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螺旋・チグハグな感覚(5月8日)

同じ学年の友人が29歳になっていく。
まだ28歳でもうすぐ誕生日を迎える子が「29歳はどんな気持ち?」と質問している。私たちは年齢の何に怯えているのだろうか。


数年前、唐突に連絡が途切れた友人がいる。他の友人にも彼女に連絡が取れるかを聞いてみたところ、誰も連絡できなかった。そういうわけで、彼女はこの数年、音信不通で消息不明だった。

GW中に彼女と親しかった子が「連絡が取れた!」と私にLINEをくれた。良かった、と思った。私も連絡してみようと思ったが、なんだか猛烈に疲れてしまった。
勝手に私が慌てただけなのだが、彼女と連絡が取れなくなった時、死んだんじゃないかと思って心配して色々とコンタクトを試みて、どれも失敗に終わって青褪めていた記憶が蘇る。

ようやく過去のものとなって落ち着いてきたところに彼女は戻ってきた。

そうか、と思った。私は彼女を過去のものにしていたのだ。もう会えないだろうと整理してきちんと記憶のボックスにしまって、悲しいから二度と取り出す気が無かったのに、再び現れた。

結局、とりあえずLINEは送ってみたものの、返事がない。深追いするのはやめようと思った。もし再び会えるのなら、時が満ちれば会える。縁がないなら、それはそれでもういい。


彼女からのLINEを待っていたら数ヶ月前に別れたパートナーから連絡がきた。チグハグな感じである。こちらの勝手ではあるが、あなたからの連絡は待っていなかった。

元パートナーは別れ際に「友人になりたい」と言ってた。
この言葉はよくある体のいい別れを切り出す文句で信用ならないわけだが、面倒なことに相手の本心であることを知っていた。二度と関わりたくないわけではなく、信頼できる話し相手として私との関係を保存しておきたいのだ。

それにしたって、人間はそんなに割り切れるものではない。こちらとしては全て忘れた方が楽ちんである。グレーの感情に折り合いをつけることは非常に苦手だ。私の処世術は嫌なことに関わらないことだからだ。


全てが面倒で疲れてしまった。相手からのメッセージがどうにも面倒臭い。まぁ、元気らしいので良かったねと思っている。


彼女と会えなくなった時、私はなにか人生を変えようと足掻いていた。自分の足で立とうとして転職をしたし、「普通」の人になろうと思って彼氏を見繕って夜な夜な密会したし、その後もキャリアを変えようと足掻いていた。
そういった一連の足掻きが今年の3月に終わったのだ。
「普通」の人にはなれないので彼氏はいらないと分かったし、ちょうどいい職種に滑り込んで落ち着いてきた。

そういった一連の足掻きが終わったタイミングで彼女の消息を聞いた。
何かが一周したのかもしれないと思った。
他の「私」になろうとした時期を彼女は知らない。その期間、彼女は消えていた。再び彼女が現れたとき、私はまた元の位置に戻っていた。彼女が消えた時と同じ位置に。


生きた年数は増えていく。けれど、同じ場所をぐるぐるとしている。螺旋階段を登るみたいに。同じ場所を回って死という天井へ近づいていく。それだけのことだ。

最後まで読んでくれてありがとう。