにはそこに向き合うしかない。
「過去を振り返ることで、自分という人間が見えてくる。」
この言葉は衝撃でした。過去なんて振り返って何になる、未来を見るべきだ、そんな意識の自分だったから。過去にしがみつかないためには、過去を振り返り、そこから自然と未来に向き合えるのだと思います。


アールは自分を愛してくれた女性を自分の欲望を優先し捨てた過去をもちます。愛するということは楽なことではなくて、自分の欲望を満たすための愛は愛ではないことを今、身を以て私も感じている。アールは富と名誉は手に入れたけども、愛されることがなかった。死際となり、病の苦しみもだけど、孤独であることの方が苦しみが強いと感じずにはいられない。そこで献身的になってくれているのは雇っている看護師のフィル(男性)で、そこに救いを感じながらもでも、でも、フィルではアールの心が満たされることは当然ない。。

そのアールの後妻のリンダは財産目当てで結婚し、浮気をし続けた自分を責めている。本当に反省しているのならば、今からでも出来ることはあるけど、その自分の過去に向き合うのが苦しいから、自殺に逃げる。自殺した人の理由はその人それぞれという前提ですが、少なくともリンダは自分の過去から逃げたいから。私もそんな気持ちになっていたから苦しいほどに彼女と共鳴する。誰のことも愛そうと思わないと、こんなにも孤独と苦しみとなるのだという結末をみせつけられる。そしてそんな自分をわかっているから、ヒステリー となってしまう。これも共感しすぎて。そんなヒステリー な自分に自己嫌悪となり、自分で自分の首を締め続ける。

クローディアは父親ジミーに性的虐待をされたとの話だが、実際のところはわからない。それが事実ならばそれは苦しいことに間違いないのだけど、その過去を言い訳にドラッグに溺れ続け、それでも、自分は悪くないという被害者意識が私の胸に突き刺さる。被害者意識である限り、誰のことも許せなくて、自己正当化し続け、能動的な人生を歩むことはできないから。
そんな自分に共感してくる人といると、対症療法としては満たされるけど、依存しあう不健全な関係になるか、共感してくれなくなった時にぶつかるか、そんな未来となる。
自分の被害者意識を乗り越えることが自分を救う唯一の方法。

他の主人公もそれぞれの人生模様に自分とリンクする部分があり、心が苦しくもなりますが、これではいけないよね、と自然と思わせてくれるのが心地よかったりします。


4、自分に向き合うとは一体なんなのか?必要なの?

「私たちは過去から逃げるが、過去は私たちを逃さない。」

映画の中に出てくる人たちは人を愛せなくて、一時の欲望でごまかしていて。でも、やっぱり逃げられない。

愛したいし、愛されたい。

そのためには、自分にオープンにならないと、人を愛することはできなくて。

でも、オープンになるのは課題を抱えたままで無きものにしたままだと、恐さも伴うのだと思います。だからそこに触れるだけで闘争逃走反応を引き起こす。

自分とは何者か、ということを知り、自分の課題に向き合えば、その瞬間は苦しかったり葛藤に押し潰されるかもしれないけど、その先に恐れを克服するのだと思います。その時には自分を隠すものがなくなっていく。

そして、人を自然と受け入れることができるのだと思います。


自分とは何者か、自分の課題とは何か。これを明確に示してくれるのがサビアンシンボルです。

この映画にここまで私が惹かれたのも、監督と私にサビアンシンボルの軸の一致があるからです。

ポール・トーマス・アンダーソン監督
双子座11度の太陽(サイデリアル・チャート)


双子座11度のアンチ・バーテックス(ドラコニック・チャート)

人と人が出会ったり、共鳴する時に、必ずサビアンシンボルの一致があります。その関係性を読み解くことで、夫婦関係や人間関係の確実な理解に繋がります。

悠馬のサビアンシンボル・アナリシスでは、たとえばご夫婦や親子などで双子座の11度で軸が重なっていた場合、その度数とシンボルが示すテーマや性質を深く読み解いていきます。

そしてタイムウェーバーでは自分の課題について教えてくれます。

過去を振り返ることで、自分という人間が見えてくる。

恐れず、心をオープンにし、過去を見つめ、それを乗り越えた時、過去は隠したいものやしがみつきたいものではなくなる。私もまだ渦中ですが、その先を見ずに人生を終えてはいけないと感じています。


サビアンシンボルの軸についてはこちらの記事を。


ご自身のサビアンシンボルが示すテーマや性質を深く読み解いていきます。


人間関係がサビアンシンボルから紐解ける法則性を解説しています。




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