小冊子「本屋が本を運びながら考えていたこと」と『罰せられざる悪徳・読書』読了

私が『罰せられざる悪徳・読書』を買った時にはもう本書は絶版だったので、「書き込みがあるが綺麗」という出品者の言葉を信じ中古品を購入した。

本自体はとても綺麗で使用痕もほぼ無かったが、奥付の後ろに2001年何月に購入/読了と一言コメントが付けられている。福岡空港で買い、しおかぜ28号か285号で読了したらしい。ほっこりした。

 その本と一緒に送られてきた小さな冊子が「本屋が本を運びながら考えていたこと」だ。中身は本屋の仕入れや在庫管理、働いているスタッフのことの他に、車に本を積んで回る青空書店(図書館?)の取組について書かれていた。
本屋が本を届けるまで、また諸事情で本屋に行かれない・本屋が近くにない人に本屋を届ける活動などがイラスト付きで描かれている。

とても素敵な冊子だったのに、いつの間にか無くしてしまった。また貰いたいが、買った本屋が分からないため望み薄の状態だ。

 『罰せられざる悪徳・読書』

「教養は快楽の娘でこそあれ、労苦の娘ではない」という引用がとても印象に残る本だった。

読んだ時、私は内心で喝采した。そうだよ、快楽だよ!読書は楽しいよ!と叫びたくなり、思わずAmazonで引用元の『傍観者』を買ってしまった。

そしてのち、私は思い出す。
海外文学は訳者でどうにでも変わることを。
いくら訳が良くても、本の内容が面白くても、訳者が違う以上は私が「教養は快楽の娘でこそあれ、労苦の娘ではない」という一文を『傍観者』の中に見つけることは不可能なのだ。

 本書は一貫して読書=悪徳という説を主張しており、またその悪徳へいたるエリートのための選抜試験を段階を分け事細かに述べている。

必要に迫られた読書ではなく読書の楽しみのために読書をし、熱心にその楽しみを追い求める人間は例外的という。

彼らはひどく個人主義的なコミュニティを持つが、例え生涯出会うことがなくても、話す言語が違っても読書の楽しみを知っている悪徳者は秘密結社のようにつながっているエリート集団らしい。(ただし世間では全く評価されないか落ちこぼれとみなされる)

「おぉ心の友よ」ということだろうか。

確かにネットに読書マニアは多いが、現実生活で出会ったことはない。

ネットの口コミやTwitterなどでゆる~くつながるともなしにつながっていくのが彼の言う秘密結社なのかもしれない。

 因みにこの本、訳者がかなり良い。語に無駄がないし、縷々と続く日本語は読んでいて本当に楽しい。岩崎さんの訳で本に引用されているネルヴェーズの本を是非読みたいが、残念ながら出版予定はなさそう。現在は引用の数行で我慢しているけれど、岩崎さん訳の本が読みたい……。

『罰せられざる悪徳・読書』
ポール・ヴァレリー
岩崎力 訳
1998年9月22日発行

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