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変遷・変化・変容

かつてタバコ畑として栄えた美作高原地域。
初夏には里山の至るところにあらわれるタバコの花畑が美しかったと老農夫は懐かしんでいました。

時代は変わろうとも、彼の心にその花畑は健在なのでしょう。
時代は変わり、耕作放棄地と化した農地でその息吹を吹き返そうと汗を流す人々がいます。

ひまわりは太陽の光を浴びて、土の中でぎゅっと蓄えた内なる力を存分に発揮しながら満面の笑みで花ひらきます。

人々はひまわりに寄り添うように、鶏糞堆肥で土を豊かにし、種を播き、草刈りをして熱い夏を迎えます。

ところが花はそんなにすぐには咲きません。種子は雨に流されたり、発芽しても草の勢いに負けてしまったり。

自然には怒りをぶつけることも、嘆くことも通じない。
それでも人々が叡智を分かち合い、自然のなかで過ごすことは、土地や山全体の息吹を吹き返すことにつながると信じているのです。

去年のこぼれ種から芽を出し、ひと足先に畔の片隅に咲き、終焉を迎えようとしているひまわりの花が語りかけます。

「踏ん張るんだぞ。」と。

夕暮れにはシカの群れの鳴き声が響き渡ります。人々はしっかりと土を踏みしめながら、ひまわりが咲くことを信じて、今できることを必死に模索します。

この天空のひまわり畑を通して、現代を生きる私たちがどのように物事を捉え、生きていくのか、見つめるきっかけをつくりたいと思います。


きっと、どんなものを見ても、それを自分自身の内側でどのように咀嚼し、捉えるのか。それ次第で私たちの心の受け取りようは変わることができると思います。

畑にいると思い通りにならない、頭で描くことと現実の乖離があからさまに目に映るので、純粋な想い・願いは打ち砕かれるような感覚でどこか淋しげな気持ちになります。
大勢の人の力を借りながらも結果を出せないでいるとき、正直、自己完結することのほうがよっぽど楽なんじゃないか、リスクが取れる範囲でいいんじゃないかと思ってしまうこともあります。

それでもどこかに希望を抱いて、例年のように一面満開のひまわりが無いのであれば、だからこその天空のひまわり畑にしようとどこかで割り切れたように思います。

新たな天空のひまわり畑誕生の予感を胸に。明るいほうへと向かって。


和仁奈緒子

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